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鞄の中で迷子にならないキーケースを初めての革細工で自作した話
帰宅時、玄関前で鞄から家の鍵を取り出すのに手間取っていました。鞄の中で迷子になり、やっと見つけてもキーケースから鍵を出しにくいのです。そこで
鞄とキーケースとをストラップで繋げるためのフックが付いている
キーケースを手に取ったら、直ちにキーを出せる
この条件を満たすキーケースを探すことに。しかし意外と見つからないのです。最低限フックが付いているか、ストラップを付けるための穴が開いていると良いのですがそれすらありません。
無いなら作ればいい
そんなある日YouTubeで「エルメスのバーキンを自作する」という驚きの動画を見ました。革の鞄を作るだけでも凄いですが、100均の道具を使い、費用がかからないよう工夫しています。
「私はなぜ、買うことばかりを考えているのか」
売っていなければ作ればいい。鞄は無理でも、キーケースなら。テンションが上がってきました。
このとき見た動画を探したけれど、削除されているらしく見つかりません。バーキンがいけなかったのでしょうか。
材料・道具を揃える
ともあれ、まずは材料と道具を集めることに。
手当たり次第に集めるが、ままならず
最初、東急ハンズに行き材料の革と、ボタンやフックなど金具を手に入れました。道具はダイソーで揃えるつもりが、革細工用品は品切れで縫い針だけが在庫あり。ありがたく買いました。
革用の縫い糸は身近に売っていません。都内に出たとき、レザークラフトの問屋が多くある浅草橋に寄り、糸問屋で購入しました。通り道にある道具メーカーで、縫い針を通す穴を開ける道具(菱目打ち)も入手。
しかしそれ以降、どの問屋に入ってもレザークラフトの道具はありませんでした。革をはじめ材料の品揃えは豊富だったのですが。
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近所のイオンにすべてがあった
ところがいつも買い物に行くイオンに手芸用品フロアがあり、革から金具、レザークラフト道具、革のメンテナンス用品までがすべて揃っていました。浅草橋のメーカーで欠品していた4穴の菱目打ちまであったのです。
どなたか革細工に詳しい店員さんが入荷しているのか、詳しい納入業者が入っているのかもしれません。助かった。以降、足りないものは随時ここに買いに来るようになりました。
いざ、レザークラフト
キーケースを作っている動画をYouTubeで探し、見ながらその通りに仕上げていきます。ホック1つだけで留まっていて、開くと1枚の革にキーリングがひとつだけ付いているような、シンプルな作りのものを選びました。
革細工の基本工程
ざっくりとした手順は以下のとおり。これは鞄や財布など、どの革製品にも共通です。
型紙づくり
革を裁断
トコ面(革の裏側)と、コバ(切り口)を磨く
縫い針を通す穴を開ける
革を縫う
フックやボタンなど金具を付ける
作品の型紙は、プリンターで印刷したものを厚紙に貼り付けて作成。裁断は革包丁で切るのですが、普通の大型カッターナイフでも大丈夫です。
穴開け作業で巨大な音が発生
大変だったのが「縫い針を通す穴を開ける」こと。予想より5~10倍くらい労力のいる作業でした。フォークのような形をした「菱目打ち」を革に当て、上から木づちで叩くのです。しかしなかなか穴が開かない。むちゃくちゃ大きな音が出て振動も響く。困った。
しかたなく途中から作業場所をベランダに移し、下のフロアに響いても問題ない状態でガツンガツン叩きます。手芸というよりもはや刀鍛冶のような気分でした。
これは針穴だけでなく、ハトメ穴など大きな穴を開けるときも同様です。
縫って金具を付け完成
穴が開いたら万力で革を垂直に固定し、一本の糸の両端に針を1本ずつ付けてお互いを交差させながら1目ずつ、挟み込むように針を通して縫っていきます。最後に金具を付け完成です。
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ふつうのキーケースに比べ横に長く感じます。これは自宅の鍵がとても長いため。鍵の長さに合わせて型紙を調整、作り直しました。
その後どうなったか
今年はじめてトライした革細工とキーケース、その後どうなったのでしょうか。
鍵は見つかるようになった
せっかくフックを付けておいてなんだけれど、鞄とキーケースをストラップで繋がなくても大丈夫でした。シボ革を使ったので独特の柔らかな指触りがあり、長さもあるので鞄を探るとすぐに見つかるようになりました。
キーケースが見つかれば、ホック1つをぱちっと開けるとすぐにキーを取り出せます。玄関前はノーストレスで、今のところ何の問題もありません。
革細工はこれ以来していない
次は財布を作ろうか、など楽しみにしていましたがこれ以降、レザークラフトをしていません。やり始めると非常に楽しく没頭でき、溶けるように時間がなくなるからです。
手のひらに収まる小さなものでも数日を費やしました。これが財布や鞄だったらと思うとちょっと考えてしまいます。
キーケースを作るきっかけになった、バーキンの動画の主は家のリフォームも女手一つでやれる人。かなり器用なかたです。動画では菱目打ちのかわりに100均のデザートフォークを加工して印をつけ、千枚通しでサクサク穴を開けていました。しかし実際レザークラフトをやってみると、それは素人には気が遠くなるような作業だとわかりました。
「レザークラフト、コロナの時に知っていればとても楽しく過ごせたのに……」
財布が壊れるなど、次に何か機会があるまで革細工はしない予定です。既製品のありがたさを身にしみて感じました。
キーケースがすぐ見つかるようになり、取り組みとしては大成功でした。もう道具は揃っており、次回からは作る楽しみだけを享受できそうな予感がします。傷のいったものや穴の空いたもののメンテナンスもできそうです。
参考:革細工初心者向けの本
私は何も考えず手を着けてしまいましたが、もし革細工を始めたくなったらこの本が役立ちます。揃えるべきものがすべて把握でき、手順は図解入りで逐一詳しく解説されています。