場所がわからなくなった認知症のおばあちゃんの話
有料老人ホームで夜勤専従をしているゆうゆです。
老人ホームを利用している利用者さんは認知症の方が多いです。
先日、夕方出勤すると申し送り(昼出勤の方からの昼の様子を引き継ぐ作業)で1人の利用者さん(仮にAさんとします)のテンションがあがっており、
「ここは宮崎じゃない!」
と、ずっと言い張ってるとのことでした。
もちろん、ここは宮崎ですし場所を移動したわけではありません。認知症の症状で場所が分からなくなってしまったようなのです。
そうなると、それが不安なんだと思います。
何を提案しても「ここは宮崎じゃないからやらん!」と、なにもやる気が起きません。
昼の介護士が「宮崎だよ!」と言っても
聞いてくれないそうです。
でも自分に当てはめたらそうですよね
ある時、瞬きをしたら映画の世界みたいに違う場所にいたらまず「帰らなきゃ!」と思って
周りに何を言われても頭に入ってこないと思います。見覚えのないところを「あなたの家です」なんて言われても目で見えてるものが違うんです。
私の最初の仕事は晩御飯を用意し、利用者さんの食事を見守るんですが、Aさんはずっと独り言を言って食べてる様子ではありませんでした。
なので、Aさんの横にゆっくり近づいて行ってお話してみることにしました。
私「おじゃましまーす、どうしたんですか?」
A「宮崎じゃないのよぉ!」
私「えっ!?ここ宮崎じゃないの?」
A「・・・!」
そうすると、Aさんはいままで大きな声で言い張っていたのにビックリした顔をして
A「ここは宮崎よ?」
と、言ったのです。
私「はぁーよかったぁー安心した〜」
A「なんね(何)?」
私「宮崎じゃなかったらどうしようかと思ったぁ」
A「なんでね?」
私「帰れなくなっちゃうもん!」
A「家はどこね?」
私「〇〇町ですよ〜」
A「ふーん、わからん笑」
私「まぁ、そうですよね笑」
さっきとは逆転してAさんが私に
「ここは宮崎だよ」と
教えるという構図になりました。
そこで、
私「ところでAさん、晩御飯美味しそうだから食べてみません?」
私「おぉ、そうやね」
こうして、Aさんは晩御飯を全部完食したのでした。
突然ですが、インプロという即興芝居には
『YES AND』
という基本があります。
台本が存在しない即興芝居では、セリフもその場で瞬時に考えて話します。
そこで絶対にしてはいけないのは、相手のセリフを『NO』ということなんです。
たとえば、母と子の役。
母「あんたまた赤点とったでしょ!」
子「ちょっと!【YES】なんで見るんだよ!?【AND】」
母「もうすぐ受験だから心配で〜…」
といった具合に、1度受け止めて相手にセリフを投げるのが基本です。これがNOだと
母「あんたまた赤点とったでしょ!」
子「とってないよ」【NO】
母「部屋掃除したら出てきたのよ?」
子「今日は僕が掃除したんだよ」【NO】
はい、なんか現実にはありそうな会話ですけど笑明らかに母役の方が大変です。
ストーリーを進めることが目的なのに、いつまでもテストがどこから出てきたかで止まります。
芝居も会話なので2人で作っていこう。
これが【YES AND】です。
今回、Aさんと私の会話も【YES AND】でした。
A「ここは宮崎じゃない!」
職員「ここは宮崎だよ!」【NO】
A「ここは宮崎じゃない!」
私「えっ!ここは宮崎じゃないの!ならどこ?」【YES AND】
ずっと同じところに留まらず、会話を進めることができます。
もちろん毎回上手くいくわけではありません。
そこはご了承ください。
ただ頭ごなしに否定をするよりは、会話を楽しめて相手が何を考えているか少しでも知ることが出来る、芝居の基礎だと思います。
また芝居と介護の共通点エピソード
書いていきますので、よかったら芝居をしたことない方でも試して見てください。
ゆうゆ