いま将棋界で起こっていること(近況)
はじめに
こんにちは。久しぶりに記事を書きます。昨年の夏、将棋界で起こっていることについて前編・後編、二本の記事を書きました。
要約すると『将棋界は4人のトップ棋士が群雄割拠している』といった内容でした。が、この一年で様相は一変してしまいました。藤井四冠が猛威をふるっています。あっという間に棋聖・王位・叡王・竜王の4つのタイトルホルダーになってしまいました。席次も1位となり、名実ともに将棋界のトップに君臨しました。来年の1月には王将戦への挑戦が決まっていて、その勢いを止める術がありません。見当たりません。ぼくは藤井さんを普通に応援していますが、将棋界全体が盛り上がって欲しいという思いもあるので、もっと競り合った状態を期待してしまいます。なので、藤井さん以外の棋士にも頑張ってもらいたいと思っています。これは勝手なファン心理です。
藤井四冠×渡辺三冠
王将戦で藤井四冠に挑戦を受けることになった渡辺三冠。ここ数年、充実期はつづいていて、名人・王将・棋王のタイトルを保持しています。昨年、藤井四冠に奪われた棋聖のタイトルの奪還を目指して、藤井棋聖に挑戦しましたが、3連敗で敗退。ご本人のブログでも「完敗」と書いていました。二人の対戦成績は渡辺三冠の1勝8敗、5連敗中。全然勝てません。序中盤ではいい勝負なんだけど、終盤で競り負けてしまうことが続いています。もちろん、作戦家の渡辺三冠のことなので戦略は練ってると思いますし、楽しみな王将戦になりそうではありますが、いま現在はスワローズの応援に集中しているようです。渡辺三冠Twitterはじめました。
藤井四冠のレーティング
1枚目の画像は去年の8月頃のレーティング。
2枚目の画像はいまのレーティング。
ご覧のように、藤井四冠のレーティングが2,000を越えてしまいました。2位の渡辺四冠に対する期待勝率が.703。これはこの二人が10回対戦すれば、藤井四冠が7勝することを意味しています。いったんタイトルホルダーになると、番勝負はそれほどの勝率を必要としません。7番勝負なら4勝3敗(.5714)で、5番勝負なら3勝2敗(.600)でタイトルを保持できます。いまの藤井四冠なら造作もないことに見えてしまいます。藤井さんは、トップ棋士との対戦がほとんどとなったいまでも勝率が.839。だから、藤井四冠に一度タイトルを獲られると引っぺがすことは容易ではありません。藤井四冠以外の棋士は、是が非でも藤井四冠がタイトル挑戦できないように邪魔しないといけません。対藤井戦に全集中しないといけないわけです。
君たち、悔しくないのか
最近、谷川九段が言ったとされるこの言葉をよく思います。「君たち、悔しくないのか」。この言葉は、若くして棋界を無双する藤井四冠以外の棋士に向けられているのだと思いますが、この言葉を受けて一番熱っぽくなっているのはだれかと想像したときに思い浮かぶ顔、
それは、佐々木勇気七段じゃないかと。藤井四冠の29連勝を止めた棋士です。似てないけど。
佐々木七段は、とにかく特異なキャラクターの持ち主で、将棋ファンからはマスコット的に愛されている気がします。かくゆう僕も佐々木七段が大好きです。熱っぽくて、子どもっぽくて、感受性が豊かで、コロコロ笑う様子はどうにも気になる存在です。感想戦に映り込むことが多いことから『座敷わらし』と呼ばれたり、竜王戦戦でお馴染みの指宿・白水館の砂むし風呂に頻出することから『永世砂むし風呂』という称号も獲得しています。
一時は、伸び悩んでいたので、お友達の永瀬王座からは『旧天才』と言われたりもしていましたが、もう、天才に復帰していると思います。棋界最高クラスのA級入りに向けて、B級1組のリーグ戦では7連勝中です(竜王戦でも最高クラスの1組に在籍、これは天才です)。このところの対局姿も鬼気迫るものを感じます。天才の本気モードです。
棋士なら誰もが獲得したい特別なタイトル名人位は、A級に在籍して、リーグ戦で1位になり、名人に挑戦し、4勝しないと獲得できないタイトルです。藤井四冠は最速で来季の名人挑戦を狙っているはずですが、佐々木七段がそれを黙って許すとは思えません。現在、B級1組の1位は佐々木七段。2位が藤井四冠。二人の対戦は来年の3月9日、リーグ戦最終局です。まさにドラマのような展開。そして、その二人をA級の猛者が待ち受け、さらに、その上に渡辺名人が鎮座しているわけです。熱い。
最後に
と言うわけで、将棋界は今日も楽しいです。もっといっぱい将棋のことを書きたいのですが、前回の記事がちょっとだけ注目され、ビビってしまって筆が完全に止まりました。小心者は影でコソコソやってるくらいがちょうどいいので、今後も細々とやっていきます。将棋の仕事はまだできてないので引き続き狙っていきます。
(全ての棋士の段位・肩書、対戦成績は2021年11月27日現在)