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詩集

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2023年8月の記事一覧

ロマンスの詩

ロマンスの詩

真っ赤に熟れたリンゴを

一刺し

ナイフに滴った血液が

それはもう美味しい程に

輝いている

壊れはじめたメリーゴーランド

白いお馬さんの首は

はねられている

うたた寝している三日月に

思い出をつめて

血塗られた幸せを

幸せと思える二人

幸せは二人であると

思える二人

物語は始まったばかりだ

茶埜子尋子

嘲笑の詩

嘲笑の詩

冷たい詩を読みながら

その延長線上に

温かい君の顔が映る

いっそこの詩集を

七夕の笹に吊るしてやろうか

ね、攻撃的なことばも

おしゃれに見えるでしょ

茶埜子尋子

宇宙数学的交通安全運動

宇宙数学的交通安全運動

人はみな

理不尽に傷つけられたり

自分勝手に悲しくなったり

嬉しくなったり

楽しくなったりする

それはみんな

みんな

人間の傲慢な感情

この世界は

一方通行の綺麗な

道でできている

閑静な街並みと騒騒しい妄想で

美しく栄えている

要するに

私とあなたは

交わることはなければ

遭遇することもない

そんな数学的な世界にいるのに

わざわざ念力を使ってまで

交わろう

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横断歩道の詩

横断歩道の詩

ほのかな殺気

夜空の煌めき

どちらも同じくらい

綺麗

何事もなくて

良かった

空が寂しくて

よかった

今日はだれも死なないよ

いつも通り

今日も汚い

茶埜子尋子

詩のすべて

詩のすべて

詩が好きだよ

詩が好きだ

わたしのつくる詩は

あまり言葉が多くないけれど

言葉が好きだ

小さな言葉が

小さな詩になって

すきまだらけの木綿のハンカチになる

その瞬間が好きだ

どんな色をしているのか

どんな匂いをしているのか

目をとじて

小さな詩の世界の

やさしさに誘われて

大いなる力に

心置きなく身を任せ

誰も触ることのできない

こころの無限を

ゆらゆらと遊びた

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小さな日曜日の午後の詩

猫の毛のような雨が

そっと僕に落ちてくる

かるくて やわくて

僕が僕でなくていいように

小宇宙に浮かべられている

ささやかな光のなかで

わたしは生きている

茶埜子尋子