2020年代、東京で生活する女性の軽やかな絶望_映画「ナミビアの砂漠」
※ネタバレ注意
自由なのに満たされない主人公の「渇き」
2020年代の東京で生活する若い女性の軽やかな絶望が次第にくっきりと浮かび上がってくる
チェーン店でのマルチ商法(?)、ナンパ、エステ脱毛、キッズ脱毛、ホスト、妊娠に関する男性の無関心・無責任さ、知り合いのいないキャンプ、貧困、(教育)格差、国籍...
まともに取り合うとこっちが疲れ切ってしまう、そんなものが至るところにある
タクシーの窓から嘔吐し事あるごとにタバコを吸い、二股をして暴言・暴力を振るうのも、社会の歪さに比べたら可愛く思えてきてしまう
冒頭、カナは日焼け止めを塗りながら数多の人とすれ違い、フラフラとした足取りで東京の街を歩いて行く
人目を気にせず恐らくルーズ。でもお洒落で美容にも気を遣う。この子はどこに向かっていて、どんな話し方をするんだろう?と惹きつけられた
あんのことでも思ったが、河合優実は役を演じているという感じがしない。映像の中にその人物がただ存在している
金子大地が最初にキレるシーンは本当にリアルでヒヤッとしたが、その後のケンカは毎回どこか滑稽でちょっと安心した
大人が両者必死になって取っ組み合う様子っておかしみがあるよな、と
「お前みたいなやつがつくるものは社会にとって毒なんだよ(意訳)」は令和以降最も攻撃性の高い悪口かもしれない
唐田えりか演じる隣人との焚き火のシーンは唐突かつ短いシーンだがらグッとくるものがあった
女性の連帯、というにはあまりに慎重で刹那的な交流だが、主人公にとって最も枯渇した部分が潤った瞬間だったのではないか
距離の近い恋人や友人ではない、第三者との予期せぬ出会いが思いがけず救いをもたらすこともある。
結託まではしなくても、出会ったときにちょっと手を取り合えるような、そんな希望があった