C29 スペイン人と酒飲み対決
「イキオ、今日の勝負は、ボクの勝ちだよ!」と少し口元が怪しくなってきたジェームスは、2杯目のシェリー酒もあっさり飲み干してしまいました。それを見ると、これは長期戦に持ち込まないとあっちのペースでは、こちらのペースコントロールを乱されてしまうと思いました。「はぁ?何を言ってるの?ここにお互いが飲んだグラスを並べていこう。どっちが多く並ぶかが勝負の決め手だ!」と提案しました。「OK、イキオ、それじゃあ今二人とも2杯目だね。ボクは3杯目を飲むからね。」とすでに2杯目を飲み干し、3杯目を注文しました。私もこのままついていくしかないと覚悟を決めて、目の前にむき出しのまま置いてあるジェームスのお金をつかんで、3杯目を注文しました。お金を取るときに微妙に体が揺れたので、シェリー酒とはかなり危ないお酒かもしれないと気付きました。甘いのですっと飲み干せるが、これは気をつけないと大変なことになるぞと気を締め直しました。
ジェームスの方を見ると、これがまた少しずつ酒に呑まれ始めたという雰囲気で、酒に自分は強いとは言ってはいたが、意外と早く勝負はつくかもしれないという予感がしました。今では時効になっているだろうから告白しますが、宮崎大学の新入生歓迎のコンパはかなりすさまじく、春先の時期には、毎年数人が救急車のお世話になったというニュースがテレビをにぎわせていました。したがって、そのような中で鍛えられてきているので、ペース配分が乱れると、勝負の分かれ目になるのです。
ややジェームスリードですでに5杯目に突入していました。私は、まだ4杯目の半分に到達したところです。しかしもうすぐ勝負がつくことは目に見えて明らかでした。ジェームスの目は既に宙を漂い、グラスを持とうとするが、手が泳いでいて、つかめません。私もかなりきていますが、足には力が入るし、冷静に判断できているようです。ついにジェームスは、気持ちが悪いと言いだしました。そこで「こらぁ、これで勝負は着いたな。お前の負けだ。ジェームス」「おい、聞いてるのか?」と彼の体を揺さぶると「うわぁー、だめだやめてくれ。もう勘弁してくれ!」と唸りました。
「ばかやろう、はっきり負けたと言え!」とさらにガクガクと頭を揺さぶると「わかった、負けだ。金をやるからごめんなさい!」と言いました。いい加減なジェームスには念押しが肝心と考え「もう一回認めろ。お前の負けだな?」とくどく問うと「あぁ、やめてくれ、イキオは強い。俺の負けだ。どうか外に出してくれ。」というので、カウンターに残っている紙幣とコインを私のポケットにねじ込んで、店の外に連れ出しました。
【補足情報:イングランドで人気があるアルコール飲料】
イングランドで人気があるアルコール飲料の一つに、エールがあります。エールは、ホップを使用したビールの一種で、特に地元のパブでは、多種多様なエールが提供されます。エールは低温で発酵させるラガービールとは異なり、常温で発酵させるため、豊かな風味と香りが特徴です。中でも、IPA(インディア・ペール・エール)は特に人気があり、その苦味とホップの香りが魅力です。
また、ジンもイングランドで非常に人気があります。特にジントニックは、パブやバーでよく見かける定番のカクテルです。ロンドンを中心に多くのクラフトジン蒸留所があり、各地で個性的なジンが作られています。ジンはボタニカルと呼ばれる植物成分を使用して風味をつけており、蒸留所ごとに独自の風味を楽しむことができます。
さらに、イングランドのパブではサイダーも人気があります。サイダーはリンゴを発酵させて作る飲み物で、アルコール度数がビールと同程度です。甘口から辛口まで幅広い味わいがあり、特に夏場には冷やして飲むと爽やかです。サイダーもまた、地元の農場や小さな醸造所で作られることが多く、その土地ならではの味を楽しむことができます。
続く…
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