『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』#読書録001
『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』を読んでみた。
さて、本書を手に取った理由は、私のジンクスである「表紙が黄色の書籍は良書の可能性が高い」というのもあるが、コミュニュケーションをもっと上手くなりたい、加えて「脳のバイアス」を知りたいと思ったからだ。※バイアスとは先入観や傾向といった意味を表す。
結論からいうと、その答えをわかりやすく、細かく説明している内容だった。
本書で、コミュニュケーション能力が高い人とは、
「自分の脳と相手の脳がみせる世界が違うことをしっかり認識している人」
になる。
そして「脳タイプ」が3種類あることだ。「脳タイプ」とは視覚的な情報を重視する視覚タイプ、聴覚を重視する聴覚タイプ、肌感覚や体感覚を重視する体感覚タイプがあり、日本では視覚>体感覚>聴覚の順で多い。
この「脳タイプ」の違いは異性へのプレゼントや説明時に大きくでる。それぞれのタイプにあった手段を取ることが大事になる。例えば異性に対して花をプレゼントする際、視覚タイプには見栄えを重視した花を、聴覚タイプにはメッセージカードを付けて渡す、体感覚タイプにはハグしてから渡す――といったふうに重視するものが違う。部下などへの説明時は、視覚タイプは全体像をみせたうえでやらせる。このとき、図表をプラスするとなおよい。聴覚タイプには丁寧な説明を行い、体感覚タイプには説明は簡単に行って実体験を重視させるのがよい。
そして、これらの要素でラベリングしないことが必須になる。なぜなら、人は視覚タイプだからといってすべて視覚タイプの行動を取ることがなく、聴覚タイプ、体感覚タイプになるときがあるからだ。決めつけてコミュニケーションをするのは悪手で、当たりをつけながらコミュニケーションをするのが望ましい。
次に利き腕や性別、人種、環境によってバイアスが生まれる話になる。
まず、左利きと右利きで左右で重視する傾向が異なるようだ。章の冒頭には2枚の笑顔の絵がある。口元だけが違い、左にニッコリとなっている絵、右にニッコリとなっている絵だ。約90%の人が、左利きは左側を選び、右利きは右側を選ぶそうだ。ちなみに私は一度左と思ったが、最終的には右を選んだ。つまり、本能的に左を選んだが、理性で考えていくと右を選ぶということが読み取れて、自分がいかに右利きの価値観に染まっているかを思い知らされた。
「なぜ男性と女性はわかりあえないのか?」とたびたび人間関係の話で上がるが、この違いについて脳の構造の違いだと書いてある。他の書籍でも読んだことがあるから確度が高い。
それで、男性は変化を見つけるのが得意で、行動はシングルタスクで、記憶はただの情報として覚えるらしい。一方で、女性はじっくり観察するのが得意で、行動はマルチタスクで、記憶は感情を伴ったストーリーとして覚えるらしい。女性がマルチタスクが得意というのもわかるし、男性はシングルタスクが得意というのもわかる。掃除しながら電話とか絶対できない。どちらかがおざなりになる自信しかない。また、空間認識能力については女性より男性のほうが高く、男性が地図を理解するのが早いのもわかった。
人種の違いでもバイアスは存在するのか。もちろん存在する。日本人(アジア人)と欧米人を比較すると、思考方法が違うらしい。日本人は包括的思考といって全体的に考え、欧米人は分析的思考で個別に考える思考が強いらしい。例えば、一枚のツキノワグマの写真があったとする。日本人は「森の中にいるツキノワグマだね」、「尾瀬の湿原にいるツキノワグマだね」といった背景情報を読み取るが、欧米人は「ツキノワグマだね」と背景情報を見ないでツキノワグマを取り出す傾向らしい。ちょうどPhotoshopでツキノワグマだけを切り取るような感覚なのだろう。写真一枚を見て被写体と背景の関係性を捉える日本人と個別に捉える欧米人。こんな違いがある。
加えてコミュニケーションを取るときにみるポイントも異なり、日本人は目元をみて、欧米人は口元をみる。だから日本人はサングラスをかけると表情を読めなくなるし、欧米人はマスクをつけると表情を読めなくなる。つまり、表情を読まれてたくなければ、サングラスとマスクをつければいいのだ。ただの不審者だが。
最後に環境についてのバイアスになる。人の性格は遺伝子と環境に決定されるといわれ、人の見方も環境によって大きく変わる。丸椅子に座る人より、ソファに座る人がやさしそうなイメージがつき、温かいコーヒーを飲んでいる人がアイスコーヒーを飲んでいる人より優しいと思われる。取材時でも応接室に通され、ソファで座っているときのほうが、スムーズに進むのはそういった要因もあるのかもしれない。温暖な気候で育った人は社交性や協調性が高く、山村に住む人は内向的な人が多く、海岸近くに住む人は外交的な人が多いことがわかっている。と聞いて確かに山村の人は内向的な人が多くて、漁村の人は陽気な人が多かった!――と旅を思い返すと、そんな気がしてくるのが不思議だ。
「脳は「見たいもの」を選んで見てる」。
これが確証バイアスだ。自分が晴れ男だと思っている(思い込んでいる)人は、晴れたときの記憶しか残らず、雨の日の思いでは忘れている。逆に雨女の人は、雨の日を覚えていて、晴れの日を覚えていないのだ。
さらに本書ではクイズが出される。「上の絵と下の絵は何箇所変化したか?」という問題で、枠があるのだが、枠内しかみておらず、枠外の変化に気づけないなどを実感する。勝負事や恋愛事で「これしかない」とか、「この人しかいない」とか思い込むと、思わぬチャンスを素通りしてしまうのです。追い込まれてはいけない。余裕をもって様々な手段を考えていないといけない。
確証バイアスのほかに、現状維持を望む現状維持バイアス。これが働くと変化に対応できなくなっていく。1回の事実を過度に一般化するバイアスもあり、これが働くと一度の失敗で、次も失敗すると思い込む。
これらのバイアスを知ることで、思考が自由になる。
だが、これらのバイアスは人類共通ではない、それこそ10万人いたら、10万通りあるように人それぞれで異なり、私がみている世界は私だけのものだ。同じ言葉を使って、類語を5つあげてもらえばどれだけ違うかわかる。だが、わかりあいたいと思う。それにはモノマネ細胞とも言われる「ミラーニューロン」が鍵を握り、相手に敬意をもって接すれば、うまくいくそうだ。
結局、本当の意味で人と人はわかりあえないし、わかっていると決めつけるのもよくない。だけど、自分の思考を言葉にして、文字にして、音声にして、相手に思考を伝えるには、敬意を持って相手の思考を想像して、言葉を創造するしかないのだな。そんなことを考えた一冊でした。