コミュニケーションとは?……『心理療法におけることばの使い方』を再読して
書籍の整理整頓をしている。
懐かしい本たちとの再会。そんな言葉が似合う楽しい時間を過ごす。本は友だち。そのような人生を送ってきたからだ。
本は友だち。そう思えるのにはいくつか理由はある。自分の内面に向き合うヒントを与えてくれたり、心折れそうなときに励ましてくれたり、そばで私を支えてくれた。だから友だちと私は思っているのだ。
本棚にある本たちは、それぞれの出会い方から物語が詰まっている。それらの本、1冊1冊に、「何をきっかけとしてこの本を読むようになったのか」という思い出があるのだ。そして、その情景をも含めて「本は友だち」と思っている。
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思い出の一冊にインターネット上で通りすがりの方に教えてもらった本がある。『心理療法におけることばの使い方』という本だ。
この本を教えてもらった人とは、どういういきさつで知り合ったのか、記憶がおぼろげではあるが、出会った「場所」は覚えている。mixiというソーシャルネットワーキングサービスで交流していた人だったのだ。
ときどきmixiのことを「過去の闇が詰まっている」という表現をしている方を見かける。そういう使い方もあるのだろう。
mixiに限らずインターネットは道具である。
道具の使い方は人それぞれ。闇を吐き出す場所として活用する人もいれば、人生の転機を得られる人もいるのだ。
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mixiは、私にとっては有益な情報を安心して手に入れられる平和な場所であった。
もともと私は、ひとりで静かに過ごすことを好む性格であったが、mixiを利用していた時期、リアルで人と関わることが増えていた。治療・通院という形で強制的に人と関わらざるを得なかったからだ。
参加していたmixiのコミュニティーで、他の患者さんや医療者の方々、多くの方との言葉のやりとりに苦心していると吐露したことがあった。「言葉の選び方」について知りたい。そのような気持ちで書き込みをしたと思う。
ヒントになる本を教えてくださった方がどのような方だったのかもあまり覚えていない。だが、とても印象に残った言葉がある。それは次のようなものだった。
人と人が関わるとき、「どのような言葉を選ぶか」はとても大事ではある。だが、大事なことは言葉だけではない。あなたが思っている以上に、言葉以外の要素がある。
この会話の流れで、『心理療法におけることばの使い方』を紹介されたのだ。
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「ことばの使い方っていうタイトルで言葉以外の要素って……??」最初の印象はこのようなものだった。本当に私の知りたいことが書いてあるか疑問に感じたのだ。
だが、本を手に取り、読み進めていくと、ぐいぐいと引き込まれていった。多忙や疲労で読むことを離脱しても、戻りたくなる「何か」があったからだ。
最近、改めて、この本を手に取り、うまいタイトルをつけたものだと感心している。『心理療法における言葉の使い方』ではなく『心理療法におけることばの使い方』というタイトルだからだ。
「ことば」はあらゆる形で存在する。
気の利いた言葉が出てこなくても、あたたかな心で人に寄り添うこと。優しい言葉をかけられなくても、柔らかな表情で話を聞くこと。
同様に、他者が発する言葉以外のシグナルを適切に拾っていくこと。言葉では表現できない心の機微を汲みとること。
コミュニケーションは総合的な「ことば」で織りなされるのだから。