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#ボドゲの話をしよう。「海底探険」

#ボドゲの話をしよう
どうも、死に急ぐ生命の果実です。

「始まりにあたって」の記事でも少し触れましたが、このシリーズでは、ボードゲームの「仕組みから楽しさを感じさせるメカニズム」を言語化していこうと思っています。

最終的には、このゲームを知らない人が興味を持ってくれて、遊んでみたいなと思ってくれれば嬉しいです。
さて、本日紹介するのは「海底探険」というタイトルです。
ざっくり以下のような内容でお話していきたいと思います。


海底探険の概要

説明は公式サイトとwikipediaから。
また、紹介記事としてボードゲームのお店「すごろくや」さんの紹介のリンクを。

「海底探険」は、サイコロでコマを進め、誰よりもたくさんの宝を持ち帰ることを目指すテーブルゲームです。 裏にしたチップをつなげて道をつくったら、すごろくのようにサイコロをふって進み、止まった場所のチップを拾うか拾わないか選択します。
奥に進むほど高得点を獲得できる可能性が高くなりますが、チップを拾ったプレイヤーの番がまわってくるたびに、全員で共有の「空気」がチップの枚数ぶんだけ減るようになります。 潜水艦に帰りつく前に空気がゼロになると、そこまで獲得したすべてのチップを失ってしまいます。どこで帰るかの決断は慎重にしなければなりません。 あえてたくさんチップを拾い、空気をどんどん減らし、他のプレイヤーを邪魔することもできます。自分一人だけが潜水艦に帰りつけるよう画策するのもよいでしょう。ただし、サイコロで出た目から拾ったチップの枚数を引いたぶんしか進めなくなるので、拾いすぎには注意が必要です。

公式サイトより

筆者と海底探険

海底探険。
調べてみると発売は2015年らしい。
まあまあ年季が入ったタイトルである。
そりゃ気付けばボドゲ棚に2、3個あるのも無理はない。
遊ぶ用・保管用・布教用だ。

もちろん冗談だ。
それくらい好きだというものの例えとして受け取っていただきたい。

ゲームの仕組み

ゲームのベースルールは至ってシンプルで、メカニクス的にはすごろくと言っていいだろう。
自分の目標とするゴール(勝利点)まで進み、勝利点を持ち帰ってスタート地点まで戻ってくると、それが得点となる。合計で3ラウンドプレイし、最終的な勝利点が多いプレイヤーが勝ちである。

非常にシンプルである。
しかしながら、たしかな奥深さと、その場でしか体感できない臨場感(空気感)がある。
なぜか、を紐解いていきたい。

奥深さ

まず、奥深さ。
奥深さというと読者によっていろいろな捉え方があると思うが、ここでは一旦「手番に取れる行動のシンプルさと、その結果が及ぼす影響の多様性」と定義したいと思う。
なお、それによって波及した影響は、後述する独特の臨場感に繋がる。
これらは精錬されているが故に、切っては切れない構造なのだ。

空気の残量

海底探険におけるまず重要な要素は「空気の残量」であろう。
潜水艦に蓄積されている酸素はプレイヤー全員で共有されており、しかも限りがある。尽きたら問答無用で死だ。
共有されているが故、誰かが欲張って無理をすれば全体に影響が出る。

もっとも、往路で酸素が失われることはほぼない。

ポイントは復路である。
酸素は荷物(≒勝利点)を多く持っている者ほど消費が激しい。
これによって生まれる図式は「勝利に貪欲なもの=死にやすい」だ。
さらに、他プレイヤーも巻き込まれて死ぬ可能性がある。

これにより、戦略の方針が決まる。

  • 先んじて貪欲に勝利点をかき集め、自分だけタスカル

  • 巻き込まれないよう、少量だが安全に堅実に得点を稼ぐ

などだ。
勝利につながる戦略に多様性があるほど、ゲームを楽しむ幅は広がり、プレイ感は充実したものになることに異論はないだろう。

「酸素の量を原点とする戦略の分かれ目」をさらに生かすように、システムに注目すべきポイントがあるのも見逃せない。
以下の二点だ。

  • 勝利点を持った場合の進める数の減少

  • 他プレイヤーを跳び越すことができる

それぞれ詳しくまとめていこう。

勝利点を持った場合の進める数の減少

「荷物が多いほど進める数が減る」
まあそのまんまだ。
1個持っていれば1マス、2個持っていれば2マス、進める数が減る。
シンプルながら、これが抜群に戦略性を高めている。

ダイスは少々特殊で、1~3の目しかないダイスを2個振る。
最低2、最高で6マスが期待できる。

のだが。

勝利点を多く持っていた場合は事情が異なる。
「進めない」ということがありうるのだ。(さらに、ちゃっかり酸素は減る)。
これにより、「ギリギリでゴール地点まで帰れない」というシチュエーションが頻発する。
ゴールにたどり着けなければすなわち死。
これはヒリつく。ヒリつかないわけがない。

おそらくこのあたりは非常に入念に計画し、調整をしたのだろう。
とにかくゴール手前で無念の死が頻発する。
初心者が混ざった卓での初回のプレイでは、まぁまぁな確率でゴール手前で死屍累々となる。

これが非常におもしろい。
もちろん、勝てないことがおもしろいのではない。
「勝てるはずだったのに」「自らが欲張ったせいで」の負けが、これでもかと突き付けられるのである。
大抵「なるほど、次から気をつけよう」となる。
未経験者に対してのチュートリアル体験として非常に優れている。

死んだ、負けた、俺のせいで、お前のせいでと、場もまあまぁ温まった上で、合計3ラウンド行う。
重めのゲームだと本番全部がチュートリアルなことも多いが、1ラウンド目にチュートリアルがきちんと収まっているのは、初心者に進めやすいタイトルとてもポイントが高い。

他プレイヤーを跳び越すことができる

話を戻そう。
プレイヤーの判断で、あるいはダイスの目によって、ラウンドの終盤ゴール手前で渋滞が発生する。
ここで生きてくるのがもう一つのルール「他プレイヤーのコマを跳び越せる」だ。
文字通り、他プレイヤーのコマを跳び越して進める。
つまるところ、少ないダイス目で数マス進めることもありうるのだ。
これがこのゲームでは非常に有効に働く。

先述した「自分の貪欲さで他人もろとも危機に瀕するゴール前」に、「他人を飛び越して先に進める」というギミックは、非常に相性がいい。
ゲスな話だが、他人を犠牲にして自らが勝利するのはとても気持ちがいいものだ。
その勘所をとても魅力的に演出してくれる。ゲーム体験としては最高である。

臨場感(空気感)

書きたいことは書いたので少々蛇足になるかもしれないが、空気感についても触れておこう。

前述した「他人を犠牲にして勝利を得たときの楽しさ」が本質に近いと思うが、それによるギスギスしたプレイ感は特にない。
せいぜいが「おいおいおい、無理すんなよ」というくらいだろうか。

あくまでゲームとしては「自分が勝利点を得るための最善手を打ったことで」「それに巻き込まれる形で他人が死んでいく」という図式だ。
積極的に相手を妨害する要素はない。

そのため、協力ゲームではないものの、ゴール直前では他プレイヤーの無事の帰還を祈るような独特な空気感が生まれる。(ことが多い)
きちんと競るところは競りながらも、気持ちのいいプレイ感なのだ。
想像できない人には、ぜひとも体験していただきたい。

まとめ

他プレイヤーが自らの欲望のために危機に瀕しているのをしり目に、自分はちゃっかりとその状況を利用して高得点を持ってゴールする。

コンセプトの実現の仕方が、非常に精密に設計されている。
芸術的な美しさすら感じる。
この一貫したプレイ体験が、自分がこのゲームを愛する所以だろう。

ルールも簡単すぎず難しすぎず、多くも少なくもない。
これ以上余計な要素を増やしてしまっては、このおもしろさは実現しなかっただろうと思う。
コンポーネント、特に酸素ゲージの小ささや取り回しは気になるものの、小箱におさめることを考えると致し方ないというところか。

サイズ感はこのくらい

発売からおよそ10年。
皆に愛されているゲームだと思う。
たしかそろそろ記念の特装版がでるころであろうか。
未体験の人には是非お勧めしたいゲームである。
以上、海底探険でした。みんなで溺れ死のうぜ!


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