仮面ライダー騒動について思う事|倫理と善意と誹謗中傷、企業倫理とコンテンツの私物化について
どうも、死に急ぐ生命の果実です。
ちょいともにょることがあったので言語化しておく。
要約すると…
で、まぁいろいろあって炎上している、らしい。
まぁ立場によっていろいろ思うところもあると思うので仕方あるまい、と思う。
今回はそんな事件を足掛かりに、思うところをつらつらとまとめていきたい。
筆者のスタンス
本稿を書く前に、筆者のスタンスを明記しておこうと思う。
コンテンツとしての仮面ライダーは好き
今回の件に関しては、特に意見など述べず静観している
当該の少年が仮面ライダーに会えたことに関しては、まぁよいのではないでしょうか。
いい話ですね。
本題
さて、その前置きがあった上で。
今回は倫理の話をしようと思います。
昨日今日あたりのTwitterで「誹謗中傷」がトレンド入りしている。
人として最低限のモラルを持ち合わせていれば、あまり普通の人にはなじみがないのでは、と思う。(反射的に他人に対して誹謗中傷を向けるような人間は、きっとこの記事をここまで読み進めないだろう、とも思う)
「倫理」と「善意」の違いは曖昧だ。曖昧というよりも、定義されていない。哲学的なアプローチはあるものの、明確には定義されていないようだ。
まぁ、「倫理」が比較的「規範的なルール・モラル」であるのに対して、「善意」は「『悪意』の反意語であり、他者に対する善性」とでも言おうか。
何が違うかというと、前者は客観的なもの、後者は主観的なものと言えるだろう。
今回の事件を観測していると、主義主張や意見は人によって異なる。
当たり前と言えば当たり前だが、「なにをどうしたら正解だった」ということがないからだ。
「人の命が掛かっているから、まずはそれを優先すべきだ」もわかるし、「他者に迷惑をかけてはいけない」というのも、一貫性のある主張だろう。
なので、今回の件ではここには触れないでおく。
あくまで結果的に「美談」になった(なってしまった)のだから。
企業倫理とは
よく聞く言葉で言えば、「コンプライアンス」と言い換えることもできる。
今回はその企業倫理についてのお話。
今回の騒動、結果的に誰も不幸せにならなかっただけで、結構薄氷の上を踏むような危うい動きがあったと、個人的には感じている。
うまく「美談」になってしまったが、一歩間違っていれば大きく損害などが発生する事案であった。今回の件は、コンテンツ制作会社から見たら、リスクマネジメントの観点でいろいろ大きく学ぶことがあるなと感じている。
モデルケースを立てる
東映と仮面ライダーと俳優とファン……という立て付けだといろいろ矛盾点が出てくるので、一旦架空のモデルケースを想定してみよう。
アニメでもゲームでもいいし、もちろん特撮であってもいい。
まず、企業のスタンスとして、「コンテンツを守る」ということは至極当然であるとしよう。
「コンテンツを守る」を細分化すると、以下のような要素が洗い出される。
企業のイメージ
コンテンツのイメージ
利益・収益
ファンやユーザーへの配慮・居心地のよさ
社員やスタッフへのサポート
これらが満たされていて初めて、コンテンツが成立するのである。ということを前提にお話ししたい。
基本的には関連するスタッフは、すべからくこの前提を守らねばならない。スタッフ一人一人がコンテンツを守る各要素を維持する責任を持ち、それを損なってはならないのである。
これを俗に、「企業倫理」であったり「コンプライアンス」であったりする。
コンプライアンスを守るということは、これらを意識して日々活動を行うことだ。
俳優、声優などのキャストについて
言及したいのはここからである。
先に「関連するスタッフすべて」と述べたが、それはもちろんキャストにも当てはまる。
キャストは基本的にはコンテンツの表側を担う、コンテンツの顔である。ことが多い。
そのキャストがコンプライアンスを遵守しないとどんなことになるのか。
直近で言えば、古谷徹氏のやらかしが記憶に新しい。
機動戦士ガンダムのアムロ・レイや名探偵コナンの安室透などを担当した人気声優であるが、不倫のスキャンダルを報道され、その後の出演などが不透明となっている。
キャラクターはユーザーに直接触れる思い入れのある部分であるがゆえに、何かあった場合の処遇が難しいポジションだ。
多くの場合、キャストをあくまで「役者」とし、キャラクター本人ではないとしている。
まぁ、当たり前と言えば当たり前だが。
キャストに何かあったとしても、コンテンツの受けるイメージの毀損は最低限にコントロールできる。
キャストがなにかしら社会的問題を起こしたとしても、リスクは避けることができる。
これが企業倫理によるリスクマネジメントだ。
あまりにもキャラクターとキャストの結びつきが強すぎると、キャストに何かあった場合にコンテンツのイメージも損なわれてしまう。
故に、契約面でモラルある行動を求められたり、あまりにもイメージの違いすぎる配役ができなくなったりする、こともある、と聞く。
で、である。
本題に戻ろう。
仮面ライダーに戻る
企業倫理とリスクマネジメントの観点から、仮面ライダーを演じた俳優が「仮面ライダー」を名乗ってSNSで活動することは、危うい。
今回の件に関してでも、それ以前から、何度も危ないことはあったと記憶している。
少し以前の話になるが、こういうエピソードもある。
今回の件でも、色々な可能性があったはずだ。
例えば……
呼びかけを行っていたアカウントが、何かしらの悪意を持っている恐れ
詐欺などの事件に発展する恐れ
キャストに売名行為などの非難が発生する恐れ
関係各所への飛び火、大きな騒動に発展する恐れ
関係者やファン同士の誹謗中傷の恐れ
などなど。
まあ、いくつか実際に起こってしまったものもあるが。
最終的に美談になってよかったが、それはあくまで結果論だ。
どこかで一歩間違っていたら、大きな毀損が発生していた可能性は十分にある。
起こらなかったからよかった……のではあるが、日々そうならないように気を留め、リスクマネジメントをしながら活動する多くのスタッフたちがいることを、忘れないようにしてほしい。彼らはひやひやしながら見守っていたことだろう。
ヒーローを演じた俳優としては、今回の行動は称賛に値するものだったかもしれない。
だが、企業倫理を求められるいちスタッフとしては、軽率だったということも、記憶の隅に置いておいてほしい……と切に願う。
今回はうまく美談に収まってくれたが、一時の感情・正義感・善性で動いた結果、意図したように物事が動かず、不利益な結果に結びついた場合、共に仕事をしている人たちにどういった影響を与えてしまうのか、もう少し想像力を巡らせてほしい。
そういう観点から、やはりキャストによるキャラクターの私物化には苦言を呈したい。
「仮面ライダー」の権利者は「東映株式会社」であり、仮面ライダー俳優といえども、仮面ライダーでなく、仮面ライダーを演じたことのある俳優であり、本人ではない。俳優が権利者である東映株式会社の許可なく、仮面ライダーとして活動するのは、望ましくない。
その上で、企業倫理に照らし合わせて不適切な行動があれば、是正されるだろう。
少し実体験を述べる
特撮ドラマから少し舞台は移り変わって、筆者が所属していたゲーム会社の話。
ゲーム会社といえども、やはりタイトルによっては相当な数のスタッフが分業にあたる。
その中で、例えばプロデューサーやシナリオライター、デザイナーなど、作品の顔になる人物が、悪い意味で自由に動くことは……まぁ、ある。
プロデューサーがゲームの中に自分自身を登場させたり。
会社の社長がイッケメーンになって登場したり。
SNSでデザイナーが半分公式の落書きを投下したり。
うん。まぁまぁな地獄ではあった。
多くの人が支える巨大コンテンツで、一部のスタッフが企業倫理を無視、ないしは悪用して動き始めるのはなかなか厄介で、危険ではある。
場合によっては既存のファンを離れさせたり、コンテンツ自体を衰退させることもある。(実際仕事がなくなったり、コンテンツ自体がなくなったこともあった)
件の件でも、俳優自身が版元に許可を受けず、個人的に「仮面ライダー」を名乗っていたら、ちょっと正視できないなぁ……と思いながら見守っている。
言いたいことは以上。
本件に関しては、過去に仮面ライダーフォーゼでJKを演じられていた、土屋シオン氏のコメントで言いたいことをほとんど言ってくれているので、気になる方は参照していただきたい。
大きなコンテンツに関わるものとしては、そのコンテンツの私物化はしてほしくないものだ……と思う次第。
自分にもなにかできないかと思われた方は、下記から募金などもできるようなので、こちらもリンクを記載しておく。
本日は以上。
蛇足ではあるけど追記
お見舞いにいったのを動画でサブスクライブするのは、ちょっと受け付けない。
寄付とかなのかもしれないが、余命一ヶ月の一般の少年をエンタメとして消化するのは、いささかグロテスクに感じてしまった。