「悲劇を乗り越える若いエネルギーと家族のエネルギーを感じてほしい」映画『Winterboy』主演ポール・キルシェが来日&登壇イベントレポート
12月8日(金)よりクリストフ・オノレ監督の半自伝的な最新作『Winter boy』がシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開いたします。
公開を記念して、プレミア試写会を実施。初来日となる主演のポール・キルシェさん、プロデューサーのフィリップ・マルタンさん、そして本作の音楽を担当した半野喜弘さんが登壇し、作品の裏側を語っていただきました。
本作は、26歳で作家デビューし自身のセクシュアリティをオープンに表現してきたクリストフ・オノレ監督(『愛のあしあと』)の半自伝的な最新作。思春期の恋愛と、父の死による喪失と再生を描く。愛する者の死に直面したとき、その苦しみをどう乗り越えていけばいいのか――
どんな絶望の底にも差し込む希望の陽に、優しく心身を温められる感動作。
主人公リュカを演じたポール・キルシェは、主演2作目にして第70回サン・セバスティアン国際映画祭の主演俳優賞を最年少で受賞した逸材。しかも母は映画『トリコロール/赤の愛』のイレーヌ・ジャコブで父も名優ジェローム・キルシェ、兄弟も俳優という俳優一家の出身であり、本国フランスでは“新たなスター誕生”と将来を期待されている。
約300人が参加したオーディションの中から大役を射止めたポールさんは、念願の日本公開に先駆けてのお披露目に「この場所に立てて、そして日本の皆さんに作品を受け取っていただけて本当に最高です!」と主演映画を引っ提げての初来日に満面の笑顔。
作品についてポールさんは
「オノレ監督の自伝的映画ではあるし、彼の実人生が源だと感じられる物語。でもオノレ監督が最も興味を持っていたのは、今日の若者を語ることだったはず。オノレ監督は自分の持ち物や読んだ本、手袋などを僕に渡してくれたりして、違う形で彼の人生を僕に継承してくれた」と解説した。
プロデューサーのフィリップ・マルタンさんにとって、オノレ監督作品を手掛けるのはこれで6作目。大役を射止めたポールさんについて
「彼が来たのはオーディションが始まって3か月目くらい。すでに200人近くの候補者を見ていた中で『もう一人候補者がいる』と言われてテストビデオで見たのが、ポールだった」と回想。そのテストビデオはポールが自宅でリラックスしながらギターの弾き語りなどをしている様子を捉えたものだったそうで「映像を見た時にオノレ監督と二人で『この人だ!』と思った。まさに一人の俳優が出現した瞬間だった」と一目惚れだったという。
一方、音楽を手掛けたジャ・ジャンクー監督の『山河ノスタルジア』をきっかけに、オノレ監督から直々に作曲のオファーを受けたという半野さん。
しかし大まかなテーマを教えられただけの状態で「作品をイメージした写真や詩的な文章、ある青年がギターを弾き語りしている映像を渡されて、撮影前までにテーマ曲も作ってほしいと言われた。6曲くらい作って送った後にラッシュフィルムを見せてもらったら、主演はギターを弾き語りしていた青年で、しかもその母親役がジュリエット・ビノシュだった。すべてを後から知りました」と思い出し笑い。
さらに「作品の全貌がわかったところで新しい曲を作るのかと思いきや、『最初に送ってもらった曲のすべてがパーフェクトだった』と言われて追加作曲もなし。20数年間映画音楽をやってきたけれど、初めて撮影後に一曲も作らずに仕事が終わりました」とまさかの舞台裏を明かして、観客たちを驚かせた。
これにポールさんは「撮影中は監督も含めてみんなで半野さんが作曲してくれた音楽を聴いていました」と振り返り、プロデューサーのフィリップ・マルタンさんも「こんなにスムーズに事が運んだのは初めて」と半野さんの才能に感謝すると、半野さんは「次は映像を観てから曲を作りたい、とオノレ監督に伝えておいてください」と二人に伝言を託していた。
ポール扮するリュカの母親を演じたのは、フランス映画界の大女優ジュリエット・ビノシュ。ポールさんは「共演期間は短かったけれど、偉大な女優で感銘を受けました。撮影初日から強烈な存在感と物語にリアリティを与える力を持っていて、母性的感覚で僕に接してくれた。山中ロケでは夜になると僕らに手料理を振る舞ってくれました」と大女優の優しさに感激していた。
最後にポールさんは「悲劇を乗り越える若いエネルギーと家族のエネルギーを本作から感じてほしい」と日本の観客に向けてアピールしていた。
【『Winter boy』12/8(金)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開】
冬のある夜、17歳のリュカは寄宿舎からアルプスの麓にある家に連れ戻される。父親が事故で急死したのだ。大きな悲しみと喪失感を抱えるリュカ。葬儀の後、はじめて訪れたパリで、兄の同居人で年上のアーティスト、リリオと出会う。優しいリリオにリュカは心惹かれるが、彼にはリュカに知られたくない秘密があった。そして、パリでの刺激的な日々が、リュカの心に新たな嵐を巻き起こす―。
永遠に忘れることのない、17歳の冬の出来事。
父の死、そして、はじめてのパリ。
年上の青年との出会いが、少年を光へと導く——
冬のある夜、17歳のリュカは父親が事故で急死し、深い悲しみと喪失感を抱える。葬儀の後、はじめて訪れたパリで、年上の青年リリオと出会う。リュカは彼に心惹かれるが、リリオにはリュカに知られたくない秘密があった…。父の死によって世界が崩壊した少年が、深い喪失感と混乱、残酷な運命への怒り、未来への不安を抱えながらも、再び前を向くまでを淡く優しい映像美で描く。
26歳で作家デビューし、自身のセクシャリティをオープンに表現
俊英クリストフ・オノレ監督、自伝的な物語を映画化
「カイエ・デュ・シネマ」に映画評を寄稿し、その後映画監督となり、舞台の演出なども手掛ける多才なクリストフ・オノレ。自身のセクシャリティやパーソナリティを強い信念のもと真正面から表現し、観る者に勇気を与え続けている。本作はオノレの少年時代を描いた自伝的な物語。愛する者の死に直面したとき、その苦しみをどう乗り越えていけばいいのか――どんな絶望の底にも差し込む希望の陽に、優しく心身を温められる感動作。
全フランスが恋におちた新星ポール・キルシェ主演作
世界的名優ジュリエット・ビノシュと共演
主人公リュカ役を演じた新星ポール・キルシェは、“新たなスター誕生”とメディアからも絶賛され、第70回サン・セバスティアン国際映画祭主演俳優賞を受賞。名匠クシシュトフ・キェシロフスキ監督の『トリコロール/赤の愛』で鮮烈な輝きを放ったイレーヌ・ジャコブを母に持つ。リュカの母親役には『トリコロール/青の愛』『真実』などの名優ジュリエット・ビノシュ。息子を支える母親を熱演した。