バースデーケーキに火を灯す『ダークホース』たちとの好きを生きる人生
『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』という本をよんで、そこで紹介されていたダークホース・プロジェクトに惹かれ、この本を読んだ。
ダークホースとは「型破りな道のりを歩み、成功した人」。高校中退のシングルマザーが親戚の家で双眼鏡を手渡されたことをきっかけに天文学を学び始め、アマチュアとして初めて新惑星を発見したり、英語教師やウェイトレスといった職を転々としたあとでフラワーアーティストとして成功したり。
そうした普通じゃないルートをたどった『普通だった人たち』にどのような共通点があるか。じぶんのことを個性的で魅力的で特別だなんて言えない、謙虚な平々凡々ボーイズ&ガールズはかならず惹かれる本だろう。
充足感か。成功か
ダークホースは、いつからか”個人的な充足感の追求”に邁進した。
だれしも興味があることや価値観、欲求は個性的だ。けれど世の中には、だれもが羨む”正解らしき成功”がある。ダークホースはそのような成功に脇目も振らず、充足感を追い求めて動き続けることで、結果として世の中でも評価されるようになった。「充足感」が先なのだ。
本当のじぶんはどこにいるのか
MBTI診断をしたり、ストレングスファインダーをすると自分の人柄や強みがわかり「じぶんはどんな人間なのか」を言語化できるのでとてもたすかる。
けれど多くの人は今の仕事や生活に「なんか違う・・・」と違和感をもつ。標準的な教育システム、就職人気ランキング、親や周囲の人たちのアドバイスやプレッシャー。多数派の常識がみえないレールをつくっている。
宇宙兄弟で宇宙に憧れ、BLUE GIANTでジャズに惹かれ、ブルーピリオドで描かきたくなっても、本を閉じると「じぶんは主人公じゃない。これはリアルじゃない」と思い込んでいる。いったい本当のじぶんはどこにいるのだろうか。個性的なじぶんなんて、普通の人にはないものなのか。
無理ゲーなダークホースたちのルール
本書には型破りなルートで活躍するようになった実在する彼らに共通する、4つのルールがある。
「自分が好きなこと(偏愛)」を掘り起こせ
「自分にあった道」を選択する(リスクは確率ではない)
独自の戦略(自分のための正攻法)を考え出す
目的地のことは忘れて、目の前のことに集中する
原動力、選択肢、努力の仕方。どれも自分次第。自己肯定感欠乏ぎみで謙虚で真面目なパーソナリティな人たちにとって、ここまで自己流であることを要求されると「ダークホースのルールを守るのは無理ゲー」に思えてくる。
これまでの成功のルールは、多くの人が通る道を歩むこと、成功確率が高い選択肢を選ぶこと、効率的なスキル習得方法を真似することだ。そう過ごしていたら「自分が決めたわけじゃないから気がラク」だった。
バースデーケーキに火を灯す
小さい頃の誕生日は特別な1日だ。ケーキに火をつけて、家族や友だちが祝ってくれる。つかのま「じぶんは特別な存在なのだ」と思える。
あの頃は宇宙がすきだった。重力がなくて、人もたくさんはいなくて、不思議で難しそうな世界。将来なりたいことは迷わず「宇宙飛行士」と書いた。夢やあこがれにひたむきに、大人になるまで変わらず努力し続けられる人たちは称賛される。その純粋さ、一貫性。ブレない志に武士道を重ねる。
ダークホースはちがう。彼らは小さい頃から情熱を自覚していなかった。大人になり、違和感いっぱいの日々の中で試行錯誤してみつけた。「小さなモチベーション」を。
小さなモチベーションとはロウソクの火のようなものだ。小さくてそんなに明るくはないけれど、たしかにあたたかく、元気がわいてくる。
たくさんの火がともったバースデーケーキ。そんな特別で心温まるじぶんのためだけの好きの集まり。
マイペースにたのしめる。一口サイズでぱくぱく食べれる焼鳥がすき
枠とか壁を感じさせない。軽やかに風にのり、ときに歌う鳥もすき
真摯で誠実。問いに向き合い、世界の景色を変えてくれる本がすき
バースデーケーキで祝ってもらえなくなっても、自分のすきをだいじにして、言葉に行動にできる人がふえたらもっと社会は明るくなるはず。
ダークホースのことを知るきっかけになったこちらの本も、多くの人たちにとどくといいなぁ。おしまい。