親だからできないこと。子どもとだからできること
「自分が親だから、子どもにできないこと」
「自分の親だから、親にできないこと」
だれしも、すくなからずあるのではないでしょうか。
鳥羽和久さんの『おやときどきこども』と一緒に、考えていきたい。
子どものことはわからない
「子どものことは、ずっと見てきたから自分が一番わかってる」という自信は、子どもが大きくなるにつれ、次第に小さくなります。
どんな友達がいて何をするのが好きで、将来の夢は〇〇で、と小学生の頃までは包み隠さず話してくれていたことも、思春期になるにつれ話してくれなくなる。「言うことを聞く」という関係も、「言われたら言い返す」とか「言われても無視する」に変わっていきます。
そんなときに子どものことを理解しようと「ぜんぶ話して」と言ったところで、ますます子どもは親から距離をとってしまう。
子どもにとってちょうどいい距離感や親密さは、変化する。とはいえ、慣れ親しんだこれまでの「親としてのふるまい」をすぐに変えるのは難しい。。いつもの我が家ではなく、行ったことのない静かなカフェや、ちょっと遠出した自然の中でなら、いつもと違う関係を築き始めることができるのかも。
「〇〇しなさい」ではなく「どうしてそんな気持ちになったんだろうね」と、子どもに委ねる立場で話ができると、子も自ら話をしやすくなる。
鳥羽先生は子どもだけでなく、親子の間を見てくれる。そんな先生がいる塾があったら、親としてとても心強い(反面、頼りにしすぎてしまうかも)。
毒親だなんていいたくない
鳥羽さんの塾に、中学生時代にかよっていた礼太郎くん。彼は「努力が足りない」と叱責し続ける母親に、苦しめられていました。
大学生になった彼は「自分の親に対する考えが変わってきたところがあります」と話をします。人付き合いの少ない孤立した環境で、なんとかちゃんと子育てをしようとしていた母。強烈な罪悪感と憎しみ、そして自己否定。
自分は被害者だ、と、自分の問題を親のせいにしてるだけ、という見方の間で揺れ動く彼。「誰が悪いのか」という叱責の見方を、哀しくも母親から受け継いでしまっている様子がみられます。
母子家庭で育ったこともあり、彼に自分を重ねてみてしまう部分があります。両親が離婚したことで、友人と別れなければならなかったこと。福岡から四国の田舎へ引っ越すことになったこと。
憎しみほどの強い感情はないものの、自分を育ててくれたことを感謝する温かい気持ちも残念ながらいまだに持てていません。実家に帰り、思い出話をするところから、忘れてしまったストーリーをやり直していくことが必要なのかもしれません。
子どもがいるからやり直せる
昔は『価値観』という言葉はほとんど使われていませんでした。夢や憧れに個性はあっても、「どんな人生を歩むのが正解か」には普遍的な正解らしきものがありました。
現代の大人たちは、多様な価値観を受け入れる社会を歓迎しつつ、自分の価値観の頼りなさに多少なりとも不安感を抱いているのではないでしょうか。
正直さや率直さ、というのは、説明や意味や正しさを求めがちな大人との間で発揮することは難しいものです。世の中の声ばかりに耳を傾けていると、やるべきこと、やらなければならないことに日々を費やしてしまう。
やりたいことの本気度とか真剣さを考えてしまうところも大人の悪癖だ。「なんとなく気になる」「なんだかわからないけど好き」な、曖昧なことから手始めに近づいて、すくすくと自分の人生をやり直していけるといい。
私も「とおさんは、本すきだよね」と子どもがいってくれたから、本好きな自分に正直になれました。明るく楽しくやかましい家族に感謝です。
📕こもれび書店
『こもれび書店』という共同書店の棚をひとつお借りして、小さな本屋さんを開いています。水曜と木曜はお休みです。
「おやときどきこども」は新刊を置いてます。よかったらお越し下さい。
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