やっと観れました。『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』
カナダでは、今年から9月30日が正式に国の法定休日に加わりました。The National Day for Truth and Reconciliation(真実と和解の日)と呼ばれています。先住民の方々へ行った過ちを反省し過去から学ぶ日です。
職場では毎年、自己評価シートに「今年度の目標」をいくつか書かされるのですが、今年に入ってから「先住民の文化・歴史などを学ぶ」という項目を(任意だけど)加えるように言われました。さてどこから学ぼう?と思って探していたところ、この映画に出会ったのです。(基本はポピュラーミュージック史であるので、職場の評価シートには使えないとすぐにわかりましたが。。。)
私、スティーヴィーは、彼がカラーコードをやってた頃から好きなんです!当時、アルバムやTシャツも買いました。でもこっちに来てからあまり音楽を聴かなくなって情報には疎かったので、映画の存在すら知らなくて💦。ともかくスティーヴィー・サラスがプロデューサーなら、借りるんじゃなくて買わなきゃ!とiTuneで購入しました。そして今回観るにあたって制作秘話や映画祭でのインタビューなどもチェックしてみました。
映画を作るきっかけは、ネイティブ・アメリカン音楽のリサーチャーからインタビューを受けたこと、スミソニアン博物館でのネイティブ・アメリカン・ミュージシャンの展覧会の企画を手伝ったことなどがきっかけだったと言います。そこで先住民のドキュメンタリーなどに力を入れているカナダのモントリオールの制作会社にお願いし、完成まで4年程かかったそうです。「俺たちの世代のギターヒーローって言えば、ペイジ、ベック、クラプトン、ジミ、ピート・タウンゼントとかがスタンダードだけど、スラッシュと話してる時『じゃあ、彼らの音はどんな人たちから来ているんだ?』ってことになって辿って行ったら、その中にリンク・レイの名前が何回も出てきたんだよ。」と言っていました。
映画を観終わった感想なんですが、とーっても楽しめました!興味深いエピソードが満載です。こういう切り口で、アメリカの音楽の歴史を語っているのがとても新鮮でした。ネイティブ・アメリカン関係の音楽史を100年位前まで遡っており、沢山のアーティストが登場し様々な情報と逸話が、2時間弱の映画の中にふんだんに盛り込まれています。どうりで完成まで4年も掛かるわけですね。
チャーリー・パトンから始まり、どう彼がハウリン・ウルフとポップス・ステイプルズと繋がっているのか、ジェシ・エド・デイヴィスがタジ・マハールに同行する形でイギリスへ渡り、1960年代後半からイギリスのミュージシャンたちと関わっていくあたりなどとても興味深かったです。点と点が線で繋がった感じとでもいうのでしょうか。
60年程も前のことなので価値観が違うのはわかるのですが、リンク・レイの「Ramble」はインストゥルメンタルでありながら、音が暴力的だという理由で放送禁止になるなんて驚きました。エルビスなんて、際どい演奏スタイルで最初に物議をかもしながらも切り抜けられたのにな。
彼らの音楽史は、黒人のルーツ・ミュージックと、白人によるロックやフォークの影に隠れてあまり表に出てこなかった部分なのだなと思いました。非白人であるというだけで弾圧されていたわけですし。ロビー・ロバートソンが母親に言われた言葉が切ないです。 “be proud you’re an Indian, but be careful who you tell.”
私が気に入っているシーンが、いつくかあります。
一つ目はストーンズがハウリン・ウルフをイギリスのTV番組で紹介する場面で、ブライアン・ジョーンズがもう、それはそれは嬉しそうだったことが印象的でした。
二つ目はジミ・ヘンドリクスの祖母であるノラさんとジミの妹さんがでてきたこと。ノラさんはチェロキーの血が入っている方だったそうです。彼らの話を聞く限り、ジミはおばあちゃん子だったようです。
それと最後、ランディ・カスティロ(オジー・オズボーン・バンド)のエピソード。スティーヴィーと友達で、スティーヴィーがショービズの世界で自分を見失っているときに、ランディは彼の故郷であるニュー・メキシコにスティーヴィーを連れて行ってあげたこと。そしてフィル・スーザン(元オジー・オズボーン・バンド)が語るランディの思い出も素晴らしかった。
そうやって身内や身近な人たちが語る人物像も面白く、彼らがとても愛されていたんだというのが伝わってきてそれも楽しめた理由の一つです。
様々なエピソードを上手にまとめてあり、2017年度サンダンス映画祭でMasterful Storytelling 特別審査員賞を受賞したというのもうなずけました。音楽が好きの方にぜひお勧めします!
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