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【鑑賞記録】特別展「本阿弥光悦の大宇宙」

東京国立博物館で開催中の特別展「本阿弥光悦の大宇宙」(3月10日まで)を拝見しました。
(画像出典ColBase:https://colbase.nich.go.jp/)

刀剣の鑑定家であり能書家でもあり、漆芸家、作陶家としても知られる本阿弥光悦を紐解く展覧会でした。

今回の鑑賞ポイントは書と下絵とのコラボレーションとしたかったのですが、多岐にわたる作品が展示されていて下絵のあるものは少なく目的には叶いませんでした。やまと絵展と比べると借用先が厳選されていて、よく知られるものが多かったです。

入口には国宝「舟橋蒔絵硯箱」が位置し、四方から鑑賞するとライティングによって銀の文字や金の浪などがさまざまな姿を見せてくれます。まさに大宇宙という感じです。続いて消息や使用印があり光悦という人のイメージを作り上げます。

漆芸では螺鈿や蒔絵の作品が並びます。硯箱の蓋四方が丸みを帯びている姿が愛らしく感じました。

京都国立博物館が所蔵する「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」は二度借用のチャレンジをしましたが、拝借に至らなかった作品です。二度目として今年度の特別展への出陳を打診しましたが、すでに「本阿弥光悦の大宇宙」で展示されることが決まっていて借用できませんでした。当館では13メートル全巻を展示できなかったでしょうが、本展では巻頭から巻末まで巻き替えなしの展示をしています。鶴は右方向から左を向いて連なりますがたまに右向きの鶴が現れてアクセントになっています。紙の天に金泥で嘴だけを描いて徐々に銀泥の鶴が現れてくるのもモンタージュのようで見ていて飽きません。巻末をみると軸付きの和紙はなく鶴がデザインされた紙が軸に繋がっています。制作の過程を考える愉しみがあります。

「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」京都国立博物館蔵

「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」の向かいには当館特別展でも借用した「新古今集和歌巻」が展示されていて、こちらも巻頭から巻末まで見ることができます。

展示の最後に茶碗が展示されています。久しぶりに「無一物」を見ることができました。光悦は手捻りで作陶していたので凹凸が手のひらに吸い付きそうな感じがして持ってみたいと思う作品です。

今回は本館と東洋館も拝見しました。本館では長谷川等伯の国宝「松林図屏風」や正月遊びの浮世絵が展示されていました。東洋館では呉昌碩の特集展示を拝見しました。林宗毅氏が寄贈された定静堂コレクションからも展示されていました。東博には北宋南宋などの古い時代の作品が寄贈されていると思っていたのですが、近代書画も含まれていたのですね。王一亭や丁補之など追随した画家たちの資料もあって参考になりました。