見出し画像

梱包・発送業務の "Uber化"で配送のリードタイムを削減する「Packsmith」

ECが発展するにつれて顕在化した物流問題。特にアメリカは国土が広いぶん配送にも時間がかかり、なかでも「ラストワンマイル」の問題はブランドが長年頭を悩ませてきた課題のひとつだ。

そんな中、フルフィルメント業務を分散化することで配送のリードタイムを削減するサービスとして注目されているのが「Packsmith(パックスミス)」だ。

Packsmithは、梱包・発送業務を担うギグワーカーのネットワークを構築し、分散化されたフルフィルメントサービスを提供している。

従来の物流システムでは、大型拠点を中心として物流網が構築されてきた。もともとは工場から問屋、店舗へと限られた拠点間で効率的に配送するために構築されたものであるため、個人宅への配送においては非効率な部分が多い。特に個人宅に届くまでの「ラストワンマイル」は、物流コストの中でも大きな割合を占めているという。

従来の物流モデルの考え方(Packsmith Instagramより)

Packsmithの創業者であるBen WundermanとSimon Robbの二人は、それぞれにUber、Lyft、Postmatesといった移動や物流のSaaS企業で経験を積む中で物流業界のこうした非効率な部分を知り、Uberのようにギグワーカーのネットワークを築くことで課題を解決できるのではないかと思いつく。

従来の大型拠点を中心とした物流ネットワークとは対照的に、Packsmithはサイトに登録しているギグワーカーの自宅を倉庫化し、全国に無数の拠点を持ち、注文場所から近いエリアで梱包・発送業務を行うモデルだ。

個人宅を物流拠点に変えるPacksmithの考え方(Packsmith Instagramより)

注文を受けたワーカーは商品の梱包を行い、UPSやFedx、Uberといった配達業者に商品を渡すところまでが業務となる。移動距離が短くなることで配送リードタイムも大幅に削減することができ、従来の配送方法に比べて配送のリードタイムを30〜70%削減しているという

オーダーはひとつひとつ個別に管理され、作業の進捗を確認することはもちろん、オーダーごとに同封するサンプルやリーフレットを変更したり、購入回数が多い顧客にサンキューレターや特別クーポンを入れたりといったフレキシブルな依頼も可能だ。ECからの注文品のみならず、インフルエンサーへのギフティングに利用することもできる。

管理画面のイメージ(Packsmith  Official Pageより)

ワーカーのレビューシステムがあるのもUberと同様だ。ワーカーは作業の開始時と終了時の写真を送り、それをPacksmith側が評価する。こうしたレビューシステムの構築によって、ギグワーカーのクオリティも担保されている。

なおPacksmithのサービス利用料はオーダーあたり9.79ドル(2024年6月現在)で、初期費用などが発生しない点も新興ブランドから支持を受けているポイントだ。Packsmithユーザーの中には、急成長を遂げている注目のブランドも多い。

利用しているブランドの例(Packsmith  Official Pageより)

今後さらにオンラインでの買い物が増えていくなかで、物流の効率化はブランドにとっても社会全体にとっても大きな課題だ。従来型の拠点間移動を前提とした仕組みではなく、Packsmithのような分散型モデルが今後注目を集めていきそうだ。


▼米国の次世代ブランドやリテールテックの情報はCEREAL TALKのニュースレターでも配信中。

▼海外のリテールテックやD2Cにまつわる最新ニュースを紹介/解説するポッドキャストも配信中。

いいなと思ったら応援しよう!