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歌誌『塔』2024年7月号掲載歌「色彩は光の受苦である」

皆さま、こんにちは。
連日の酷暑。そして夕方のゲリラ豪雨。
いかがお過ごしでしょうか。

夏向きの感じの良い句をひとつ置いておきます。
星野立子は俳人 高浜虚子の次女。
女流俳人の先駆的な存在という位置づけで広く俳人に愛されており、私も立子の平明にして清澄な作風が好きです。

このりやうを色にたとへてみれば紺

星野立子


かれこれ10年以上続けてきた短歌。
正直なところ時にはしんどいなぁと感じることもありました。
好きになることよりも嫌いにならずにずっと付き合っていくことのほうが大変で大切。人も短歌も。
短歌を嫌いにならないコツは、(必要以上に)他人と比較をしないこと(比較をして落ち込まないこと)だと思っています。
他人と比較することで自分も頑張ろうという向上心が湧くこともあるけれど、ずっとその状態をキープするのは難しい。
外からの刺激はほどほどにして、水面のきらめきにほぅとためいきを漏らすような時間を持ちたいものですね。

それでは『塔』2024年7月号の掲載歌。山下洋選です。

男とふ何かと誤解されやすき動物として改札を出る
色彩は光の受苦であるといふ思想をひそかにゲーテより知る
降りしきる霙のなかを振り返り振り返りして君帰りゆく
蝸牛まひまひがしやこりしやこりと苔を食む我はしづかな余生をのぞむ
あたたかい紅茶をいれてひとやすみ祖母ならきつとぬくいと言ふはず
伐られたる桜、椿、花水木ひと月経つて人みな忘る
伐るといふ漢字に人偏あることの謂れを思ふ三月四日

『塔』2024年7月号p140


染色家 志村ふくみさんの随筆でゲーテの『色彩論』を知りました。

⾊彩は光の⾏為である。⾏為であり、受苦である。

ゲーテ『⾊彩論』緒言

ゲーテが色彩について具体的にどのような見解を持っていたのか、ニュートンの色彩学にどのような批判を加えたのかetc…気になる方は書籍にあたってみてください。私には解説する力はありません。

志村さんは以前、下記の記事を書きました。よろしければこちらもあわせてご覧ください。


★2024.9.14追記
君村 類さんが拙歌に評を寄せてくださいました。ありがとうございます!

蝸牛がしやこりしやこりと苔を食む我はしづかな余生をのぞむ
<評>
生態の説明から主体の望みへの飛躍に惹かれるものがあった。かたつむりは歩みも食事もゆったりとしており、それを「しやこりしやこり」との新しい擬音で表現したところに作者の技量が光っている。(君村 類)

『塔』2024年9月号p190


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