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歌誌『塔』2024年6月号掲載歌「藍の浴衣で川越行かな」

皆さま、こんにちは。
今日の午後は大気が不安定で、落雷や雹に注意が必要だそうです。
気温も高くて外出には不向きでしょうか。
お出かけなさる方はお気をつけくださいませ。

【夏心】
おほかたは夏のこころになりぬらむちりにし花をいふ人のなき(昭憲皇太后)

明治神宮編『新版 明治の聖代』p159

明治17年の御歌。初夏に思い出す歌のひとつです。
「世のおおかたの人は、もうすっかり夏の心になってしまったようです。
 散り果てた花のあわれを言う人ももうおりません。」
連日の暑さゆえ、私もすっかり「夏心」になりました。


午前中、久々に池袋のヤマハ楽器で電子ピアノを見てきました。
店員さんにClavinovaシリーズのCSP-275を解説していただきました。
私が確認したかったのは主に以下の項目です。
鍵盤:樹脂製と木製の違い。グランドタッチ-エス鍵盤の感触。
便利な機能:ストリームライツ(譜読補助)、スマートピアニスト(アプリ)、PDF楽譜やMIDIデータの活用etc.

やはり電子キーボードの軽い鍵盤とはタッチ感が全然違いますね。
以前、神奈川に住んでいた頃、ピアノスタジオのアップライトピアノで遊んだことがありました。ハンマーが弦をたたくことで音が鳴るというピアノの機構を思うと、打楽器に分類されていることが体感として納得できました。
鍵盤は大事。
今日は店員さんから詳しいお話を伺って、ネットだけでは得られない情報に接することができました。

それでは『塔』2024年6月号の掲載歌。村上和子選です。

正門のレンガのみちを這ふ蚯蚓ここはあぶない土へお入り
男とふ性に飽きたり女にて藍の浴衣で川越行かな
水道の蛇口ぽちよんと音のして二時間ごとに目が覚める秋
靴下をはいてゐない足首のどこかしんとしてゐるゆふべ

『塔』2024年6月号p156

短歌には季語という概念はありませんが、俳句の世界では蚯蚓みみずは夏の季語に分類されます。
「何をしにここに出てきて蚯蚓死す」(谷野予志) アスファルトの上で息絶えているのをたまに見かけますね…。土のなかにいればよかったのに。

ちなみに「蚯蚓鳴く」は秋の季語になります。とは言うものの、蚯蚓には発生器がないので本当は鳴くことはありません。
おそらく螻蛄おけらと取り違えたのでしょうね。しかし、蚯蚓が鳴くという詩的な把握は、秋という季節の情趣を深く感じることができる気がします。
「蚯蚓鳴く六波羅蜜寺しんのやみ」(川端茅舎)

★2024年8月13日追記
「男とふ性に飽きたり…」の拙歌に井上雅史さんから評をいただきました。ありがとうございます!

男とふ性に飽きたり女にて藍の浴衣で川越行かな
<評>
人生でやるようなことは一通りやってしまったのだろうか。女になって生きれば新鮮な楽しみがたくさんありそうだという妄想だろう。藍の浴衣や川越という具体が、なんとなくの思い付き以上の迫力をもたらしている。(井上雅史)

『塔』2024年8月号p189


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