我々は竹中平蔵という「わかりやすい悪」を作った
ネット界では竹中平蔵ほど長きにわかって愛される男もなかなかいないのではないでしょうか。
小泉改革の旗振り役として、パソナグループの名参謀として、民間議員として、ネット政治界では常に悪の総本山のように親しまれております。
中でも派遣法大改悪の実績が評価され、絶大な人気を誇っております。
それにしても「竹中のせいで非正規化(派遣化)が進んだ」という声は多く聞かれますが、果たして本当なのでしょうか。
それを完全に否定する気はないのですが、一方で派遣という働き方が望まれていた面はあったのではないでしょうか。
と言うのも、氷河期世代の中で正社員になった人は、なかなかにブラックな働き方に順応しています。
私は思うのです。
人は単に「竹中平蔵と言うわかりやすい悪」を欲していただけではないかと。
本当の原因に見向きもせず、竹中平蔵という悪役に全ての責任を押し付けることにしたわけです。
しかし、本当に悪事したのは竹中平蔵ではないのではないかと思います。
30年間日本を停滞させた本当の責任は誰にあるのか。
それを今回は述べたいと思います。
💸長時間無賃残業が当たり前にある正社員
これは「最近は日本人より外国人労働者のが勤勉だと経営者から言われることが増えた」と言うツイートに対するリプライです。
日本の病理を140文字以内でよく表しています。
派遣という労働形態が広まった要因には「正社員のブラックな働き方が嫌だった」という社会的な要望もありました。
2000年代は残業100時間など当たり前の世界です。
単に残業100時間というレベルでなく、正社員は無賃残業が当たり前でした。
令和になっても中小企業レベルでは無賃残業が当たり前に存在します。
実際問題として、この流れが多少マシになり出したのは、高橋まつり氏の過労自殺があってからのことです。
つまり「東大卒美人が死ぬまで労働環境は一切改善されなかった国が日本」だと言うことです。
現に東京オリンピックでも23歳の若者が過労自殺しているのですが、何も変わりませんでした。
「残業程度に耐えられない軟弱者なぞ死んで結構」と言わんばかりに世間は無反応だったのです。
ワタミにおける森美菜氏の過労自殺は2013年に起きていますが、これも働き方を根本的に改善する動きには繋がりませんでした。
そして氷河期世代は単に2000年代初頭までの就職氷河期世代であるというだけではなく、リーマンショック世代でもあります。
つまり、第二次世界大戦後の日本で一番不条理を知っている世代なわけです。
で、バブル世代も長時間残業はしてきたと思うのですが、氷河期世代との大きな違いは終身雇用の有無です。
氷河期世代は終身雇用が崩壊してきているのですが、一方で長時間無賃残業は残りました。
この働き方が嫌だと思った人が、正社員レースから逃げ出し、派遣や契約社員という働き方を選んで行きます。
🐕そして氷河期世代は社畜となり走狗になった
しかし、一方で正社員としてブラックな働き方に邁進したのも氷河期世代なのです。
正社員として働けた氷河期世代は終身雇用が崩壊しているのにも関わらず、喜んで休日を差し出し、無賃残業をしていました。
「働けるだけでありがたい」
そんな言葉もあった時代ですから、当時正社員就職できた氷河期世代は権利を主張することなく、喜んで社畜となり、課長は経営者の走狗になりました。
これは竹中平蔵が悪いのでしょうか?
そうではありませんね。
竹中平蔵はこんなことに全く関与していないのです。
とりわけ、2000年代までの日本は「権利を主張するのはみっともないこと」という風潮がありました。
コンプライアンスなんて言葉は2000年代にはありましたけが、よく聞くようになったのは2010年以降のことです。
最近は少子高齢化もあって、転職市場は売手市場なんて言われていますが、ここ数年になって、ようやく正常化が始まったと言うのが実態なのです。
📢権利を主張してこなかった責任はないのか
竹中平蔵は「わかりやすい悪」ですが、その下には「わかり辛い何万人もの悪」が存在しています。
「わかり辛い悪」とは一体誰か。
それはサービス残業をこなし、権利を放棄し、課長の社畜となり、社長の走狗になることを受け入れた、私達1人1人の責任と言えましょう。
しかし、多くの人は「こんな世の中になったのは俺が悪い」なんて思いたくはありません。
だから「わかりやすい悪」として竹中平蔵を求めたのです。
残業代はちゃんと払って欲しい、長時間残業は勘弁してほしいと言うのは、突き詰めると「法律をちゃんと守って欲しい」と言うてるだけなのですが、それすらマトモに飲んでもらえないのが、日本の悲しい現実ではございますね。
竹中平蔵なんかよりも、労基法を守らない経営者。
そんな経営者に進んで走狗になりにいく中間管理職。
竹中平蔵などより酷い社会人はたくさんいるのです。
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