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紅葉を待たなくても、身近に秋は溢れている。

 静岡の魅力の一つに、町と自然の近さが挙げられます。静岡駅からバスor自転車で30分ほど北上すると麻機 あさはた遊水地に着きます。ここは市内の二級河川・巴川ともえがわの治水対策として整備された土地である一方、たくさんの生き物を観察できるスポットでもあります。
 先日訪れると、遊水地の至るところに秋が溢れていたこと、そして前なら気づけなかったような小さな秋に気づけたことが嬉しかったので、少しお裾分けさせてください。

モズの高鳴き

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モズ(Lanius bucephalus) スズメ目 モズ科

 秋になるとモズたちは縄張りを主張するため、高らかに鳴きます。見通しのよい枝や電線の上にとまり、大きな口を開けて「キキキキキキッ」と。高鳴きを聞くと、75日後に霜が降りるといういわれもあるそう。有名な秋の季語です。麻機の至るところで高鳴きを聞きました。
 モズはスズメサイズの可愛らしい小鳥に見えますが、「小さな猛禽類」と呼ばれ、ネズミや虫などを捕まえて食べる立派な肉食の鳥です。よくよく嘴を見ると、確かにかなり力強い形をしている。捕まえた獲物を枝に串刺しにする「早贄(はやにえ)」で有名な鳥でもあります。強い。

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ジョウビタキの訪れ

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ジョウビタキ♀(Phoenicurus auroreus) スズメ目 ヒタキ科

 街中の公園でも見かけることができるオレンジ色のかわいい小鳥。秋になると訪れる渡り鳥です。10月20日に見かけたのですが、ちょうど到達したところだったみたいです。夏は中国・朝鮮半島あたりで子育てをしてるそう。
 オスはもっと鮮やかなオレンジで、街なかの大きめの公園でも見られます。なかなか野鳥好きじゃないと気づかないかもしれませんが、こんなきれいな鳥が身近にいるって感動しませんか。

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ジョウビタキ♂

キタテハの秋型

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 キタテハ(Polygonia c-aureum)チョウ目 タテハチョウ科

 春から晩秋まで、わりといつでも草原をフワフワしているチョウですが、秋生まれはオレンジ色が鮮やかになります。先日みたキタテハもしっかりオレンジ色なので秋型でしょう。ちなみに翅の裏面は枯葉のようなデザインになっています。

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草紅葉

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第1工区近くの巴川

 このエリア、外来種も多めですが、草が茂っていて色んな生き物がみられるのでとても好きな水辺です。すっかり秋色に染まっています。水の透明度が高く、橋の上から肉眼で小魚を見ることができました。

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エノコログサ(Setaria viridis)イネ目 イネ科 キビ亜科

 通称”ネコジャラシ”もしっかり赤く色づいていました。これまでネコジャラシが紅葉するって気づいていませんでした。意識して見ないと過ぎ去ってしまう。

アキアカネ

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 アキアカネ(Sympetrum frequens)トンボ目 トンボ科 アカネ亜科

 秋の風物詩、赤とんぼ。実は夏にも"ナツアカネ"とか”ショウジョウトンボ”がいるので、赤とんぼ=秋というのは思い込みだったりします。それでも秋に赤とんぼを見かけると、童謡を思い出してほっこりしますね。

その他、みかけた生き物たち

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ウラナミシジミ(Lampides boeticus)チョウ目 シジミチョウ科

 構造色の青色が美しいです。あまりに関心して、シジミチョウの構造色を調べたところ、そもそも構造色をうみだす鱗粉の形状に種類(シジミチョウ科はUrania型が大多数で、一部Morpho型)があるとのこと。詳しくはこちら「シジミチョウ科の鱗粉の微細構造と系統発生学的意味合い」(R. J. D. TILLEYら,2002年)

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オオバン(Fulica atra)ツル目 クイナ科

 冬になると巴川にはオオバン集団が表れる。春夏どこにいるんだろう。

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モンキチョウ(Colias erate)チョウ目 アゲハチョウ上科 シロチョウ科
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ノスリ(Buteo japonicus)タカ目 タカ科 ノスリ属

  秋の空。トビの次によく見られる猛禽類。

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ホテイアオイ(Eichhornia crassipes)ツユクサ目 ミズアオイ科

 在来で絶滅危惧の「ミズアオイ」は保護されてるのですが、ホテイアオイは外来種で、第4工区で繁茂してました。彼らに罪はなくとも、他の生き物にとってどうしても影響が大きい。人が持ち込んだので人が始末をつけなければいけない。

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コサギ(Egretta garzetta)ペリカン目 サギ科

黄色い足がチャーミング。いつも第4工区ではいつも見られます。初夏には第3工区手前の田畑に集団でたむろしてる姿もみかけました。

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 そろそろ生き物の話ばかりでおなか一杯かもしれません。ほんとはもっと見てほしい生き物の写真があるのですが、またの機会に。

 最後に、麻機遊水地の概要(ともう少しだけ鳥のこと)をご紹介。

緑地公園として整備された第1工区、生き物探しが楽しい第3工区、サギをのんびり眺めるなら第4工区

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パンフレット「麻機遊水地に蘇る生きものたち」(静岡県土木事務所)よりhttps://asabata.org/wp-content/uploads/2013/10/panfuret.pdf

 遊水地という名前が示す通り、ここは巴川へ流れ込む水量を調整する場所で、大雨の際は水浸しになります。安全にしっかりと水量調節を行えるよう、第1~第4工区にわけて治水対策工事が進められてきました。
 各工区間は少し離れていて、最初にGoogle マップ上で検索すると少しわかりにくいかもしれません。生き物を探しに行く場所は第1、第3~4工区です(第2工区は観山中学周辺ですが、田畑なので遊べる場所ではありません)。 

 車で行く場合は、「あさはた緑地(第1工区)」を目指すことをお勧めします。今年4月にオープンした、広くてきれいな駐車場とセンターハウス、遊具などがあって、土日は家族連れがおもいおもいに遊んでいます。初夏、満開の蓮の花が見られるのも、第1工区とこども病院の間です。
 生き物観察が目的なら第3工区が一番人気です。奥に広く、水鳥、草原の虫や植物まで色々と見つけることができます。サギとカワウ、そしてカワセミはだいたいいつでも見られます。

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カワセミ(Alcedo atthis)ブッポウソウ目 カワセミ科

 第4工区の池の真ん中にはサギの巣があるので、いつでもサギを観察できます。そして水際に木道がせり出していて、水生昆虫や魚を観察したり捕まえるには、ここが一番遊びやすいでしょう。

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初夏に第4工区を訪れたときの写真です。


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第4工区「サギの巣」に生えるナンキンハゼの上に、アオサギ
アオサギ(Ardea cinerea)ペリカン目サギ科アオサギ属

 アオサギは、街で見られる鳥の中で最大サイズの鳥です。羽を広げると1.7mぐらい。堂々と歩くので、とてもかっこいい。ファンも多いです。

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麻機遊水地についてもっと知りたい人へ

 基礎情報は「麻機遊水地保全活用推進協議会」のWEBサイトに詳しいです。とくに「遊水地パンフレット」がおすすめ。こちらのシリーズで生き物の名前を覚えました。

 麻機に通うようになって、名前のわかる生き物の数が格段にアップしました。そして季節の移り変わりにも敏感になったと思います。
 せっかく町の近くにこんな素敵な場所がるので、いい天気の日には生き物を探しに、季節を感じに、寄ってみてください。思わぬ出会いがあったり楽しいですよ。

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 名前のわかった生き物をどんどん投稿するだけのtwitterアカウントです。麻機遊水地の生き物もたくさん登場します。



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