最期を撮っておけばよかったの?
天使みたいな、とても静かな赤ちゃんを産んだ時、助産師さんに笑顔でこう言われた。
「お写真撮りますか?」
想定外の質問に、ついこう答えた。
「写真は、撮らないです…!」
こんなに可愛い子と、すぐにお別れをしなければいけない。それなのに、写真を撮ってしまったら、その姿を記録してしまったら、引きずってしまうのではないか。
きちんと、お別れをするには、忘れることも必要なんじゃないか、と咄嗟に思ったのだ。
数年経った今でも、それが正しかったのかどうかわからない。愛くるしい寝顔は、私の頭の中で少しデフォルメされ、原型を留めていない。
ただ、愛しさだけは強烈に私の体の中に刻まれ、今に至る。