桑原あいのピアノで泣いた日
ラジオから聞こえてきたジャズピアニストの音を聞いて、数年ぶりにコンサートのチケットを予約した。
6/25(金)東京オペラシティでのリサイタルホールでのソロピアノ。
ブルーノート東京のライブもあったが、ひとりで行くには少しハードルが高いし、夜も遅くなる。オペラシティは初台だから行きやすいし、トリオではなくソロピアノというところもいい。
子供はまだ小さいけど、休みを取って旦那に任せればなんとかなる。こんな時だけど、なるべく、今、生で経験できることを大事にしていきたい、そんな気持ちもあった。コンサートが終わった時に、日頃のストレスや考えすぎている色々な問題から、少しでも解き放たれたらいいな。そんな期待もあった。
まず驚いたのは、前から2列目の、鍵盤がちょうど視線の先にある、超特等席だったこと。思い立ってすぐ予約してよかった。それだけで気分はより高揚する。
91年生まれという彼女は、ノースリーブにラベンダー色のパンツスタイルにゴールドのスニーカーを合わせた、想像以上にカジュアルなスタイルで現れた。
『Opera』というアルバムはiPhoneで何度も聞いていたけれど、ご本人曰く、このツアーでどんどん変わってしまっていて原型をとどめていない、自分でも今日どうなるかわからない、アルバムとは全然違うのでヨロシク!(というニュアンスのことをおっしゃっていました)とのことだった。
1曲目が始まってすぐ、不思議な感覚に陥った。まるで何かドラマチックな映画を見ているような感覚、そこに自分の見えない感情が入り込んでいくような。
そして私は気がつくと泣いていたのだった。
もしそのコンサートホールに私一人だけだったら、号泣してしまっていたかもしれない。でも周りは真剣に彼女のピアノを聴いているわけだし、急にそんなことできるわけもなく。そして会場に入った時に気付いたのだが、久しぶりに履いたパンプスは、ただ歩いているだけで全面木板の床に驚くほど音が響き、迷惑この上ない。とにかく今は動けない。
必死で感情を抑えながら、静かに涙を流す。
その1曲目(曲名不明)がやけに私の琴線に触れたのか、その後は有名曲のカバーやアップテンポの曲などもあり、涙を流さずとも楽しむことができた。
とにかく上品で優しくて、まっすぐなピアノだった。
7月の公演「雨が止まらない世界なら」というミュージカルの作曲もされているという。行きたいな。行けるかな。これってもしかして私にとって長らく縁のなかった、「推し」じゃないの!「推し」が誕生したよ!
そして、娘に通わせるピアノ教室を検索し始める母なのであった。