マネジメントと企業文化
組織で働く場合、大きな組織の中には小さな組織(チーム)が含まれています、それぞれの組織には目標があり、複数の人々が目標に向かって協力しながら働くために「マネジメント」という知識・技術が必要になります。簡単に言えば、マネジメントとはチームで目標を達成するための努力の全てを指します。
では、目標とは何か。あるべき数字や状態の事です。数字は明確ですが、状態は明確でないこともあります。例えば「きれいに掃除する」という場合、「きれい」の判断は人によって違うかもしれません。そうなると、これは共有できる目標にはなかなかなりません。同じように、努力する、浸透させる、可能な限り、とか、何となくきれいな言葉でも、程度や状態がよくわからないものは目標にはなりません。
数字で表現できるものを「定量目標」、数字で表せないものを「定性目標」と言いますが、目標設定ではこの「定性目標」が誰にでもわかるようになっていなければなりません。これがマネジメントを行う上での最初のハードルです。うまく行っていない組織や経営状態の悪い組織ほど、この「定性目標」があいまいになっていることが多いものです。目標がはっきりしているからそこにどうやって到達するかを考えられるようになるわけですから、あいまいだったら行動が起きないのも当然です。しかしコンサルや研修の際に「目標設定」という言葉を使うと、うんざりした顔をされることが多いです(笑)。使い古されているからなのか、それとも数値目標に振り回されているからなのかは定かではありませんが・・・。そこでコーチングで使われる「ゴール」という言葉に言い換えたりはしていますが、結局言っていることはだいたい同じことですね。
組織目標と個人目標というものもあると思います。誰しも自分が幸せになるために働いているわけで、組織目標が個人目標と食い違っていたらうまく行くはずがありません。昔、日本のビジネスマンがワーカホリックと言われたり、「24時間働けますか?」などというCMが生まれたりした背景には、終身雇用が一般的だったこともあるでしょう。企業は将来にわたる雇用の保証というリスクを負い、働く人には滅私奉公のような働き方を求めていたわけですが、一見これは個人の自己犠牲に見えつつも、働く人にとって安心感や家族の生活を守るという目標へのリターンがありました。組織目標と個人目標はある程度同じベクトルに向かっていたから成立したのだと思います。
しかし、全体的な傾向で言うと、その後会社は成果主義の導入や、3年先のことなどわからない、などと言いながら、従業員に対して将来のリスクを負うことを徐々にやめてきました。だから昔の感覚でロイヤリティやコミットメントを求めたところで、これは組織目標と個人目標が乖離しているので、到底、昔のレベルでは無理な話なんです(もちろん個別にきちんとリスクを負って教育投資や長期雇用をしている会社もたくさんありますが・・・)。今でも社員に無茶な要求をしている会社もたくさんあるようですが、大事なのは、コミットメントを先に放棄したのは働く個人ではなく会社(組織)のほうだということ。マネジメントを考える上で、ここは忘れてほしくありませんね。