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【詩】お茶会の始まる時間 + 【日記】January 20, 2025 ニューヨークにて

その道を曲がったら、世界は霧の中だった

お茶会に遅れないでね
昨日の約束が耳元で繰り返される

間に合うだろうか

白い世界には天も地もなかった
左手は右手で、右手は左手だった
あなたを抱きしめられるなら、
右でも左でも構わないけれど、
どうやら地図は役には立たないようだ

明日は春の風のケーキを焼くわ

あなたの微笑みが吐息に揺れる
それはどんな色のケーキだろうか
カップに注がれる熱い紅茶を想った
テーブルに飾られた甘い花を想った
あなたの新しい白のドレスを想った

想えば想うほど霧は濃く深く、
すべてがさらなる白に溶けていく
それは果てしなく密で空虚で、
甘えて絡んで、容赦なく突き放す

ぼくの迷いがぼくを閉じ込める
ぼくの迷いがあなたを遠ざける

それなのに
ああ、こんな時でも
あなたが愛おしくてたまらない
柔らかな声が耳をくすぐった

いい?
迷子になったら、
霧が晴れるまで動いちゃダメだよ

それは甘く芳しく、
痺れた心の中に差し込む一筋の光
けれど、その霧がいつ晴れるかなんて、
そんな答えは存在しない
恐ろしいほどの静けさが、
ただただ世界を支配するだけだ

だけど、あなたの言葉がまた、
今度は優しくぼくの頬を撫でた
何もかもが温かくて柔らかくて、
ぼくをそっと包み込む

ねえ、来てくれるのでしょう?私のお茶会に
春のテーブルはあれもこれも全部、自信作なのよ

どこまでも無邪気で無防備なあなた
そんなあなたを一人になどできるはずがない

綺麗な花を摘んでいたら
すっかり遅くなったと言い訳しようか
そう言葉にしたら、ぼくの中の光が広がった
遠く幻のように、けれど揺るぎない輝きを持って

あなたのお茶会が始まるのは、
あなたが始めると決めた瞬間だ
あなたが繰り返し、そう教えてくれた

大丈夫、お茶会には遅れないよ

いつか霧が晴れたら歩き出す
今は膝を抱えて待っていても、
その日が来たらきっと
あなたが待っていてくれるから、
ぼくの時間はまた動き出す

春の風が何色なのか、
答え合わせが楽しみで仕方がなかった



雨がみぞれになって雹になり
やがて雪になって朝が来て
世界が凍りついた氷点下の月曜日。
大統領就任式。
どこへいくのか今は見えなくても
生まれた熱は誰もにとって目覚めの兆し。
指し示される可能性の枝々。
世界に一つでも光射す場所が増えますように。

少し長いのですが過去作から。
美しいお茶会の日を私も夢見つつ。




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