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04.【変幻自在なキャリア】プロティアン・キャリアとは/ダグラス・ホール

本日ご紹介するのは、ダグラス・ホール のキャリア理論。

彼の理論のポイントは、キャリア発達の最終目標は個人にとっての「心理的成功」であり、人間関係を大切にした相互交流・相互学習がキャリア発達を促すと述べている点。

社会的関わり合いを大切にしながら、サビカスも重視していた「主観的なキャリア」に注目しているのです。

このようにホールが主観的キャリアを重視する背景には、ホールが定義する「キャリア」を理解すると腹落ちします。

・組織階層の上方に進むことが必ずしもキャリアではない
・「成功」や「失敗」とは、キャリアを歩んでいる本人の評価であり、他者が評価するものではない
・キャリアには主観的キャリアと客観的キャリアがあることを認識する
・キャリアとは「プロセス」であり、生涯を通じた職務・役割の経験の連鎖である

では、私たちが「心理的成功」に向かって歩んでゆくには、どのような態度・行動をとれば良いのか?概要を解説いたします。

目次
▼プロティアン・キャリアとは
▼キャリアにおける意思決定
▼まとめ

▼プロティアン・キャリアとは
ホールは、急速な変化を遂げている現代において、「変貌を重ねる環境の中で自らの意思で変幻自在に対応していけるキャリア」の重要性を説き、それをプロティアン・キャリア(=変幻自在なキャリア)と名付けました。

皆さんは、ギリシャ神話の神の一人「プロテウス」をご存知でしょうか?

プロテウスは、変幻自在な姿と予言力を持った海の神様で、「プロティアン・キャリア」というネーミングは、このプロテウスに由来しています。

(私は当初、「プロテイン・キャリア」と勘違いしており、何て力強いネーミングなんだ…でもセンスないな、と思っていました。笑 ホール先生ごめんなさい。)

プロティアン・キャリアの形成には、「アイデンティティ」と「アダプタビリティ」が必要であると言います。

アイデンティティとは元々エリクソンが提唱した概念で、「私はこういう人間である」という自分の自分に対する印象のようなものです。

ホールは、環境に適応しながらアイデンティティを成長させていくには

・自分の興味・価値観・能力などを、自分がしっかり理解していること
・自分の過去・現在・未来が連続したものであるという確信
が不可欠だと述べています。

後者は具体的には「今日の努力が、明日、なりたい自分に少しまた近づくことを可能にする」というイメージを持つことだと言い換えられます。

ホールによると、「アダプタビリティ(適応する力)」とは、適応コンピテンスと適応モチベーションの掛け合わせによって得られるそうです。
サビカスの「キャリア適合性」に近い概念と捉えることができます。

▼キャリアにおける意思決定
キャリアに向き合う態度(プロティアン・キャリア)が理解できたところで、では実践において私たちはどう行動していけば良いのでしょうか?

ホールは、より良いキャリア意思決定に必要な4つの指針を示しています。

①日々の生活における「選択」を意識する
②サブ・アイデンティティの選択
 ※「サブ・アイデンティティ」とは、役割期待に呼応する自己認知。つまり仕事上、周囲から期待されている役割を果たしていくことで発達していく自己の一面です。
③自尊心を養う
④他者と関わる(関係性アプローチ)

余談ですが、①を目にした時にふと、コロンビア・ビジネススクールのシーナ教授の著書『選択の科学』(原題:The Art of Choosing)を思い出しました。
シーナ教授によると、人生は「選択」「偶然」「運命」の3つから成り立っている。この中で、自分の意思でコントロールできるのは「選択」だけであり、従って、人生をより良く生きようと思えば、日々の選択の質を高めることが大切になると提言し、科学的に立証を試みた本です。深い洞察に満ちた本で、個人的にオススメです。

▼まとめ
日本では近年、キャリアにおいて「自立」ではなく「自律」という表現をよく使うようになりました。

「自立」とは、他者に頼ることなく自分で物事を行えること。
「自律」とは、自分で考え、自分自身をコントロールできること。つまり、自分の意志を持って、自ら定めたルールに従って行動を選択できることです。

自分がどう生きたいかを考え、その信念に従って、自分の意志でキャリアを切り開いていく「自律的キャリア」。それは、自分軸を持ちながらも、人間関係の中から得られる学びを活かしたり、社会の変化へ変幻自在に適応してゆけるキャリアを歩もうと言うホールの考え方に通じるものがあります。

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