駕籠に乗る人担ぐ人そのまた草鞋を作る人

義母の家のご近所で家を建て直すお宅があり、やっと二階建家屋の解体が終わった。

最初から見ているが、そのお宅は路地と路地に挟まれた中間にあって重機が入れず、工事は手作業で始まった。
その解体には一週間ほど時間がかかり、4トンダンプ数台分の廃材や廃棄物が搬出された。

職人さんは親方を含めて4人。
親方以外は外国の人だった。

「オサワガセシマス、ゴメンナサイ」
(片仮名表現で外国人を表すのはアウトですね、ごめんなさい)
ちょっとたどたどしいが、東南アジア系の職人さんたちだった。
ベトナムあたりか。

親方も、
「埃が舞うんで、作業開始前にはお知らせします、洗濯物とか汚れちゃいますからね」
と言うが、その一週間前にも訪ねて来られて同様の話をし、作業工程表を記したチラシを持って来ていた。

「朝8時開始で、午前の休憩は10時から15分間、お昼は12時から1時間、午後の休憩は3時から15分間、それで終了は午後5時は絶対に過ぎないようにします、何か不都合があれば遠慮なく声かけてください」

足場を組んでの作業だから、とび職人さんたちだ。
たどたどしいにせよ、それで十分通じるのだから、何も問題はない。

二階建なので、最初に足場を組む。
路上にユニックを停めて踏み板や単管を下ろし、後は肩や頭上に担いで手作業で搬入。
手際よく足場が組まれ、騒音や防塵を兼ねたメッシュのシートで現場が覆われた。
そしていよいよ解体である。

それでも休憩時間には、スマホを使ってベトナム語(おそらく)で、家族(これもおそらく)と楽しそうに会話しているのを何度か見かけた。
逆に、難しい日本語をよく覚えたものだと感心した。

仕事にしても同様で、足場を組むなど、一朝一夕に出来るものではない。
知識と経験を重ね、それでやっと現場に出られるのだ。

解体は予定通りに終わった。
次は基礎工事が始まる。

2日か3日が経ち、今度はそちらの業者が挨拶に来た。
夕方だった。
2トンダンプ2台で乗り付けたから、どこかの現場終わりだと思う。

こちらは親方を含めて5人。
解体業者の時と同じように、親方以外はこれまた東南アジア系の職人さんばかりで、日本語もそこそこ流暢である。
下見も兼ねて連れて来たようだ。

基礎工事は杭打ち、配筋、型枠大工も兼ねる。
ということは当然、生コンだって扱うことになる。
みんな、立派な技能者である。


日本で働く外国人労働者は100万人を超えているらしい。
外国人の単純労働は日本では認められていないはずだが、建築や土木には資格の伴う作業が多い。
技能実習制度である。

その反面、単純労働に従事する外国の方も、日常的に見ることがある。
気づかないのは見ていないからか、見ても何も感じない(意識しない)人である。

法に反していたとしても、日本の社会や経済が円滑に回るようにと、そこには暗黙の了解がある。
不法入国や不法就労、オーバーステイで検挙される場面を、我々はニュースでたまに見聞きするが、それは氷山の一角。

彼ら彼女らは、日本人が敬遠する職種や職場で、最低賃金に抑えられながら、無言で日本人の穴を埋めている。
それを「国際貢献」という名でひとくくりにして、我々は現実から目を背けている。

同時に、技能実習制度の不備のせいで、法の盲点を突く斡旋業者が存在する事実も見逃している。
様々な名目で搾取を重ね、実習生は来日時点で、すでに数十万円から百万円近い額の借金を背負ってやって来る。

見えない、見ようとしない労働力の成果を享受しながら、島国根性のゼノフォビアたちの何と多いことか。
他人を憎むことに疲れないのか、他者への厳しさは存在そのものの清廉さから来るものなのかと、皮肉のひとつも言ってみたくなる。

安い賃金で働く人材を国内では探せず、日本が外国人に労働依存し始めて久しい。
アルバイトで家屋解体(片付け作業)に従事しても、日給五千円と聞いたことがある。
過酷な肉体労働なのに、最低賃金額以下である。

草鞋を作るのは外国の人たちになった。
経済格差とは、搾取する側になんと都合のいい状態なんだろう。

日本人、特に政治屋さん、三日やったらやめられないね。

含むところは多々あるのですが、今回は敢えて入管やウィシュマさんには触れません。
いずれ爆発的噴火を起こすかも知れません。

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