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『シャチ~優しい殺し屋~』

2013年のBBCドキュメンタリー、チュラルワールドより。


■印象と実際

シャチの学名はオルキヌス・オルカ。

「冥界の魔物」という意味である。

1847年、シャチの狩りをみた捕鯨船の船長が言った、

「死と恐怖を撒き散らしている」。

以来、Killer Whale の名で、恐れられてきた。

だが、実際には意外と穏やかな動物なのである。


■文化的差異

シャチは会話をする。しかも、方言がある。

文化的に少なくとも10のグループがあり、異なるグループでは早い段階から交配が行われていない。

そのため、タイプによって、サイズ、色、背びれの形、サドルパッチ、アイパッチに違いが見られる。

生息地域ごとに食文化がありグループで違うものを食べるので、

総個体数の半分が住む南極でも共存共栄している。


■社会的な生態

シャチの群れはメスが率いるが、協力して狩りを行う。

アイルランドのシャチはクリック音という威嚇の声により、数分で魚を囲い込み、捕食してしまう。

ほかにも、障碍をもち、特定のグループに属さず、狩りを行えない個体に餌を分け与えているだろう例もみられた。

人類に次ぎ最も広い範囲で生息する哺乳類であるシャチは、感情を処理する細胞を持っている。


■所懐

「優しい殺し屋」というと一見矛盾かと思える。

しかし、すべての生物は殺し屋である。

シャチの仲間への社会的な側面は、われわれも見倣うべき優しさと表現できる。

複数のグループがあり、主食の違いで棲み分けができているのは、人間顔負けのブルーオーシャン戦略である。


シャチの生態研究で、犬の鼻の良さを利用して、糞を採取する研究者がいた。

糞が大きいほど、臭いほど、多くのデータが取れると言って興奮していた。

そこから得られる情報が生態の解明に役立つのだそうだ。

(「インハンド」というドラマでも山P演じる主人公が糞便をライフログ化していた。コロナ禍の現在、興味を持つ人が多いそうなドラマである)

シャチの印象といい、糞の採取といい、固定観念に縛られるのは良くないと思い至った。


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