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【シン・卯月絢華のシネマ馬鹿】【シネマ馬鹿春の大感謝祭その弐】Vol.30 オッペンハイマー

原題 Oppenheimer
見に行った場所 109シネマズHAT神戸
フォーマット 2D字幕
個人的評価 ☆4.0(Filmarksでの個人的評価)
備考 R15+指定・第96回アカデミー賞最優秀作品賞受賞


イントロダクション

同名のノンフィクション小説を原作として「原爆の父」と言われる科学者、ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた大作映画。メガホンを取るのは鬼才クリストファー・ノーランである。(ワーナーと揉めてユニバーサルに移籍して初めて撮る映画だとか)
オッペンハイマーを演じるのはキリアン・マーフィー。その他にもロバート・ダウニーJr.やラミ・マレック、マット・デイモン等も出演。まさにオールスターと言わんばかりのキャストである。

原爆というタブーでセンシティブな内容を扱っているが故に日本での上映は「ほぼ」絶望的と言われていたが、ビターズ・エンドが企業努力で上映権を勝ち取り、そしてオスカー7冠(作品賞・監督賞・主演男優賞・助演男優賞・撮影賞・作曲賞・編集賞)というお土産を手に満を持して封切られるという運びになった。
ビターズ・エンドということで109シネマズはほぼ確約としてミニシアター系を覚悟していたらまさかの東宝系での上映もありなので相当気合が入っていると見える。しかもIMAX付き。でも3時間はケツが痛いので109シネマズHAT神戸で取材させていただきました。(エグゼクティブシート万歳)

あらすじ

世界恐慌下のアメリカ。1人の青年が物理学を学んでいた。その青年こそが後に「原爆の父」と言われることになるロバート・オッペンハイマーだった。
その頃の物理学はというと丁度「原子」という存在に注目が集まっており、ニールス・ボーアやアルバート・アインシュタインらがその存在を証明しようとしていた。
原子の近似の1つである「ボルン・オッペンハイマー近似」を打ち出したオッペンハイマーは、ボーアの下で原子についての研究を始めることになった。
ところが、第二次世界大戦の影はアメリカを黒く侵食しようとしていた。ナチス・ドイツと戦争をしていたアメリカは、一刻も早くナチスを降伏させようとする。そのために必要なのは「原子爆弾」だったのだ。
アメリカ政府はオッペンハイマーをアメリカ大陸の中心部にある「ロスアラモス」という場所に移住させる。そこは政府による原子爆弾の実験場でもあったのだ。
当然だが、オッペンハイマーには恋人もいた。ジーンとキティという2人の恋人の間で揺れ動くオッペンハイマーだったが、鬱病を患っていたジーンが浴槽で自らの命を絶ってしまう。
その頃から、オッペンハイマーの中で「何か」が壊れようとしていた……。

個人的な感想

あちら様の国の映画なので少し複雑な部分もあるが悪くはなかった。(ちなみに直接的な原爆投下の描写があったわけではない)
俗に言う「バーベンハイマー騒動」のせいで本作が「原爆を賛美している」という風に誤解されてしまったが、むしろ原爆を賛美するどころか反核映画としての色合いが強かったように感じる。

ノーランの面白いところといえば『メメント』に代表される「カラー映像とモノクロ映像の使い分け」だが、本作ではオッペンハイマー目線の話はカラー映像、原子力委員会のメンバーでオッペンハイマーを追い詰めていくストローズ目線の話はモノクロ映像という風に使い分けがなされている。冒頭でこの切り替えがあると頭が混乱しそうになるが、話が進んでいくうちに「こういうことだったのか!」となること請け合い。ユニバーサルに移籍しても「魔術師」ノーランの面目躍如は健在である。

ネタバレ注意

※ここから先はネタバレを含みます。
ヒトラーが自ら命を絶ったことによってドイツに投下するはずだった原子爆弾が無駄になった。しかし、アメリカ政府は「日本に落とすべきだ」と提言してきた。
こんな代物を作って大丈夫なのかと葛藤するオッペンハイマーだったが、1945年7月16日に世界初の原子爆弾実験――トリニティ実験が行われることになった。
ロスアラモスの荒野に落とされた1つの爆弾。それはまばゆい閃光と共に轟音を轟かせ、そして、大きな火柱が上がった。
実験が成功した後、オッペンハイマーはこう告げている。
「我は死なり。世界の破壊者なり」

その後、8月6日は広島、8月9日は長崎に2つの原爆が投下された。オッペンハイマーはこの時点で「水素爆弾の開発中止」を求めていたが、政府はこれを拒否。水爆の開発が行われることになった。
一躍「英雄」となり、アメリカの戦勝記念パーティーでスピーチをするオッペンハイマー。そこで彼はある「幻覚」を見てしまう。それはまばゆい閃光と共に溶けていく人々の姿だった。

更に、オッペンハイマーの精神は追い詰められていくことになる。水素爆弾の開発中止を求めたことにより「共産主義者=アカ」として疑われてしまったのだ。というのも、恋人の1人だったジーンは共産党員であり、時に肉体関係を持つこともあったのだ。
赤狩りが激しくなるなかで、オッペンハイマーの精神は次第に摩耗していくことになってしまう。
査問会の中で「スパイ容疑」をかけられてしまったオッペンハイマーだったが、そこで戦勝記念パーティーと同じ幻覚を目にすることになる。

査問の末に疑いが晴れたオッペンハイマーは、アインシュタインと再会することになる。しかし、アインシュタインから「あの時なぜ原子爆発の計算が上手くいったのか」を問われたオッペンハイマーは、ある答えを返す。
「――我々が破壊した」

***

ハイライトであるトリニティの実験シーンは悪い意味で自分の心臓の鼓動が早くなるのが目に見えて分かった。これは自分が日本人だからそう感じるのだろう。(飽くまでもオッペンハイマー目線で話が進んでいくので日本への原爆投下の描写はないのだが)
「3時間超えの映画は腰とケツに負担がかかる」という理由で109シネマズHAT神戸で取材したのだがノーラン特注の65ミリIMAXカメラだとどういう風に映っていたのかが気になる所。とはいえ件のトリニティの実験シーンぐらいしか見どころがなさそうだが。

自分が理系だということもあって映画単体としてみると良作なのだが、やっぱりオスカーという色眼鏡で見てしまうと正直言って「こんなモノがオスカー?」と思ってしまった。まあそれだけ今のハリウッドがオワコンであるという証拠でもあるのだろうけど。

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