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旅行ガイドにないアジアを歩く マレーシア  高嶋伸欣・関口竜一・鈴木晶(梨の木舎)を読む            35年以上に渡るマレーシア研究の大作

旅行ガイドにないアジアを歩く マレーシア  高嶋伸欣・関口竜一・鈴木晶(梨の木舎)

 ガイドブックではない。35年以上に渡るマレーシア研究、それもオーラル・ヒストリーの研究論文だ。多くの史跡や旧跡が紹介されているが、そのほとんどはこの本なしではたどり着けないだろう。本があっても見つけることができないかもしれない。読みながら、映画『サンダカン八番娼館 望郷』で栗原小巻が墓所を探してジャングルに入っていくシーンが思い浮かんだ。
 
 よくまあここまで深く、広く、丁寧に調べ、まとめたものだ。アジア太平洋戦争での日本軍による殺戮の記録も、遺族や目撃者にののしられたり、殴られそうになったり、石を投げられたり、数時間のつるしあげにあったりしながら情報収集をしたという。日本人としては耳をふさぎたくなる証言も多い。

 表題は日本軍がコタバルに上陸したときのことだ。防衛にあたったのは主にインド兵だった。イギリス軍の主力はヨーロッパ戦線におり、マレー半島・シンガポール防衛に回る余裕がなかったため、インドやニュージーランドから集められた兵隊だった。

 イギリス軍は第81旅団(旅団長ケイ准将、1940年に配置、コタ・バル付近には2000人の兵があてられた)が防戦した。3割が白人7割がインド兵で戦闘未経験の若者たちだった。作戦に参加した元日本兵によると、トーチカは外から鍵がかけられ、開けてみるとインド兵が互いに足を鎖につながれたまま息絶えていたという。

旅行ガイドにないアジアを歩く マレーシア 139頁

 インド兵を奴隷扱いしていたのだろう。逃げ出さないように鎖につないで戦わせたのだ。残酷なのは日本兵だけではなかった。

 アジア太平洋戦争は日本軍コタバル上陸から始めった。それはマラヤ連邦にとって地獄の3年8か月と呼ばれる暗黒時代の始まりでもあった。

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