雑貨屋のほっこり話 「お母ちゃんといつから言わなくなったのか?」
私は雑貨屋を営んでいます。主に猫モチーフの雑貨を取り扱っているのですが、お昼頃に元気な声の男の子がお母さんと一緒に来店。
業務仕事があるので店内の奥で聞き耳をたてていた。
「お母ちゃん!おれ、これ欲しいと思う」
「またなんでも欲しいとかいってお金ないよ」
「おれ、お金もってるねん」
「あとで何か買ってって言っても買わへんから」
「おれ、ここで買わないと後悔すると思うねん」
という事で店主の私がフェードイン。
何が欲しいのかなと思ったのかなと様子を見ると…
「猫デザインの扇子」
これには驚いたw。ちょっと吹きそうになったけど…
「お母ちゃん、おれ、これどうしても欲しいねん」
普通に聞けばわがままで我慢出来ないタイプのお子さんに見えるが…
「おれ、これカッコイイと思う!」
なんと意志の強い発言。
普段から幼い子供がいる訳ではないが、この意志の強さに感服。
「あ~ちょっとお金足りへん。どうしようかな~。」
お母さんもその意志に負けて差額を出そうと用意。
レジで待機していた私は…
「こんなに欲しいのであれば少し…」
お母ちゃんと呼ぶ小学1年生くらいの彼は…
「これ!お願いします!」
「本当にこれでいいの?」と私は彼に問いかけた。
「これがいいんです。」
なんだ、この鉄の意志は…オジサンの心が打たれてしまったではないか…。
「〇円です。」
「え?〇円て書いてるよ」
「君のその決意にオジサンが端数を持つよ」
「お母ちゃんどうしたらいい?」
「こんな大変な時に…払いますので…」
「いや、いいもの見せてもらったので視聴代という事で大丈夫です」
私は端数のお金を彼に渡した。
「これで何か買いな!でもお金って大事だからね。欲しいというだけではなく、ちゃんとお金という価値をこれから知ってね。」
「お母ちゃん!これ、おれ、めっちゃ使う。だって欲しかったし」
久しぶりにほっこりした親子の会話とやり取りだった。
ただ…6歳くらいの子が「扇子」とはw。
「扇子は逆にカッコイイかもよ!」
「ほんまや~おれめっちゃ使う!」
「扇子で鍛えてみ!」
「どういうこと?」
「手首が鍛えられるやん!」
「お母ちゃん!ほんまや~!凄いな~」
なんだこのリアクション笑。
なんか朝から嫌な事があったけど、この目の前にいる親子のやり取りに癒されてる。
そして…独特のセンス!
それと「お母ちゃん」の響き。
いつから関西も「ママ」になってしまったのだろう。
私も小さい時は「お母ちゃん」っていつも母と行動共にしていた。
なんか亡くなった母との思い出がフラッシュバック。
「お母ちゃん」って言葉…なんだかいい。
私たちは自分達の都合で短縮した言葉を使うようになった。
「ママ」もそうで本来の言葉の大切や響きを忘れてしまった。
なんか寂しいけど、彼らの会話に私は心の豊かさを知った。
今日はなんだか気分がいい。
いつの間にか住みにくい世の中になったが、こんな出会いがあるならやっぱりお店をやっていて良かったと思う1日でした。