モロッコ旅行記⑩ 6日目「サハラ砂漠のらくだ旅」
サハラ砂漠のらくだ紀行
今日は駱駝に乗って、サハラ砂漠をのんびり散歩する。
駱駝ドライバーのハマド
私の相棒になってくれた駱駝は、ハマちゃん。友人は、ベスちゃん。
長い睫毛が色っぽいけど、二頭ともオス。
駱駝を先導してくれるのは、ハマドさん。
自称「駱駝ドライバー」。
砂に身を伏せた駱駝の背にまたがる。
このあたりの駱駝は、すべてひとこぶラクダで、山になった背にまたがるのに一苦労。
ハマドさんの掛け声とともに、駱駝が後ろ足から立ち上がり、次いで前足を立たせる。鞍についた手すりにしっかり掴まっていないと、振り回されて、落ちそうになる。
駱駝の背中は、予想よりもずっと高く、視界が一気に広がる。
静かな砂漠の海を、二頭の駱駝はゆっくりと泳いでいく。
遊牧民の天幕
2時間半ほど砂漠を歩きつづけると、ノマド(遊牧民)の天幕が見えてきた。
ここで、ノマドのお母さんが作ってくれるお昼ごはんをご馳走になるという。
ぬいぐるみが砂の上に置かれている。一列になって物陰に潜み、なにやらスパイごっこでもしているみたい。
ノマド流のパンの焼き方
お母さんが、砂のかまどを使ってパンを焼いている。
許しをいただいて、写真を撮らせてもらう。こんがりと焼けたパンがおいしそう。
香ばしい匂いがしてくる。
食事をとる天幕に行くと、ガイドのモハさんがすでに就寝中。
駱駝ドライバーのハマドさん。精悍な顔つきです。
昼食ができるまでの間、ミントティで喉の渇きを癒す。
砂漠にも猫がいるんだなあ。どんな生活をしているのだろう。
日差しの遮られる天幕の中は、とても涼しい。
静けさも心地よく、眠くなってくる。
天幕の外を見ると、2人の子どもがサッカーボールで遊んでいる様子が見える。
遊牧民の少年 モハ&ハッサン
ひとりは、ノマドの少年、モハンマド君だ。
ガイドと同じ名前なので、私たちは「ミニモハ」と呼ぶことに。
好奇心旺盛な子で、砂塵防止のカメラケース(ディカパック)に入ったデジカメに興味津々。ジェスチャーで使い方を教えると、あれこれボタンを押して、これまで撮影した写真を見たり、動画を見たり、自分で撮影をしたり……。使い方が分からないと、「ん? ん?」と生真面目な顔で訊ねてくる。未来のカメラマン!
モハ君の弟ハッサンは、やんちゃざかり。
ともかく食いしん坊で、水をがぶ飲みしたり、みかんを食べまくったり、常になにかを食べている。
駱駝のベスも食いしん坊で、しょっちゅう足を止めてはラクダ草を食べていたので、この後、私たちはベスのことを「駱駝のハッサン」を呼ぶことにした。
絶品の昼食と砂漠さんぽ
お母さんの作ってくれた昼食。とっても美味しい。
砂漠に流れるのんびりとした時間。
昼食後、ご近所を散策。どこまで行っても砂漠が続く。
砂の上にごろりと横たわり、砂遊び。
白熱!裸足のサッカー対決
天幕に戻って、モハ君やハッサンと遊ぶ。
2人ともみかんが大好き。私と友人が持ってきたみかんをばくばく。
モハ君、みかんと一緒に、セルフ撮影。とてもうまく撮れています。
壊れかけていたカメラも、砂漠についてからは調子がよく、モハ君渾身の写真たちがきちんと撮れていて、本当によかった。
その後、ヨーロッパ圏の女性が2人、天幕にやってくる。
その2人と、私、友人、ハマド、モハ君、ハッサン、2人のガイドで、サッカーボールのパス回し。
裸足になって、夢中になってボールを蹴っているうちに、気づけば親指の爪が剥がれ、足裏に枝が刺さっていた。気づかなかった……!
顔も日焼けでかさぶただらけになり、慣れない砂上サッカーで体は激重に。でも、言語の壁を超えたサッカー大会はものすごく楽しかった。
砂漠の野営地
モハさんが起きない上に、誰も起こさなかったので、予定よりも2時間も長く滞在。
気づけば日が傾きはじめ、砂の色が、赤から黄金へと変化を始めていた。
今夜は砂漠の野営地に宿泊予定。
モハ君やハッサンに別れを告げて、ふたたび駱駝で野営地を目指す。
1時間ほど砂漠を進むと、まばらに椰子の生えたあたりに、いくつもの天幕が見えてきた。
ちなみに私と友人は、モロッコ滞在中はほぼずっと、マラケシュの初日に買ったジュラバを着用。ジュラバを着ている観光客はなかなか見なかったが、現地の人たちにはとても評判がよかったので、郷に入れば、ということでぜひ着用をお勧めしたい。
特に砂漠では、ジュラバは涼しくて気持ちがいい。ターバンも巻いてしまえば完璧だ。
天幕のひとつが食堂になっている。出てくる料理は本格的なモロッコ料理。
薄暗いランプの明かりの中で、のんびりと料理を食べる。
天幕の中は猫だらけ。可愛いというより、恐ろしい。
食後、殺気立った猫たちが空になった皿にどやっと群がり、互いにけん制し合いながら、骨をバリバリ、皿をぺちゃぺちゃ。薄暗い中、貪欲に飯を食らう猫たちのさまは、正直、本気で怖かった。
焚火を囲っての語らい
たき火の周りに、ベルベル人のガイドたちと、ガイドが連れてきた観光客が集まる。
私たちのほかには、ポルトガル人の男女と、イタリア人の女性2人がいた。なぜかクイズ大会や、チョコレートの話で盛りあがる。
ベルベル人の陽気なひとりの男性は、日本のチョコレートが大好きらしく、「ワオ、ジャパニーズショコラ、ベリベリナイス! ジャパニーズショコラ、ベリベリナイス!」と連発。
チョコを持っていたのでプレゼントをすると、「アイアム ショコラマン!」と大喜び。
日本のチョコは確かに海外でも評判が高いが、ポルトガルやイタリアのチョコよりも美味しいなんてことがあるのだろうか?
ポルトガル人が自慢のポートワインを持ってきていて、ふるまってくれたので、私たちも日本の缶詰やお菓子を提供。
英語がさっぱり分からず、なんの話で盛りあがっているのかも分からなかったのだが、旅の空の下だからか、やたらと面白く感じられた。
ひとしきり盛りあがった後、私と友人はたき火を離れて、真っ暗な砂丘へと。
厚着をして、ブランケットにくるまり、砂の上に寝転がると、信じられないほどの数の星が頭上いっぱいに広がった。
ぼーっと夜の砂漠を楽しんでいると、ハマドがやってくる。
「星を見ているの? 一緒に見てもいい?」
ハマドの囁くような声が、夜にしんと降り積もる。
ううーん、夜の砂漠に聴くにふさわしい、色気のある声だワ。
と、2人で悦に入っていたら、しばらくしてその甘い声でもって囁きかけてきた一言は……。
「君たちの缶詰、食べていい?」
ハマドが去っていったあと、友人とふたりで笑いころげてしまった。
ハマドさんの声、無駄に色っぽいんだわー。
その後、ふたたびたき火に戻り、夜中の1時まで歓談。
天幕には毛布が幾枚も置かれていたが、凍えるような寒さになかなか寝付けない。
ちなみにトイレはもちろんない。天幕から離れた真っ暗な砂漠の中でするしかない。行けないとなると、余計に行きたくなるが、寒すぎて毛布から出る気にもなれない……砂漠の夜はなかなか厳しく過ぎていったのだった。
次回予告
モロッコ旅行記⑫ 7日目「アトラス山脈で雪合戦!?」
サハラ砂漠の極寒の夜。
日の出前の6時頃、ハマドに起こされ、駱駝に乗って、まだ暗い砂漠へと漕ぎ出す。