中国四川省の鉄道「芭石鉄路」⑤
芭石鉄路の朝と昼
翌日、5:30に集合して、タクシーで「石渓駅」へ。
目的は、蒸気機関車の朝方の撮影をするためだ。
早朝の蒸気機関車
2月下旬の日の出は、だいたい7:10頃。
6:30に駅に到着すると、早朝出発の列車に乗って「菜子壩駅」へ。
驚いたのは、車内が真っ暗だということ。
電灯などなく、車窓も闇に包まれているため、手元も見えないほどに暗い。
写真は、トンネル内の電灯で、一瞬だけ車内が光に包まれた瞬間。
途中、車掌さんが切符を切りに来る。電灯を片手に切符をチェック。
「菜子壩駅」に到着する。
まだ真っ暗な中、線路に下りると、廃棄された石炭が闇のなかで真っ赤に燃えていた。
突撃!隣の朝ごはん
ここで、我らの頼もしいガイド・陳さんが、たくみな交渉術を発揮する。
近くに朝食をとれるような食堂がないため、なんと、しんと静まりかえったひと様の家の玄関をノックしたのだ。
「朝ごはん、食べさせてもらえる?」
「突撃!隣の朝ごはん」だー!
なんともおおらかなことに、あっさり「いいよ」ということになったので、これまたびっくり。
まだ朝食の準備ができていないそうなので、しばらくぶらぶらして、朝ごはんができるのを待つことに。
朝ごはんができあがると、小さな卓を囲い、ご家族と一緒に朝食。
優しいご夫婦とおじいちゃん、おばあちゃん、中学一年生だという息子さんの五人家族。
わらびのわさび漬けや、キャベツの炒め物などをいただいた。
ここで、見知らぬ人とすぐに打ちとけられる哥哥が、こう提案する。
「あ、日本のレトルトカレーあるけど食べる?」
息子さんが積極的にチャレンジをした。
「おいしい」
そう言いつつも、表情を見るに、絶賛!とはいかなかったようだ。無念。
そういえば留学中も、中国の学生にカレーを食べさせたけど、微妙な顔をしていたっけなあ。
ちなみに、私の人生最大のチャレンジは、北京で食べた「大王蛇のからあげ」と、雲南省でアパートの大家に食べさせられた「竹虫の素揚げ」だ。
蛇はおいしかった。竹虫も、味はポテトチップだ。ただ……大家の友人が「スープにひたして食べてもおいしいよ」と言って、どんどん竹虫をスープに入れてくれたのだが、水をふくんだことで、元の姿を取りもどした竹虫の破壊力は……いや、これ以上はやめておこう……。
芭石鉄路の美しき春
日がのぼり、歩いて撮影ポイントを探すことに。
素朴な田園風景。観光用に植えたものだろう、棚田に広がる菜の花畑が美しい。
前日に続き、この日も曇り。
かすみまでかかり、あまり視界はよくない。
だが、黒々とした蒸気機関車には白んだ空気もよく似合う。
お医者さん宅の二階で撮影
トウさんというお医者さんの勤める衛生室の二階で、撮影をすることに。
撮影スポットとしてたびたび利用されているらしく、10元を支払った。
列車がここらを通る時刻までは、まだまだ時間がある。
油断して、ぼんやりとしていると、いきなり蒸気の音が。
あわててカメラを構えると、なんと二台の機関車がけん引する「重連」がやってきた!
「重連だー!」
哥哥、大慌てでビデオを回す。
私も突然のことに動揺しながら、撮れるかぎりでシャッターを切った。
構図も決めていなかったので、素人鉄ちゃんにはこれが限度でした。
時刻表にはない列車だ。よく見ると車内がデコレートされているので、いわゆる「婚礼列車」というものだったらしい。
新婚夫婦がドレスアップして菜の花畑で撮影をするため、列車を借りきり、結婚式の参列者とともに、あちこちで大撮影会をするのだ。
写真好きの中国人らしい、ほほえましい光景だ。
馬と線路と人と
町中には、レンガを運ぶ馬の姿。お仕事おつかれさま!
先ほど重連が通っていった線路を、馬も人も歩く。
日本人の鉄ちゃんがよく訪れるそうで、トウさん曰く「日本の朋友も多いんだよ」。
確かに、朝の列車の中で、ひとり日本人の男性と知りあった。
衛生室ではカメラを持った欧米の方とも出会ったし、中国の農村部では珍しく、とってもグローバルだ。
次回予告
中国四川省の鉄道「芭石鉄路」⑥(最終回)
昼食のあとも、引きつづき蒸気機関車の撮影をする。