見出し画像

カジュアルワインゼミ・ベーシックコース(入門講座)セクション3「スパークリングワイン 泡に秘められた秘密」

 先日はカジュアルワインゼミのベーシックコース(入門講座)のセクション3を開催、テーマは「スパークリングワイン 泡に秘められた秘密」で、スパークリングワインの造り方や主要生産地のスパークリングワインの解説の後に4種のスパークリングワインをテイスティング。

 日本ではシャンパーニュのステータスが非常に高く、ワインブームが下火になっても成長が続くワイン業界の優良銘柄ですが、そうは言っても近年の大幅な値上がりにはちょっとうんざりな感じですね。

 ちなみにもっとうんざりなのが、近年目につくブランディングだけのプレステージ・シャンパーニュ、何とは言いませんが、クリュッグやクリスタル、ドン・ペリみたいに、手間暇かけて造られる本物のプレステージ・シャンパーニュと違い、派手なボトルと過剰なケース、変なステータスを掲げて意味不明のキャッチコピーで売る、イースト香のかけらも感じないような価格だけのプレステージ・シャンパーニュが本当に邪魔くさい…

 話は変わりますが、僕がソムリエ試験を受けた20年以上前は、イタリアのスプマンテを説明するときに一番先に名前があがるのはフランチャコルタだったのですが今はほぼほぼプロセッコ、理由は簡単でバブル以降の急速なイタリアンのカジュアル化が原因、それの最たるものがサイゼリヤです。
要は客単価10,000円の店なら小売4,000円のフランチャコルタは動いても、客単価3,000円の店では動かず、必然的に小売1,500円のプロセッコの出番というわけです。とはいえ、キンキンに冷えたプロセッコと揚げたてのゼッポリーニは餃子とビールぐらいの鉄板の組み合わせですけどね。

ということで今回のテイスティングのラインナップは以下の通り。
※すべてラベルを隠してのブラインド

Sample-1
 Casa Gheller Cuvee Brut N.V
 カーサ・ゲラー キュヴェ・ブリュット
 生産地:イタリア/ヴェネト州
 品 種:グレラ、ガルガネーガ、ピノ・ビアンコ
Sample-2
 Gran Sarao Cava Reserva N.V.
 グラン・サラオ カヴァ・レセルヴァ
 生産地:スペイン/ペネデス地区
 品 種:マカベオ、チャレッロ、パレリャーダ
Sample-3
 Takahata Winery Yoshi Sparkling Chardonny N.V.
 高畠ワイナリー 嘉・スパークリング・シャルドネ
 生産地:日 本/山形県
 品 種:シャルドネ
Sample-4
 Joannès-Lioté et Fils Brut Réserve N.V.
 ジョアネス・リオテ・エ・フィス ブリュット・レゼルヴ
 生産地:フランス/シャンパーニュ地方
 品 種:ピノ・ムニエ、ピノ・ノワール、シャルドネ

 セット1はカーサ・ゲラーキュヴェ・ブリュットグラン・サラオカヴァ・レセルヴァによるタンク内二次発酵(メトード・シャルマ)瓶内二次発酵(メトード・トラディショナル)の製法違いの比較。
カーサ・ゲラーはプロセッコの本拠地ヴァルドッビアーデネの有力生産者、このキュヴェ・ブリュットはグレラ以外も使っているためプロセッコ呼称は使えないワイン、とはいえスタイル的に溌剌とした爽快さが売りのスプマンテで小売1,500円程度。
グラン・サラオはディスカウントスーパー系でたまに見かけるカヴァで、フレシネやコドーニュの大手生産者が、生産量の9割を占めるカヴァにおいては小規模生産者という位置づけ。レセルヴァ扱いなので瓶熟が18ヶ月と通常の既定の倍、そのせいか軽くイースト香が感じられる。ただ、ちょっと酸がボケ気味でひねた印象を持ってしまう、小売はこちらも1,500円程度。
発酵方法の違いというより瓶熟の長さの違いの方が感じられたセット。

 セット2は高畠ワイン嘉スパークリング、ラベルを見るたび数年前に亡くなった、嘉の生みの親ともいえるエノロゴの川邉さんを思い出す。その辺の話しはこちらにも。

嘉スパークリングをテイスティングした後に、参加者の皆さんにこのワインはシャルマかトラディショナルかを伺ったところ、6:4でトラディショナルと答えた方が優勢、でもどちらも不正解。実はこの嘉スパークリングは炭酸ガス注入方式(カーボネーション)によるスパークリングワイン。
わざわざこのタイミングで嘉をテイスティングしたのはカーボネーションの可能性を知っていただくため。
チリの大手生産者が軒並みカーボネーションでスパークリングワインを手掛けるのは、決して価格を抑えるためだけではなく、カーボネーションでも十分に美味しいスパークリングワインが出来るという、造り手の自信の表れだと僕は思います。
嘉スパークリングを初めて飲んだ時に、泡の細かさから普通にトラディショナルかなと思い、その後カーボネーションで造っていることを聞いて驚いたのはもう随分昔の事。嘉スパークリングを飲んでいると、あと10年~20年も経てば、シャンパーニュに比肩するカーボネーションのスパークリングワインが必ず現れる!そんな気がします。
ちなみに嘉スパークリングの小売りは1,800円程度。

 セット3はトラディショナル方式での長期熟成の検証としてシャンパーニュをテイスティング、ワインはジョアネス・リオテ・エ・フィスブリュット・レゼルヴで小売りは6,500円程度。
セパージュは黒ブドウ主体で外観も気持ち濃いめの黄色。香りにもしっかりとしたイースト香、3年以上の瓶熟を示す雰囲気をまとったレコルタン・マニピュランのシャンパーニュ。
キレのある酸と豊かな旨味、何よりも長く続く余韻が、前の3種のスパークリングワインとは別次元、シャンパーニュのシャンパーニュたる所以はこういうところに現れる気がする。
ちなみにシャンパーニュが何故別格のスパークリングワインであるか、ご興味ある方は12/28(土)開催のカジュアルワインゼミ・エンジョイスパークリング第6回に是非ご参加ください。
カジュアルワインゼミ【専門講座】エンジョイ・スパークリング
https://www.street-academy.com/myclass/14821

今回のテイスティングでの一番の気づきは、ワインそのものではなく実はコルク
画像を見て頂くとわかると思いますが、すべて圧縮コルク(圧着コルク)、要は天然コルクを粒状にして固めたコルクで、目的はブショネ対策とコルクの無駄(天然コルクはくり抜いた後に余分が出る)を防ぐため。
スパークリングワインは硬さの違うコルクを3種類使った三層構造のコルクが多く使われてきたので、4種類すべてが圧縮コルクなのはちょっと衝撃的。
いまや圧着コルクでも上部と下部の硬さの違う、以前の三層構造の天然コルクと同じ特性を持ったものが技術革新で生まれていて、さらにとって変わられているという現実、SDGsの波はこんなところにも波及しているのを実感しました。

シャンパーニュと言えば、来月には恒例のシャンパーニュの祭典「ノエル・ア・ラ・モード」が開催となります。私がアンバサダーを務めるアルローも常設BARを展開する予定で数日は私もカウンターに立ちます。お時間があればぜひお立ち寄りください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?