金言286:団塊の世代の勘違い
団塊の世代に関する番組をチラッと見て勉強になったことが二つありました。
1)団塊の世代≒四年制大卒者
当時は集団就職がまだ残っている時代で、大学に進学したのは同世代の15%だったといいます。日本経済の高度成長をリードしてきたのは15%の大卒だから「80-20の法則」があてはまるということもできますが、日本の社会を支えてきたのは残りの85%(大部分は中・高卒)であることも否定できません。公共放送としては、団塊の世代のマジョリティは、実は、四年制大学卒のサラリーマンや公務員ではないということを明らかにし、何かしらの問題提起をねらったのでしょう。
番組のねらいはさておき、大卒が15%という事実が15%のマイノリティに意外な感じを与えたはずです。いまや私企業では、年功序列の廃止、学歴偏重の是正、成果主義の徹底、若手登用、男女機会均等などの施策により、入社時の学歴による差別化が希薄になっています。特に45歳以上の勤労者にとって、入社前の履歴は、リストラの対象から外れるとか勤務実績評価のプレミアムになるとか、そういうアドバンテージには無縁の履歴であることを待遇面できっちりと知らされています。大学を卒業した頃とはすっかり変わった雇用環境で年金生活をおくっている団塊の世代にとって、いまさら大卒は15%であったといわれても、それがどうしたというわけです。学歴による差別化が話題になるのは、過去の話です。高度成長を支えてきたのは、それぞれの持ち場でそれなりにがんばって、世のため人のために貢献してきた人たちです。その人たちを年齢でグループ分けすれば、団塊の世代がその1つということです。
2)全学共闘会議はロックのようなファッションだ
団塊の世代の芸能人として、東大生でもあった歌手加藤某は、当時をふりかえって、全共闘運動をロックの集会と同じようにカッコいいファッションであり、楽しかったとコメントしていました。運動の初期は政治的な目的を持っていたのですが、次第にファッションとして若者の間に浸透していったといいます。ロックコンサートと同じようなノリで、全共闘運動が全国のキャンパスで展開されたと説明し、重ねて、あの頃は楽しかったと懐かしんでいるようでした。どうやらこの人は、国際反戦デーの新宿騒乱罪も、成田三里塚も、パリのカルチェラタンも、フランシーヌの場合も、ベトコンと戦ったグエン・カオキも、そして、連合赤軍の総括も、すべてひっくるめて、古き良き時代の楽しい思い出として総括したいようです。
3)お上のねらい
「大卒は15%」の報道には、仕掛けがありそうです。全共闘イコール大卒は、イコール団塊の世代(日本経済の担い手)ではないという主張です。日本経済を支えてきたのは、団塊の世代ですが、主役は85%の人たちということです。中央大学20億円使途不明金に端を発した学生による大学民主化をめぐる運動(全共闘)を、メディアは「大学紛争」と報道し、現場にいた東大生女性歌手は、「全共闘はファッションでロックコンサートのように楽しかった」と語りました。結局、60年70年と日米安保条約の節目に起きたイベントは、15%の大卒が演じたのもので、団塊の世代のマジョリティは、まじめに働いている善良な国民であるというお上のお達しと理解しました。
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