12. 家を作りはじめる
家の建設を請け負っているのは二人のヘススが主導している小さな建設会社。
少しおさらいしよう。
ヘスス1は建築士の資格を持ち、会社の代表。同じ住宅地の斜向かいに住むヘスス2は、元々はパイロット志望で資格も持っているが、今はこの小さな会社で経理やデータなど、ソフト方面を取りまとめている。
そして、この現場にヘスス達が連れてきているアルバニール達は、ヘスス2の父親フリアン(パパフリ)と、長男のフリアン、その下のエンリケ、弟のアブなんとか。みんな、この辺りではなくてもっと北の方の州からやってきている。ヘスス2がこちらに移り住んでから10年ほど。学校を終えて仕事し始めてから、こっちに仕事あるよ、と連れてきたのだ。
彼らのような職業(建設業、建築作業員)はガッツリ男社会。血の気の多い、荒っぽい男どもの社会。ちょっと気に食わないことがあると現場でも喧嘩や嫌がらせが起こったり、他人同士の現場だと作業中の隙を見て盗みをしたりと、まあ荒くれ者の集まり、でもある。なので、親兄弟なら喧嘩はするだろうが、結束は強いし、心強くもある。
それでも人手が足りないと、経験の有無を問わず、若いのをどこからか連れてきたりする。
初期メンバーに加え、2〜3人が来ては消え、来ては消え、結局最初から最後まで関わっていたのはパパフリとフリアン、エンリケの三人だった。
ヘスス2と、兄のフリアン、パパフリ
そこに、うちのクマ夫も数週間、作業員達には見習いという名目で、でもヘスス達には「現場にてしっかり仕事ぶり見させてもらうから」という形で、合流した。
クマ夫はどちらかというと、それまでの経歴職歴は頭脳派映像系アーティスト。よくわからんが、土木作業とは一切関わったことがない。若い頃、配管工や車の修理工場で少しバイトをしていたらしいが、ブロック積んでセメント練ってあれこれ、は0からのスタート。今後、この箱が出来上がった後は、二人でチマチマコツコツやるんだから、それを念頭に置いていろいろ見て勉強してきてください。修行ですね、修行。
メキシコでは毎年2月2日に「タマレス」というトウモロコシの粉で作ったちまきのようなものを食べる習慣がある。私も何年も前に作り方を教わって以来作っていなかったが、今年は現場への差し入れとして大量に作ることにした。タマレスは大量に作らないと美味しくないのだ。
現場に来ているのはWヘススと5人の作業員。私たち2人。お世話になってるホアキンさんとこ2人とエクトルさんとこ2人。11人分(だけど、2−3人分は多めに用意する)。1人4つとして、50個作れば間に合うか。
中に仕込む具材も、しょっぱいの2種類、甘いの1種類。うちにある中で一番大きな鍋に押し込んで蒸しあげる。35Lぐらいのお鍋が小さく感じる。もっと大きいの買わな。
タマレスはこうして、トウモロコシの皮を剥がして、クリームとチリソースをかけて食べる。熱々で食べるのがベスト。
そんな事をしている中、建物の整地が進められ、あの田舎にトラックが何往復もして整地用の砂(テペタテ)を運び込んでいる。Google Mapの衛星写真にはその辺りの様子が映し出されている。もう、空き地じゃない。私たちの土地が、私たちの家用に整っていく。