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かんたんに宇宙が見える最新望遠鏡〜スマート望遠鏡
■電視観望のすすめ
昔の星空観望では天体望遠鏡のファインダーで見たい天体を探して、架台を操作して天体を見失わないようにしながら、アイピース(接眼レンズ)で天体を覗いて観望していました。
これ凄い経験と苦労のいる作業でした。
その後、コンピューター制御の赤道儀(地球の自転軸に合わせて天体の動きを追尾する装置)に大きな望遠鏡を積んで、コントローラーやパソコンを介して見たい天体を自動導入・追尾できるようになりましたが、依然として、鏡筒のアイピースからモノクロの霞の様な淡い天体を覗き込んでいました。望遠鏡を見慣れている人にはその天体が見つけられますが、慣れていない人には一体それがどれなのかも分らない人も多い状況でした。
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(筆者撮影)
天体カメラの普及に伴い、パソコンの画面でその天体をその場で何枚も重ねて写し出し(ライブスタッキング)、色鮮やかでハッキリわかる観望の仕方(電視観望)が普及し出しました。無料で使える専用ソフト(SharpCap)も進化して使いやすくなり、電視観望用に天体カメラや高性能な小型鏡筒も安価なものが発売されてきました。
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(筆者撮影)
電視観望の普及を決定付けたのはソフトウェア(SharpCap)の星図データを参照して望遠鏡が今どこを向いているかをコンピューターが判断して天体を画面のド真ん中で導入する機能(プレートソルビング)でした。しかしパソコンが必要で手軽さは、いまひとつでした。そのプレートソルビング機能を引っさげてスマホだけで電視観望を可能にしたのがZWO社のASIAIR(小さな箱サイズの天文機材制御用コンピューター)の発売でした。その後、星図から天体を選んで導入出来る機能(スカイアトラス)も追加され、さらに使いやすくなりました。
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それから、以前は空の暗い山奥に行かないと見えなかった淡い天体が高性能なフィルターによって光害の激しい市街地でも深宇宙が見えるようになりました。
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(筆者撮影)
ASIAIRやパソコンとSharpCapによる電視観望は、天体マニアには大流行しましたが揃える機材や知識が必要でした。
そこを誰でも使えてワンパッケージにしたのがスマート望遠鏡と言われるものです。最初にUnistella社のeVscopeが2020年に発売されました。
天文知識が無くてもスマホの操作が出来れば、誰でも簡単に天体をプレートソルビングで自動導入して、更にスタッキング(複数枚の画像を重ね合わせて淡い天体をあぶり出し、ノイズを軽減させる画像技術)して色鮮やかな天体の画像を見ることが出来てしまいます。
最初は高価だったスマート望遠鏡も現在では10万円を切る低価格の新機種も続々と発売されている状況です。
これからは一般の人々でも簡単に図鑑のようなカラフルな天体を手軽に誰でも観望出来る時代が来ました。
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(筆者撮影)
■電視観望はスマート望遠鏡で始めよう!
電視観望を始めるのに一番手っ取り早いのは方法は、スマート望遠鏡を1台買うことです。そうすれば天文知識が無くてもすぐに始められます。
あなたのスマートフォンとスマート望遠鏡をWi-Fiで接続したら、スマホのアプリを立ち上げて、カタログから見たい天体を選ぶだけで、あとは勝手にスマート望遠鏡がその天体を探して、自動追尾しながら画像を重ね合わせて、数分後にはスマホの画面にカラフルな天体が浮かび上がります。
家族や友達などの複数のスマホで同時に見ることも、その画像を保存することもできます。
どうです?簡単でしょ!
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(筆者撮影)
スマート望遠鏡とは1台の望遠鏡の中に天体カメラや電動経緯台、小型コンピューター、バッテリーが内蔵されている機種で、コンピューターの中に星図データが格納されていて正確に天体を画面の中央に導入出来ます。最近の機種はさらに光害除去フィルターやレンズヒーター(レンズの結露防止)、オートフォーカス機能を持つものがほとんどです。従ってユーザーはスマート望遠鏡を設置して電源ボタンを押せば、望遠鏡自体に触ることはありません。
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(筆者撮影)
数年前から発売され始めたスマート望遠鏡は当初40〜60万円して中々気軽に買えるものがなかったのですが、昨年(2023年)にZWO社のSeestarS50が10万円を大きく切る値段で発売されて大ヒットしました。その後、10万円を切る機種がいくつか発売されるようになりました。
先ずはスマート望遠鏡を1台買って電視観望を楽しみましょう!
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(筆者撮影)
◆10万円以下で買えるスマート望遠鏡
DwarfLab DWARF3
(D35mmFL150mmF4.28)
IMX678 1/1.8型829万画素 合成焦点距離737mm
1.35Kg 89,999円(次ロットは2024年末から年明け販売予定。予約受付中。)(クラウドファンディング受け付け終了。一般販売未定。)
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現在、一番のおすすめはDWARF3です。広角と望遠の2つのレンズを随時切り替えて使えるのが便利。広角レンズをファインダー代わりにも使えます。センサーの解像度も4K画質あるので切り抜きも可能です。(カメラのセンサーは10万円以下のスマート望遠鏡の中では一番大きくて解像度が高いです。)
(2倍ズーム相当の200万画素に切り抜けば、合成焦点距離1474mm相当となりSeeStarS50に近い大きさで天体を見られます。)
赤道儀モードがあり視野回転を抑えられ、1分までの長秒露光も出来て、天体の本格撮影も可能です。
何より軽くて小さいのでちょっと出して見ようという気にさせます。
昼間の撮影も勿論可能です。超望遠で景色も撮れます。
そればかりか、走り回る子供や飛んでる鳥や飛行機だってスマート望遠鏡がそれに合わせて自動で向きを変え対象を追い続けて4K動画撮影出来ます。運動会とかにも大活躍してくれそうです。
ZWO SeestarS30
(D30mmFL150mmF5)
IMX662 1/2.8型207万画素 合成焦点距離1000mm
1.7Kg 62,370円(2025年春発売予定。予約受付中)
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次点はSeestarS50 の姉妹機のSeestarS30です。S50より安価になって、より気軽に電視観望が始められるようになりました。又、日本の望遠鏡メーカーのビクセンの取り扱いになり、大手家電量販店でも買えるようになったので、手に入れやすくなりました。
広角カメラも付いていてDWARF3の様に操作できます。望遠側も焦点距離が短くなりより広い範囲が写せるようになりました。
低予算で始めるには打って付けの一台です。
SeestarS50より2万円安くなって口径は50mmから30mmと小さくなったが、その分焦点距離が250mmから150mmとより広角になった。センサーサイズは1/2.8型、画素数は200万画素とSeestarS50と同じだが、カメラセンサーの世代が新しくなりました。広角レンズの追加で使いやすくなり、その他の機能差はあまり変わらずに本体が軽くなったSeestarS30がやや有利かな?
ZWO Seestar S50
(D50mmFL250mmF5)
IMX462 1/2.8型210万画素 合成焦点距離1680mm
2.5Kg 84,150円
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SeestarS50はスマート望遠鏡で10万円を切った価格で大ヒットした機種です。手軽に始められて、ネットの情報が多いことも利点です。
画角はやや狭いが大きく天体を見られるのは利点です。又、バージョンアップでモザイク撮影が出来るようになって(時間がかかるが)、広い範囲を撮れるようになったので弱点が少なくなりました。
DWARF3やSeestarS30より小さい天体の観望や撮影では焦点距離の長いSeestarS50が向いています。
(Seestarはどちらもセンサーサイズ倍率から計算すると0.88倍のレデューサー光学系が組み込まれていると考えられます。)
DwarfLab DWARFⅡ
(D24mmFL100mmF4.2)
IMX415 1/2.8型846万画素 合成焦点距離675mm
1.2Kg 59,990円
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DWARF3が発売されて前世代機種になりましたが、スマート望遠鏡としてまだまだ活躍出来る機種です。
アマゾンで6万円でお手軽に買えます。
実はDWARF3やSeestarS30、SeestarS50より一番広角に写るのがこのDWARFⅡなんです。大きなアンドロメダ銀河やばら星雲も画面にほぼ収まります。
但し広角寄りなので小さな天体はより小さく写ります。
又、SeestarS30、SeestarS50が200万画素(2K画像)なのに対してDWARFⅡは800万画素(4K画像)と4倍の高精細な画質でアドバンテージがあります。
31.7mmのフィルターも装着可能です。
本体の重量も一番軽いです。昼間の撮影にも使えます。
本体のバッテリーも蓋を開けて交換出来るのもいい所です。
但し、同価格帯のSeestarS30が発売されたので、今ならSeestarS30を選ぶかな?
◆番外編
Unistella eVscope(初代)
(D114mmFL450mmF4)
IMX224 1/3型127万画素 合成焦点距離3645mm
9Kg(三脚含む) 379,800円(2020年発売当時)
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多人数の観望会で威力を発揮するのはアイピース(EVF画像)で覗けるUNISTELLAのOdyssey ProやeVscope2です。
実際に望遠鏡を覗けるアドバンテージは大きいです。
但し高価(548,900円と605,3300円)なのがネックになります。
そこで、中古で安くなった(15~20万円ぐらい?)スマート望遠鏡の元祖初代eVscopeが狙い目でしょうか?
(中古品はバッテリーの劣化の心配もありますが・・・)
この機種もアイピース(EVF)から覗けます。
センサーサイズが小さいのでかなり長焦点距離になり、小さな天体や惑星が大きく見られます。
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メーカー非推奨ですが、裏技として実は31.7mmフィルターもCマウントー31.7mm(1.25インチ)アダプタで装着出来るので、光害地では、マルチバンドパス系フィルター(QuadBPⅢ等)を使うと、星雲がさらにくっきり色鮮やかに写ります。
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前世代機なので、ピント合わせは手動(バーティノフマスクが付属しているので比較的手動でも合わせやすい)で、ヒーターも内蔵していません。(アマゾンで社外品が安く買える。)
画素数がたった127万画素なので画像がやや粗い。
でもアイピースで覗くときれいに見えるんです。
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(筆者撮影)
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(筆者撮影)
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(筆者撮影)
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(筆者撮影)
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(筆者撮影)
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(筆者撮影)
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(筆者撮影)
このページに掲載した天体画像はすべて私が所有しているスマート望遠鏡で撮影したものですが、如何だったでしょうか?(表題の画像は自宅からスマート望遠鏡で撮ったNGC7635バブル星雲です。)
こんな天体が簡単に見られるのがスマート望遠鏡です。
少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
是非、ご感想をお聞かせください。
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