第86期あすなろ杯争奪戦 自戦記 (連珠)
あすなろ杯。それは級位者が初段を目指す戦い。
あすなろ杯。それは未来の高段者が集う大会。
あすなろ杯。それは盤上に繰り広げられる勇気と想像力の証。
はい。そんなわけで今回は連珠の第86回あすなろ杯争奪戦の自戦記を書いていきます。今回のあすなろ杯は優勝を目指して挑みました。結果は見事優勝!!!しかも全勝で。やったね!!!それではどんな準備で大会に挑んだのか。対局中の心理はどうだったのか。ご覧ください。
大会前の準備-前回大会の結果を振り返って臥薪嘗胆
あすなろ杯は連珠の級位者の大会であり、毎年3月と8月に開催されています。今年の3月の大会に自分は出場しましたが、結果は9位/14人でした。優勝を狙っていたので、この結果は惨敗でした。この結果が本当に本当に悔しくて……。大会の翌日から、毎日あすなろ杯のことを考えていました。次は優勝する。次は優勝する。あんな惨めな結果は出さない。優勢の局面で勝ち切る力をつける。優勢の局面で勝ち切る力をつける……。そんな感じで毎日あすなろ杯について考えていたので、3月のあすなろ杯から今回のあすなろ杯まではあっという間でした。
大会前の準備-珠型編
あすなろ杯は珠型交替自由打ちなので、一方が26珠型の内一つを提示し、相手が黒番か白番を選択します。黒有利もしくは白有利の珠型を提示すると、序盤から形勢が片方に傾いていることになります。自分はなるべく互角の展開から始めることを志向しているので、疎星・流星・長星を提示すること考えていました。流星は3月のあすなろ杯で短手数で敗れた一局があったので、強化するために五目クエストではひたすら流星を提示。通算で500局以上をこなしパワーアップしました。またいっぷくのオンラインレッスンで疎星・流星・長星の講座を受講し知識面を強化。最終的には、大会で流星または長星を提示することとし、長星は疎星共通系が来てもウェルカムという状態で臨みました。
大会前の準備-戦力分析編
大会で勝ち抜くために自分の実力を高めることは重要ですが、相手の実力を分析することも重要です。将棋の早咲アマは出場者63人全員の対策を立てると公言していますが、自分もそれに倣い他の出場者の対策を立てました。予想出場者のメンバーは、nacoさん、かさじぞうさん、okadaさん、李さん、suzuki親子、aeaeaさん。皆さんの特徴と対策はこんな感じになりました。
・nacoさん 得意珠型 疎星、長考派、攻めの組み立てにセンスあり、四追いチャレンジのレート2100越え
対策 疎星は黒番を取り主導権をにぎらせない、未知の局面に誘導し時間を消費させる。
・かさじぞうさん 得意珠型 疎星・峡月・水月、カッター流使い
対策 峡月・水月の黒番の手筋を覚える、流星をぶつける
・okadaさん 得意珠型 丘月、攻めが好き
対策 攻めからのカウンターを狙う
・李さん 得意珠型 疎星、読みの力が高い
対策 疎星1題の最善進行を外す、流星をぶつける
・suzuki親子 母 : 受けが強い 息子 攻めっけ、早打ち
対策 流星をぶつける、相手のペースにつられない
1回戦 vs nacoさん
ここからは棋譜をもとに当日の対局の様子を振り返ります。当日は朝はコンディションはまずまずの状態で臨め、あとは勝つだけという心持でした。大会参加者は途中参加を含め12名でした。対局の持ち時間は20分+1手30秒フィッシャーです。1回戦が誰が来るかはあまり考えていませんでしたが、組み合わせが発表されたところ初戦はnacoさん。いきなり強敵です。nacoさんとは過去2回公式戦で当たり、2敗くらっています。いずれも優勢な局面からの逆転負け。序盤優位を築きながらも勝ちきれないというもどかしい対局です。nacoさんは7月の世界ユースでも活躍しており、高段者からも期待される若手選手。そんなわけで、初戦から強敵にあたったことに、体力がある内に当たれてよかったという気持ちが50%、負けても残り5連勝すれば、初段を獲得できる2位圏内に入れるかなという気持ちが50%でした。
仮先はnacoさんで疎星提示。自分が黒番を選択しました。黒7でK9と打ちました。これは現在ではあまり打たれていませんが、数年前までは打たれていた手。nacoさんの知識範囲を外し、時間を消費させるための手です。nacoさんは白8をI11に打ちましたが、最善はI8。これで形勢はやや黒有利になりました。黒11で左隅に黒の勢力を拡大させます。白12、黒13と進み、白14。この白14は黒の連を止めていないので3を引けるなぁと思い、引いていったら勝ちになりました。緩着を咎めて1勝をもぎ取り、安堵しました。連を止めていればまだまだ長い戦いだったでしょう。なんとか強敵nacoさんから勝ち星を挙げられたんので、出だしとしては上出来。全勝に向けて気合がますます入りました。
2回戦 vs かさじぞうさん
続いてのお相手はかさじぞうさん。かさじぞうさんは大会に熱心出場されている級位者の方で、これまで公式戦で4度当たっています。神谷八段から指導を受けているとのことで、実力を着実につけています。相手が提示であれば、疎星、峡月、水月が来ることが予想され、これらの対策はしていたのでドンと来いという感じでした。
自分が仮先で流星を提示。相手が黒番を選択し、自分が白4を打ちます。白8までは定型。黒9がI7だったので、白10はG10を打ちます。この白10はソフト最善であり、攻めを意識した手です。左上で白は勝ちを狙いに行きますが、黒17までで攻めの構想が破綻。白18でごめんなさいをと剣先をたたきます。ここから黒にペースを握られますが、黒25のとび3に対して白26で中に入ったところで、黒の攻めが収まったと感じ安心します。白34でそれは確実になり、黒35で今度は黒がごめんなさいをしに来ます。このあとは白36から白攻めのターンとなり最後は禁手勝ち。I3で四四禁を狙っていたら、先に三三禁がありました。序盤攻めの構想が上手くいきませんでしたが、中盤から徐々に形成をよくして勝てた一局でした。これで2勝目を挙げ、また一つ全勝に近づきました。
(大会終了後にソフト検討をしたところ、黒15でK6と打つと黒勝ちがあったようです。局面としてはかなりあぶなかったようで反省です。)
3回戦 vs okadaさん
3回戦開始前で全勝はすでに3人のみ。潰しあいが熾烈です。3回戦の相手はokadaさんに決まりました。okadaさんとは6月のペア連珠大会でペアを組んでおり、その実力・棋風は知っていました。okadaさんの攻めの棋風は破壊力があるので勢いづかせたくないなと思っていました。
自分が仮先となり、長星を提示。okadaさんが黒を選択しました。自分が白となったのですが、ここが想定外。てっきり、okadaさんが白を選択して、疎星・長星共通系になるもんだと思っていました。疎星・長星の共通系で白をやりたくなかったので、長星特有の白4を打つ覚悟を決めます。黒5が打たれて白6も選択に悩みます。J9に打つ進行もありますが、この進行は自分が黒番の場合を想定していたので白番は準備不足。なので白6はI7に打ちました。白12までは定型の進行。黒13でokadaさんが長考をします。10分ぐらいは時間を使ったでしょうか。黒13をH11に打ちます。定石はI11でしたので、ここで定石から外れ安心するとともに、一方で定石を外れた際の進行を把握していなかったのでちょっと不安になります。黒15に対して、白16と反対側の剣先をたたくのはドキドキ。黒17と責められ不安になります。黒21ときて盤面の左上に白石が入る展開となり、局面が落ち着くと感じて心にゆとりができます。黒27に対しては白28とカウンターを食らわせ、一気に白ペースに持ち込みます。白38を打つ場面ではだいぶ形勢が良かったですが、詰みが見えるのに時間がかかり、悩まされます。ああでもない、こうでもない。うーんとなっていたところ禁手が、見えて何とか詰ませられました。実力者okadaさんを撃破し3連勝。全勝者は自分も含めてついに二人のみとなりました。
4回戦 vs李さん
4回戦の相手はもう一人の全勝者である李さん。最近連珠を始め、関東選手権にも参加した方です。読みの力が強く、感想戦では熱心に筋を検討していた姿勢が印象に残っていました。疎星を愛用している印象を受けたので、相手の得意な展開は避けたいと思って対局に臨みました。
李さんが仮先で疎星を提示。自分が黒を選択します。白8までは定型。黒9でG11と打ちます。ここでG11と打ったのは、李さんの得意展開を避けるため。黒9はJ8に打つのが一般的ですが、李さんがこの進行を得意にしている印象を受けたので、相手の知識範囲を外すためにG11に打ちました。黒13までで、黒の形勢がかなり良いです。五目クエストでも何度かやった展開。ヨシッと思っていたら白14で意表を突かれます。てっきりG8に打たれると思っていたのですが、G7が来ました。白はこの手で連を作っており、3を引き始めると攻め手が止まらない模様。こうなったら、黒も決め切らないとまずいです。ところが考えても考えても、黒勝ちのパターンが見えません。見えない。見えない。見えない。時間は刻々と過ぎ、10分も消費してしまいます。ヤバい。ヤバい。ヤバい。俺は負けるのか。ここで負けるのか。3連勝したのに。とりあえず。打たなきゃ。確かに記憶によると。禁手の焦点にもなるH11が正着だった様な……。かすかな記憶を頼りにH11に打ちます。その瞬間です。アッ。詰み筋が見えた!!!!あとは流れで勝ちました。非常にてんぱっていましたが、改めて見るとなんということもない詰み筋でした。対局って怖いなあと、対局終了後に強く感じました。苦しみながらも勝ち、これで4連勝。ついに全勝は自分だけになりました。
5回戦 vs foxonさん
ついに単独トップに立ち、全勝優勝がちらつき始めました。残り2戦、気を引き締めて頑張ろうという心境でした。5回戦の相手はfoxonさん。連珠の大会初参加で、五目クエスト1級の方です。情報がない相手だったので、ドンと構えるしかないと思いました。
foxonさんが仮先で渓月を提示。自分が黒を選択し、白4で峡月との共通系になります。黒9までは峡月対策の研究手順です。白10ときて黒11に対し、白12ときます。ここで黒13から3引きが続く展開が見え、なんとか攻め切れそうだなぁという手ごたえを感じます。黒15、黒17と3引きを連続し、黒19のミセ手で勝ちを確信。最後は四追いでした。対策がはまり、危なげなく勝てました。これで5連勝。残す対局はあと一つになりました。
6回戦 vs たろうさん
今大会最終試合となる6回戦の相手はたろうさん。たろうさんとは昨年のあすなろ杯で当たっており、1年ぶりの対局となります。その際は自分が勝ち、公式戦初勝利となった記念試合でもあります。1年間でパワーアップした姿を見せたいなと思いました。
たろうさんが仮先で疎星を提示。自分が黒を選択します。1年前もたろうさんが疎星を提示したなぁという記憶がよみがえります。1回戦のnacoさん戦同様に黒7をしかけ、黒13まで同一進行。白14と連を止めに来て、黒15とこちらも連を止めます。白16に対して、黒17と打ち、白18と3引きを外止めします。ここで黒19と両ミセとなり勝敗が決着しました。3引きは中が絶対でした。中入っていれば、まだまだ先が長い対局だったでしょう。こうして最終試合も勝利を収め6連勝。全勝であすなろ杯を優勝することになりました。
まとめ
あすなろ杯。それは何だったんでしょう。あすなろ杯に向けて、自分は今年の3月から普通じゃない準備をしてきました。連珠の勉強は3時間/日はこなし、オンラインレッスンを月3回受講し、四追いチャレンジは2ヶ月で15000問解きました。過剰とも思える練習量。おそらく周囲の人は、あすなろ杯ごときにそこまでやる必要はないでしょうと言うでしょう。でも自分なりには意味があったんです。前回大会で9位に終わり、普通練習量じゃ勝てないことを痛感。優勝への確実性を高めるためには人の3倍こなさないとだめだと。あすなろ杯は自分にとって乗り越えるべき壁だと思って挑みました。無事に壁は乗り越えられ、達成感得られ満足しています。それと同時に、あすなろ杯を優勝したのが昨日のことですがなんだか遠い昔のことに感じます。練習した日々は現時点ですでに懐かしくなっています。これは達成感の故なのか、満足してしてしまったためか何なんでしょう。懐かしさ、思い出は奇麗ですが、いつまでも感傷に浸るものではありません。思い出はキレイだけどそれだけではお腹もすきますしね。また新たな目標に向かって取り組みたいと思います。ありがとう。あすなろ杯。さようなら。あすなろ杯。ある意味、世界一あすなろ杯に打ち込んだ自分から感謝申し上げます。ありがとう。元気でね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?