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日本学術振興会 特別研究員DC1の申請

こんにちは。みなさま、いかがお過ごしですか。
私はオンラインでの一年を終えて、来年度の博論提出に向けて、心が落ち着かない日々を過ごしています。

さて、今回は日本学術振興会の特別研究員について、私が2018年5月に申請書を提出したときのことを振り返ってみようと思います。
ただの体験談で終わってしまってももったいないので、先輩方に教えていただいたノウハウ的なものも紹介していきます。​

まずは前提のお話を。

私が申請したのは、2018年の5月、修士課程2年のときです。
申請書の審査区分に即すと、「②書面合議・面接審査区分」は人文学、「③書面審査区分」は思想、芸術およびその関連分野、「④小区分名」は思想史関連です。
当時の所属は都内の国立大学で、ゼミの人数は修士・博士を合わせて10人前後、DC1に採択されたことのある先輩もいるという状況でした。

申請書作成の、怒濤のスケジュール

申請するつもりはあったのにギリギリで、第一次学内〆切が(たしか)5月7日にも関わらず、申請書の作成を開始したのは5月1日でした。
とはいえ、書き始めてからは頑張りました。一日半で「2. 【現在までの研究状況】」と「3. 【これらかの研究計画】」(但し、「(4)年次計画」除く)の0版を書き上げ、5月2日の夕方には当時の指導教官にみていただきました。
具体的なアドバイスもいただきつつ、「これ、通らないよね。面白くないもんね。」と、抜本的な書き直しを提案されました。
そこからはGW返上で、毎日改版していきました。5月3日に1版、4日に2版・・・、そして暫定版を第一次学内〆日に提出します。
ありがたいことに最終〆切の5月18日までは修正可能だったので、ここからは文章表現や構成を中心に見直しをしていきました。
9日には専門違いの研究者さんに読んでいただき、わかりにくい箇所や研究タイトルの修正などを、10日はゼミがあったのでその際に指導教官含めて内容の確認をしていただきました。
この時期からいくらか心に余裕が生まれてきて、夜もぐっすり眠ることができた記憶があります。それ以前が極限緊張状態だったので、たしか体調も崩しました。
そして、最後は大学の職員の皆さんにご指摘いただいた形式的な不備を修正、無事に申請書の提出を迎えました。

0版は何がダメだったのか

今後の自分のためにも、久し振りに0版の申請書を掘り起こしてみようと思います。今になって読み返すと、たしかにこれは「通らない」。だって、ほんとに「面白くない」から。

主な原因は以下の二点だと思います。

①問題の枠組が既存のもので、問われ続けてきたものだった

つまり、問題設定は大きそうにみえるけれども、実のところ対象は違えどその問題はすでに問われてきたものだったわけです。
「近代的主体概念の成立」なんて、数多の先行研究があります。従来の先行研究が重点的にはとりあげることのなかった対象をもってきて、その問いを再提示したところで、「面白くない」。

では、どうしたらいいのか。まず、可能なかぎり新しい視点から問題を設定すること、そして研究課題の解決が既存の定説を揺さぶりそうなこと、この二点ではないでしょうか。
視点は全くのオリジナルである必要はないでしょうし、そもそも先行研究あっての新規研究です。私の場合は、近年注目されている新しい方法論を冒頭におきました。それによって、古典研究でありながらも現代的な問題意識である(実際にその方法論を巡っては国際的に活発な議論がある)ようにみえます(多分)。そして、その方法論を採用することで、研究対象は一人の思想家にもかかわらず、時代全体の理解に寄与する可能性を記述しました。

②申請書全体が一連のストーリーとして記述されていない

0版では、各項目が要求項目に対応しているものの、ぶつ切り状態になっていました。しかしながら、実際に要求されているのは今後の研究課題との関係のうちに各項目が何らかの役割を果たしているような記述です。

例えば「2. 【現在までの研究状況】」では、「【研究背景・問題点・解決方策】(①)」、「【研究目的・研究方法・特色と独創的な点】(①)」、「【研究経過及び得られた結果・問題点】(②)」についてそれぞれ記入します(当時)。
「【研究背景・問題点・解決方策】(①)」では、端的に先行研究の問題点を示し、自身が採用する研究方法の妥当性を示す必要があります。
「【研究目的・研究方法・特色と独創的な点】(①)」では、適切な先行研究のうちに自身の研究を位置付けることで、新規性がありながらも突飛な発想でないことを示さなければいけません。
「【研究経過及び得られた結果・問題点】(②)」では、今後の研究課題の着想に至った経緯を、より詳細に記します。その際には、修士課程での研究における自身の長所が目立つようにまとめると効果的です。

さらに、「2. 【現在までの研究状況】」は、「3. 【これらかの研究計画】」への布石なわけですから、上記の三項目から必然的にこれからの研究計画が生じた、と読み手が納得できるかたちに再構成する必要があります。
令和4年度の申請書様式変更に伴って、「2. 【現在までの研究状況】」は消滅していますが、「2. 【研究計画】」の「(1)研究の位置付け」欄がいくらか増えているので、そこで簡単に触れてもいいのかもしれません。

いくつかのノウハウ的なもの

申請にあたって、絶対にやっておいた方がいいと思うことを。

①採用された人の申請書一つでいいからもらう

たしかにたくさんの成功サンプルがあった方がいいかもしれませんが、採用者の申請書から学ぶのは主に形式面だと思うので、一つあれば十分だと私は思います。実際、私も二人分の申請書を事前に読むことができましたが、お二人とも形式面はほぼ同じでした。
自分の所属ゼミでは採用者がいないからと諦めず、一人くらいだったらSNSでも学会の懇親会でも、申請書見せてくれる方が見つかると思います。ご連絡いただければ私のものもお送りできますので、まずは一つのサンプルを獲得することから始めましょう。

②忌憚なき意見を言ってくれる、信頼できる人に読んでもらう

これが最も重要で、実は難しいことですが「これ、通らないよね。面白くないもんね。」と言ってくれる方に読んでいただきましょう。回数は多くなくても、自分で書いたものを一度ばっさり切られることで、どこがダメなのか、どう直せばいいのか、学べることはとても多いです。
〆切が近いからと優しいアドバイスをくれる人ではなく、ちゃぶ台を大胆にひっくり返してくれる人がオススメです。その気になれば、いくらだって書き直せます。私は当時そこで踏ん張ったことで、3年間楽しく続けられる研究課題に辿り着くことができました。一時的にメンタルえぐられるので覚悟も必要ですが、私には必要な経験だったと思います。

③分野違いの採択経験者に最終版を読んでもらう

実際の審査は自分の研究内容に明るくない審査員も含んでいます。それは、書面審査区分の名称を確認すると、おのずと明らかです。そこで、分野違いの採択経験者に最終版を読んでいただくことをオススメします。
細かい専門は違うからテクニカルタームとかはわからない、けれど同じ人文学研究者(書面合議・面接審査区分は同じ)であるような採択経験者が、自分の申請書を「面白い」と思ってくれるか、そもそも内容が審査員に伝わるのかが分かります。私はこのタイミングで表現の微調整や研究課題名の修正を行いました。

④テクニカルなこと

最後に、私が教えてもらったいろいろを箇条書きにしようと思います。
〈書式について〉
・フォントは「MS明朝」と「Times New Roman」、ポイントは10以上
・段落の間に余白の行を挿入(幅は固定値で5程度)
・本文中に挿入した参考文献には「下線」(但し読みにくくなるので二重下線は使わない)
・見出しと重要箇所は「太字」
〈形式について〉
・各項目の最初には5~8行の要約をつけること
・太字にした重要箇所をそこだけを追うことで大体のストーリーがつかめるように工夫
〈その他〉
・ そのテーマを研究するなら絶対に外せないよね、という先行研究には必ず触れておく
・挙げる先行研究は国内外のバランスを大切に、しっかりと最新のものまでカバーしているようにみえる工夫をする。
・「研究計画」では、国際性をアピール
・「年次計画」は具体的に
・「現在までの研究状況」と「これからの研究計画」は誠実に、「研究の特色・独創性」は天才だと思って書け


令和4年度採用分からの様式変更で参考にならない箇所もあるかもしれませんが、学振を目指す次世代のみなさんのお役にたつことができたら幸いです。


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