ワークマネジメントについて考える
オンラインで仕事をするようになって、業務効率について考えることが増えました。
コロナ禍以前と比べて、皆さん自身及びチームやグループの業務効率は良い方だと感じますか?私は禍中に今の会社に入ったので比較対象がないのですが、課題があるなと感じていました。そしてグループのマネジャーになってより強く感じるようになりました。
今回は書籍『より良く働くためのワークマネジメント』のブックレビューになります。
仕事のための仕事が多い
この書籍はまずここから始まります。そしていくつかのエビデンスが並びます。
まとめると日本のビジネスパーソンは欧米のいくつかの国と比べて”仕事の無駄が多いとは感じていないのに残業時間が長い”とされています。
因みに仕事のための仕事とは、付加価値を産み出さない仕事を指します。
宛先のccに入っていたという理由だけで送られてきた自分とは無関係なメールを読む時間や、参加者の多くが内職をしている会議への出席など。
そしてこの問題の本質にも触れています。
残業をすることで残業代が支払われるだけでなく、残業時間の長さと人事評価が正比例の関係にあるという謎に。
そして冒頭の締めで重要なことを書いています。
ワークマネジメントを行う目的は『監視の強化ではなく、チームワークが強化された環境作り』にあると。
上記の主張は折に触れ引用されています。
変化の潮流
リモートワークが増えたことでマネジメントは変化してきています。
どんな変化が起こったのかを少しまとめます。
従来はマネジャーが管理をするためにワークフォースマネジメントといった考え方が主流でした。これはマネジャーだけがメンバーのタスクを把握することが目的でした。
しかしこれがワークマネジメントに変わりつつあります。これはチームの全てのタスクとその担当者が公開された状態とすることで、全メンバーがタスクの状況を知ることが出来る環境を作ります。
これにより管理から相互認識に変わり始めています。
また、PDCAという考え方からOODA(Observe Orient Decide Act)という考え方に変わってきています。予実の差異を追求して予定に合わせようとするのではなく、状況に応じて最適解を探して試す方が未来が予測できない現代に適しているからです。
なぜ専用ツールなのか
ここからはどうやってワークマネジメントを実践するかという話です。
こういったシチュエーションでは多くの現場でExcelが採用されると思います。
本書ではもちろん専用のツールを使うことを推奨します。そして私も強く共感しています。
なぜか。
私のこれまでの経験ではタスクの一覧化をして担当者を割当てて、いわゆる第1版が出来たらお終いというケースが非常に多かったからです。メンテナンスがとにかく面倒なのです。
そのうえ、文字にせよ画像にせよ付加できる情報が少なく一覧を見ても経緯が分かり難いという欠点もあります。その結果、一覧を見ても前後関係や依存関係は分かりません。
この辺りは共感頂けるのではないでしょうか。
そしてこの一覧表を作成したり更新したりする作業がまさに『仕事のための仕事』ではないでしょうか。
ツールを使えば
ここからはツールを使うメリットを紹介します。
仕事のための仕事が減らせる
一例として以下が挙げられます。
タスクを更新することで報告と連絡を兼ねるので、報・連・相のウチのふたつを別途まとめる必要がなくなります。定期的な報告会や進捗確認会を減らせるようになるかもしれません。時間以外の基準で成果が見える
こなしたタスク量=成果なので、費やした時間という曖昧な基準からの脱却が可能になります。会社の人事担当者には朗報ではないでしょうか。メンバー同士が助け合える
個々人のタスクがオープンになっているので、マネジャーを通さずにサポートしあえる環境が作れます。私が目指したのはこの環境でした。
本書ではサポートしたメンバーにインセンティブを与えることを提案していました。責任が明確になる
言わずもがなです。検討課題の解決スピードが上がる
検討会を企画して関係者を招集し、課題の経緯から説明し、関係者から意見を募り…という作業がオンラインで行えるのは非常に大きなメリットだと思います。
障壁
ここまで読んで頂いた皆さまの中には、いくつかの疑問や課題感を持たれた方もいらっしゃると思います。
最後にワークマネジメント環境を作る際の障壁についても箇条書きでまとめます。
本書では解決策も紹介されていますが、私は紹介された方法では解決に至りませんでした。残念。
必要性の理解不足
冒頭にあったように、欧米と比べて残業時間が長いにも関わらず仕事の無駄が多いとは感じていないのが日本のビジネスパーソンです。ワークマネジメントの必要性を感じていない可能性があります。
必要性は感じつつも、以前の様なオフラインワーク環境に戻れば解決すると考えているマネジメント層もいるかもしれません。現状維持バイアス
これは誰もが持つ原始的なバイアスです。不利益を被る人の抵抗
残念な話ですが一定数います。
時間以外の基準で評価されてしまうと、残業代を稼ぎたい人や残業時間の長さで評価されていた人にとっては迷惑な話です。抵抗します。
タスクのボトルネックになっている人も抵抗します。彼らは忙しいふりをしてサボっていたり、能力不足だったりするからです。
まとめ
ワークマネジメントの取組に成功すると、本当の意味での成果主義が実現できます。絵空事だと思っていた働き方改革が現実味を帯びます。
企業は純粋に成果に対して報酬を支払うという制度を整えることで、時間的/地理的な理由だけがネックで就業を諦めている方々を雇用できるようになります。
リモートワークの広がりによって都心から地方への移住が取沙汰されましたが、本来実現したかったのは地方に住む優秀な人材を採用することだったと思います。
5年後、10年後を見据えてワークマネジメントの導入を検討してみてはいかがでしょうか。