ネットでの購買時、消費者が参考にするのは○○系のサイトだった! 論文「ECサイトでの購入に寄与するオンライン情報探索行動」要約
宮城大学で教鞭をとりながら、CARRACのデジタルマーケターとしても活躍する高山さんが発表した論文「ECサイトでの購入に寄与するオンライン情報探索行動」について、本記事ではその結論を中心にまとめました。
高山さん曰く、本論文の内容は「デジタルマーケティングに携わる人達にとっては、当たり前のことを書いているだけ」なのだそう。
ただ、これまで発表されてきた論文と違うのは、User centric dateというユーザー1人がどこのページを閲覧しているのかが把握できるデータを取り扱っているという点。
これまでインターネット上のユーザー行動研究に用いられてきたのは1企業1サイト上のデータ(=Site centric date)がが大半であり、ユーザーが商品購入にいたるまでどのようなサイトを閲覧してきたかまでは分析しきれていなかったそうです。アフィリエイト広告をはじめ、リスティング広告やリターゲティング広告には各企業の試行錯誤が生んだ成功事例が残されています。しかし、その裏付けとなる論文というのは少なく、インターネット上のユーザー行動については意外と研究が進んでいませんでした。
高山さんの言う通り、本記事でまとめている内容もデジマに携わる人達にとっては当たり前のことなのかもしれませんが、その「当たり前」を立証する貴重な論文であるのも確かです。
現在持っているご自身の当たり前と、研究から明らかになった事実を照らし合わせながらご覧いただけますと幸いです。
論文の目的:Web広告の効率化
本論文では具体的に下記3つ疑問を明らかにしていきます。
①企業直営型ECサイトへ繰越情報探索に訪れていることが購入に寄与しているか
②モール型ECサイトへの直前の接触が企業直営型ECサイトでの購入へ寄与しているか
③SNSや比較サイトでの情報収集が購入に寄与しているか
Web広告には、過去の様々な事例から導かれた確度の高い仮説があります。例えば「リターゲティング広告で自社ECサイトへの訪問回数を増やすことは購買につながる」「SNSマーケティングやアフィリエイト広告による口コミは商品認知の拡大に有効かもしれない」といったものです。
本論文は、ECサイトでの購入に寄与するオンライン情報探索行動を明らかにすることで、そうした仮説を検証したり、裏付けとなるデータを提示しています。最後の結論までお読みいただくと、オンライン上での販売促進活動における広告出稿の効率化に関するヒントが得られるかもしれません。
データと調査対象
User centric dateについて
過去のオンライン上における消費者行動の調査には、Site centric dateというアクセスログデータが用いられてきました。データ範囲が1サイトに限られているため収集しやすいというメリットがある一方、消費者が商品購入に至るまでにどのようなサイトを閲覧してきたのかまでは把握できないというデメリットがあります。
本論文で用いられているのは、User centric dateという1企業・1サイト内にとどまらないアクセスログデータです。ユーザーが商品購入に至るまで、どのようなWebサイトを閲覧して情報探索を行ったのか収集・分析が可能となります(非常にセンシティブな情報であるため、利用者の許諾を得たうえで収集されています)。
調査対象について
分析用データと分析方法
結果と考察
分析によって得られた結果と考察は以下の4点。
①購入者は自社ECサイトに何度も訪れている
購入者が情報探索を行うサイトは自社ECサイト・検索サイト・モール型ECサイトが多く、中でも非購入者と比べて購入者は自社ECサイトに繰り返し訪問しており、それが購入に影響しているということが明らかになりました。
これまでリスティング広告、リターゲティング広告は、商品購入者獲得に費用対効果が高いとされてきましたが、今回の調査によって消費者行動の視点からも購入確率が高く、効率的な施策であることが本研究により確認されました。企業側は、ECサイトに来訪させる仕組みを持つことができれば、自社ECでの購入を増やせる可能性があります。
②情報探索サイトが多いほど購入確率が高まる
情報探索時に多くのサイトカテゴリを閲覧しているほど、商品購入の可能性が高いということが明らかになりました。購買動機の強い消費者は、価格や使用感などについて様々な視点で情報探索を行っています。
③購入に寄与するサイトの組み合わせが存在する
カテゴリの組み合わせと購入の意思決定に関係があるのかを分析したところ、2パターンの組み合わせが購入との関連性があることが明らかになりました。
パターン①自社ECサイト+検索サイト
パターン②自社ECサイト+検索サイト+モール型ECサイト
自社ECサイトの閲覧とともに、検索サイトやモール型ECサイトでの情報探索も商品購入に寄与しています。モール型ECには商品の金額や商品評価に関する情報が記載されているため、自社ECで購入する意欲が高くても、購入前の最終確認としてそれらの情報を閲覧している可能性が考えられます。
④SNS・比較サイトよりもモール型ECの口コミを参考にしている可能性がある
本研究を通して、ソーシャルメディアや比較サイトについては購入への影響は確認されませんでした。
先行研究では、ソーシャルメディアや比較サイトで製品の使用感等の情報を得ていると発表されています。本研究では対象者をオンラインでの商品購入者に限定しており、オンラインでの商品購入経験者はモール型ECの利用率も高い傾向にあります。そのため、製品の使用感等の情報収集についても、比較サイトやSNSやではなくモール型ECで代替している可能性が示唆されました。
ただ、この点については、化粧品ではないカテゴリでの調査であったら、アプリの閲覧履歴もとれたら、若年層に絞ったら、とさらなる研究の余地があります。
余談:アフィリエイト広告の役割
アフィリエイトの広告運用を事業上の強みとするCARRACにとっては、④で示唆された「比較サイトの購入への影響は確認されなかった」というのは少々残念な結論でした。
しかし、結論①と②で明らかになった「ECサイトに繰り返し訪問する仕組み作りを行うことで購入を増やせる可能性」「多くのサイトカテゴリを閲覧しているユーザーは商品購入の可能性が高い」というお話しは、以前掲載した「アフィリエイトによって検索トップに面を貼る有効性」の裏付けとなる結果でもあります。
これまで成果に応じて広告費が支払われてきたアフィリエイト広告。強い購入意欲を持つ方だけでなく、商品に興味があるという方々の購入意欲促進に寄与することができるのかもしれません。
高山さんについて
高山さんは現在、海外で人気の岩手県の伝統工芸品・南部鉄器を筆頭に、地域企業が世界で戦うために必要な商品やサービス作りを研究をしています。
この説明だけでは事業開発領域の研究者のようですが、その中でデジタル上で伝統工芸品の価値がどうすれば伝わるのか、どうしたら売ることができるのか、ということを「オンラインの消費者行動」という観点から研究されています。
高山さん関連のURLを貼っておくので、ご興味あるかたは是非お目通しください。
CARRACでは、アフィリエイト広告に対する適切な理解促進を目的とした記事を投稿しています。アフィリエイト広告の運用について興味のある方、知識を深めたい方は是非ご覧ください。
(イラストレーション:ニッパシヨシミツ)