記事の向こうに人がいる。佐藤友美『書く仕事がしたい』
書くことを仕事にするってどういうことなんだろうか?
そんな疑問から本書を手に取った。
noteを始めてからというもの、新たな自分との出会いの連続だ。
もともと私は書くことが好きではなかった。
というかモノを書いた経験なんて、子ども時代の作文や、大学時代の論文、入社してからは昇格試験の論文など、書かされた経験ばかりだった。
それがnoteを始めてから自発的に書いてみると、これが面白いのだ。
頭のモヤモヤを文章にするからスッキリするし、コメントももらえたりする。
スキが増えると素直に嬉しい。
もっと人の心に響く文章を書きたいという欲求が日々高まる。
そんな私は「書く仕事」に興味を持った。
本書はライターとして活躍されている佐藤友美さんが「書く仕事」について丁寧に説明してくれる。
「書く仕事」がしたい人にとっては具体的なイメージがわく良書だ。
一般的には「書く」という行為をマネタイズしたい人が手法を学ぶために読む本に思える。
私は少し違う印象を持った。
記事の向こうに人がいる。
日々私が目にする本や雑誌、ニュース記事などの後ろにいる人たちがおぼろげながら見えた。
私はヤフーニュースなどに掲載されているPV数だけを求めた質の低い記事が嫌いだ。
具体的には皇族の問題とか、芸能人の不倫の問題とか、読者のどす黒い感情を炙り出す記事のことだ。
こんな記事を書く人たちを軽蔑していたし、全く理解もできなかった。
本書はライターという職業への解像度をあげてくれる。
ライターは記者のようなサラリーマンもいれば、佐藤さんのように個人として活動されている方もいる。
もちろん私と同じでライターにも自分たちの生活もあるし守るべき家族もいる。
彼ら彼女らが本心で質の低い記事を書きたいのかと言われれば、必ずしもそうではないと思う。
理想論としてはスキなことを仕事に!なんてみんなができればいいのだが、そんなこと一部の人にしかできない。
記事を書きながらスルガ銀行のパワハラ事件を思い出した。
顧客の不利益になる詐欺まがいの仕事をスルガ銀行の社員たちは行った。
世間を騒がせたかぼちゃの馬車事件のことだ。
彼らは「お前の家族を皆殺しにしてやる」と言われても会社を辞められなかった。
なぜなら自分や家族の生活がかかっているからだ。
これは極端な話だが詐欺まがいの仕事をする人間だって、質の低い記事を書く人間だって守るべきものがあるよなと思う。
一部やりたくてやっている人間もいるのかもしれないが、大多数は疑問を持ちながらやらざるを得ない、なんて状況になっている人が多いだろう。
これまで考えたこともなかった記事の向こうにいる人たちについて思いをはせることができた。
おしまい!