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足し算のマネジメント、引き算のマネジメント、どっちがいいのか論
特に大企業におけるミドルマネージャー(ファーストラインマネージャーである課長や部長など)の役割は、
「足し算」も「引き算」も重要だが、
最も重要なことは「足し算と引き算の順番を考えて実行すること」
だと思う。
会社における理念や戦略というのは、
全社の方針に従い、事業部の方針があり、
事業部の方針に従い、部の方針があり、
部の方針に従い、自組織の方針がある…
という
「最大公約数的な、無駄が削ぎ落とされた状態で方針がおりてくる」
のでは、決して無い。
むしろ、全社の方針と事業部の方針とでかち合うこともあり、
事業部の方針と部の方針だって必ずしも一致しているわけではない。
そして、部の方針と自組織の方針だって、異なることがある。
そこで、
「大文脈で捉えたら一致しているんだけど、
それぞれちょっとずつ異なるから、全部やろう」とするような
「足し算のマネジメントのみ」を行うと、どうなるか。
・現場でやることが盛りだくさんになる
・その都度、一つ一つの意味と意図を方針と照らし合わせて説明する
・現場は振り回されて疲弊する
・マネージャー自身も疲弊する
⇒結果、特に何も進まない
きっと大企業でのマネージャーに登用される人は、
会社組織にとって「真面目」であるため、
全てやるべきものである、と思い込み
取捨選択せずに実行することもあろうかと思う。
一方で、「引き算のマネジメント」だけやるとどうなるか。
要するに、全社方針や事業部方針、部の方針の中で
削ぎ落として削ぎ落として、
今必要なものだけをやるということ。
・物事は進む(やることががシンプルだから)
・けれども、メンバーが暇になる(特に、優秀なメンバーが)
・暇だと、浮気心が出る
・退職者が増える
⇒結果、いつまでも同じステージを繰り返す(組織が発達しない)
自分は引き算のマネジメントのほうが得意だったが、
引き算だけやると、「優秀なメンバー」から抜けていく現象があった。
「すごくいい会社で居心地がよい。でも外でチャレンジしたい機会があった。だから退職する」
3人続けて退職理由が同じだったこの時に、組織の何が行けなかったかを考えた。
それは結果的に、「優秀なメンバーに対して、チャレンジャブルな課題を与えていなかった」ことに真因があると感じた。
課題が簡単すぎて出来てしまうからである。
さて、ではどうするか。
改めて、原理原則で考えてみよう。
マネジメントに求められていることは
「自組織の生産性の最大化」のはずである。
ということは、
「それを中長期的に実現する為に必要なものを取捨選択してやる」
ことが大事なはずだ。
ここで注意すべきは、
「取捨選択」は「一生捨てる」という意味ではなく、
「今は捨てる」「今はやる」という「順番を決めて取り組む」という意味。
組織が未成熟な場合、全社&事業部&部&自チーム全部の取組みを全部やると
何も進まない。
しかし、自組織成果の最大化を測る上で、
全社や事業部、部単位の方針ではなく、
秀逸な自チームの理念・戦略があれば
まずは何を差し置いてもそれを実行すべき。
それを実行した後に、部・事業部・全社と
だんだんと上位概念の取組みを行っていく。
秀逸な理念・戦略の浸透(=「文化」化)が出来れば
次の課題を渡していく。
そうやって、飽きさせず、チャレンジャブルな課題を確実に乗り越えさせ、
組織に成功体験を積ませ、組織を成長させていく。
最終地点は、間違いなく全社から自組織までを貫く一本の芯が通されることであるが、
それには、順番があるということ。
五合目から山頂に一気に上れるわけではない。
一歩ずつ、一歩ずつ。
今は足すのか引くのか、どっちなのか
それを見極めることこそ、マネジメントの腕の見せ所。