心理的安全性と生産性②
※前回はこちら
本稿は以下の3つの疑問について回答をしていくことにする。
②心理的安全性から生産性向上のリードタイムが不明である(関係性の質向上から結果の質向上までどれくらい時間かかるねん…ということが具体的に分からない)
③そもそも心理的安全性の正体が定義しづらい(関係性の質が高まるってどういうこと?仲良いってこと?という疑問に真正面から答えている情報があまりない)
④心理的安全性は不要であると思う管理職もいる(適切な緊張感をもって組織は運営されるべきであって仲良し小好し集団は不要であると思っている人もいる)
②心理的安全性から生産性向上のリードタイムが不明である(関係性の質向上から結果の質向上までどれくらい時間かかるねん…ということが具体的に分からない)
結論から言えば、1ヶ月で効果が出ると筆者は確信している。
特に、「メンバーの力量差が激しい時程に」効果が高い。
逆じゃないか?と思われるかもしれないが、逆ではない。これが正しい。
少し解説すると、心理的安全性がある状態を紐解けば、「優秀なメンバーも、劣後するメンバーも、お互いに心理的安全性を感じている」ということなので、優秀なメンバーは他のメンバーに対してノウハウを提供したいと思えているということだし、劣後するメンバーもノウハウを欲しいと思っている状態がある。逆に言えば、そこまでの関係性になっていることが、「心理的安全性が築けている状態」ということである。
だからこそ、良質なハウが好循環するのである。優秀なメンバーは組織への貢献心を発揮し、未成熟なメンバーへのノウハウを共有する。未成熟なメンバーはそのハウを喜んで吸収し、取り組んで成果を出す。成果が出た嬉しさを、チーム内に共有し、優秀なメンバーも嬉しくなりまた共有する、未成熟な他のメンバーも「俺だってやれるはず」と奮起して取り組み、成果を出す。
さて、「優秀なメンバー」の持っているハウは、レベルが高い、だからこそ未成熟なメンバーが真似出来るようなシロモノではない、だから、ハウの流通はなされない…という風に考える方もおられるのではないか。しかし、筆者の経験上、その状態はそもそも「心理的安全性が築けていない」のだと思う。何故ならば、本当に心理的安全性が築けている状態であれば、優秀なメンバーは出来る限り分かりやすい言葉で伝えようとするし、未成熟なメンバーは分からないところを熱心に聞く。レベルの高いハウが、お互いの歩み寄りによって、組織の全員が実現可能なレベルに分解されていくのだ。逆に言えば、そうならない組織は、まだまだ心理的安全性の築くレベルが弱いという風に言わざるを得ない。
本当にすぐに良質なハウがメンバーに展開され、真似をしだすので、すぐに成果が出始める。成果が出始めたら、さらに良くするために次のフェーズの話が出てくる。
③そもそも心理的安全性の正体が定義しづらい(関係性の質が高まるってどういうこと?仲良いってこと?という疑問に真正面から答えている情報があまりない)
これについては、前述の①と②について既に述べているのも同然だが、改めて言い換えるとこうである。
心理的安全性=心から「この組織のために頑張りたい」と思える風土
ポイントは「頑張らなきゃ」ではなく「頑張りたい」であることだ。
頑張らなきゃ、は義務感、責任感、Mustから来るものである。頑張りたい、は内発的動機、Willから来るものである。
MustはMustを課し続けることでしか、継続しない。裏を返せば、Mustを課されなくなった瞬間に、終わるのである。誰かのために頑張っているということはWillと同じだが、それがMustだから頑張っているという構造。
しかし、Willならどうか。自分がやりたいと思う気持ちから、誰かのために頑張る。いわゆる内発的動機からくる頑張りは、継続する。なんなら、止めても簡単には止まらないくらいのレベルで。
表面的に出てくる行動は同じでも、動機の違いが継続するかどうかのカギだ。
④心理的安全性は不要であると思う管理職もいる(適切な緊張感をもって組織は運営されるべきであって仲良し小好し集団は不要であると思っている人もいる)
この概念については、実は部分的に筆者も同意である。仲好しこよしだけの集団は特に何も生み出さないと筆者も思う。
しかし、心理的安全性と適切な緊張感は両立する。緊張感は仲間に向けるのではなく、組織の目標に向けること。その目標が簡単には到達しない、けれども頑張ればいけそう、という所謂チャレンジングゾーンに入っていることが大切だし、何より組織の全員がそれを目指して頑張ることが大事なのである。それを、気心の知れた仲間と追うのと、特に安心感のない仲間と追うのとではどちらが生産性が高そうかを考えてみれば、自ずと心理的安全性の大切さは分かる。
次回は、このような心理的安全性をどうやって組織にもたらすのかについて書きたい。