1on1が待ち遠しくなる上司の面談力(1)目的と時間
キャリアコンサルタントの松岡澄江です。
目標設定面談や評価面談とは違い、日頃から部下とのコミュニケーションを深め、部下のキャリアを支援するための1on1が増えています。社内のチームワークのためにも、部下のモチベーションアップのためにも、面談の習慣が定着するのはとてもいいことだと思います。
一方で、管理職の皆さんからは「1on1が重荷だ」「何を話していいのかわからない」という本音も聞きます。会社全体で実施することになっているので一応やっているけど、ついおざなりになってしまう現実も・・・。
上司 ~業務の進捗確認の後~「他に何かある?」(一応聞かないとな~)
部下 「特にありません」(聴く気ないんだろうな~)
上司 「じゃ、今日はこれでいいか」(ちょっとホッとする)
部下 「はい」(早く仕事終わらせて帰ろう~)
こんな会話になっていたら、せっかくの1on1がすごくもったいない。
上司も部下も、次の1on1が待ち遠しくなるようにするためにはどうしたらいいのでしょう?
・・・・・
意味ある時間にするためにまず目的を決める
何ごともそうですが、「やらないといけないからやる」のではそもそも長続きしないし、やる気も出ないから効果も出ません。せっかくやるなら意味あるものにしないと時間がもったいないです。1on1を、上司・部下双方にとって意味ある時間にするために、まずは目的(何のために実施するのか)を確認することが大事です。
部下は、1on1で「何を聞かれるのか?」「何を話せばいいのか?」と不安に思っています。1on1で話したことの「何を評価されるのか?」と疑心暗鬼になっていることも考えられます。そういう先入観を払拭するためにも、面談の目的と話すテーマを、1on1に入る前に明確にし、部下が安心して話せる環境をつくります。
例えば、「相互理解を深める」「定期的に仕事を振り返る」「今後の成長課題を定義する」「チームワークのためにできることを考える」等、お互いの興味関心が重なるテーマだといいと思います。
キャリアカウンセリングでも、面談でお話いただく内容にはとても神経を使います。自主的に面談に来た方は、話したいことや相談事が明確ですが、研修後の全員面談のように会社から受けるように指示されて面談にのぞんだ方は、特に話したいことを持っていない場合もあるのです。そんな時は、「この時間は〇〇さんのための時間です。今日は何についてお話しましょうか?この機会に何かお話したいことはありますか?」と投げかけてみます。この時間がその方にとって意味ある時間になって欲しいと思うからです。
先ほどの事例のように、上司が「何かある?」で始めてしまうと、「ありません」と答えが返ってきて、「じゃ、終わろうか」と、いつものパターンになってしまいます。そうではなくこの面談時間をお互いにとって意味のある時間になるために「この時間をどんな時間にしようか?」と質問をしてみてください。上司が常にイニシアティブをとるのではなく、部下に話したいテーマを聞いてみるのもいいと思います。部下から「〇〇について聞いていただけますか?」といったアイデアが出てくるかもしれません。せっかくの1on1ですから、お互い協力し合っていい時間を作れるといいですね。
・・・・・
話させることに注力 上司の話は2割ぐらいに!
管理職をしていた頃、私は「上司として部下には適切で有効なアドバイスをしなければいけない」と思っていました。何か相談されるとすぐに、「こうしたら?」「あれをやってみれば?」「あの人に聞いてみようか?」と、解決思考で応答していました。それがいい上司の姿だと思っていたんですね。人のお話を聴く仕事をするようになった今、当時を振り返ると『アドバイスの前にもっと部下の話を聴いてあげればよかった』と反省しています。
私のようににすぐアドバイスしてしまうことは、部下が自ら考える機会を奪っていることにつながります。それはつまり、彼らの成長の機会が失われていることでもあります。あの時もっと部下の話を聴くことができていれば、部下が成長する機会を、もっとたくさん提供できたのに・・・と感じます。
私たちは、目の前に真剣に自分の話を聴いてくれる人がいれば、自然と「話したい」・「話そう」という気持ちが生まれます。1on1の後、「上司が自分の話を聴いてくれた」という実感がもてれば、また話したいと思えるようになります。その繰り返しで信頼関係が作られていきます。
聴くことを部下の成長につなげるために、まずは全体の時間の中でどちらが多く話をしているのか?を観察してみてください。上司の話が8割になっていないでしょうか?もし上司が圧倒的に話す時間が長く、部下が話す機会がないとしたら、部下は『上司の話を聞く時間』と認識しているでしょうし、内心は「早く終わらないか」と我慢しているかもしれません。
自分の話は後、1on1は部下の話を聴く時間。
1on1をお互いにとって意味がある時間にするためには、上司の話は全体の2~3割程度、30分の面談なら6~9分にして、残りの時間は部下が発言していることをめざしましょう。
※「上司の面談力」の連載は次回以降、聴くための姿勢や質問等の具体的な面談手法をお伝えしていきます。よりよい1on1のためにご活用ください!
・著書紹介