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サクセションプランニングの効果的な運用のための3つのポイント(①KPIの設定・②連携体制の構築・③HRBPの活躍)

サクセションプランニング制度を設計・導入したものの「最初は良かったけど年数を重ねるとごに形骸化してくる」といった声や「後継者(サクセサー)候補の選定は大いに盛り上がるが、その後の育成が活性化しない」という声をよく耳にすることがあります。
サクセションプランニングは (他の制度も同様ですが)、設計と同じくらい、またはそれ以上に運用が重要であり、今回はその運用について3つのポイントを整理しました。

サクセションプランニングの運用で大事な3つのポイント

  1.   KPIを設定して常に状態をモニタリングすること

  2.  他の人事制度・施策と連携させること

  3.  HRBPの主要役割の1つとして位置付けること

【ご参考】サクセションプランニングの「設計」については、こちら(note)をご参照下さい。


1. KPIを設定して常に状態をモニタリングする

全てのポジションや全ての階層で後継者候補が万全に揃っていることは稀であるため、後継者候補プールの"健全性"を常にチェックし課題の改善に努め続けます。そのためには後継者候補プールの状態を測定可能な指標(KPI)を設定しモニタリングします。

後継者候補プールの状態を確認するための指標(例)

(1) 対象1ポジション当たりの平均後継者候補数 (準備率)
(2) 複数ポジションの後継者候補となっている人数割合 (重複率)
(3)「今すぐ登用可/1年以内登用可」の後継者候補が0人のポジション数割合
(4) 今回、新規に追加された後継者候補割合
(5) 前年度から登用タイミングに変化が無い後継者候補の人数割合
(6) 今回、後継者候補から外れた人数割合 
(7) 候補者の多様化率  (例: 女性・若手候補者の割合)
(8) グループ内他法人・地域の後継者候補数割合
(9) この1年間の後継者候補の育成計画の進捗率
(10) 後継者候補の対象ポジション要件との平均マッチング率  
(11) この1年間の後継者候補の退職率
(12) 対象ポジション現職者の低評価者の人数割合

「今すぐ登用可 (Ready Now)」の後継者候補数は多ければ良いというものではない?
対象ポジションにすぐにでも登用可能な後継者候補については、必ずしもその人数が多ければ良いというものでもありません。その人数が多いということは組織として効果的に人材を活用できてないことを意味し、登用を長く"待たせる"ようであれば退職リスクにも繋がります。

後継者候補以外で将来候補者となる可能性のある人材の確認
後継者候補になりうる人材の選定"漏れ"を防いだり、将来 後継者候補になりうる人材を把握しておくために、後継者候補以外で評価が高かったりポジション要件とのマッチング率が比較的高い社員も確認しておきます。

2. 他の人事制度・施策と連携させる

サクセションプランニングは単独では効果的に機能せず、採用・評価・報酬・昇格等の人事各制度・機能との連携が不可欠となります。具体的な連携内容を下の(1)〜(13)に記載しましたが、これら連携のためには人事部内でサクセションプランニング担当と他担当との連携体制づくりも重要となります。また、それに伴って人事部内で誰がどこまで後継者候補情報を共有するか/情報にアクセス可能とするかについても決めておく必要があります 。

他の人事制度・施策との連携内容

(1) 採用
・後継者候補数が少ないポジションについては、社外の候補者も探索する
(2) 昇格
・後継者候補が想定通り昇格しているかを確認し、昇格していない場合は状況を確認する
(3) 異動
・各後継者候補の個別育成計画(IDP)に沿った異動であることを確認し、異なる異動の場合は理由や育成への影響を確認する
(4) 人材開発
・各後継者候補の個別育成計画(IDP)実行のための育成プログラムを準備する
(5) キャリア開発支援
・各後継者候補のキャリア目標・プランがIDPと同じ方向であることを確認し、異なる異動の場合は状況を確認する
(6) 評価
・後継者候補の評価が最低でも標準以上であることを確認し、異なる異動の場合は状況を確認する
(8) 報酬
・後継者候補として選定されていることを条件とした金銭的報酬を検討する (海外では、ミドルマネジャー層への株式報酬の付与条件として後継者候補に選定されていることを設定している例もありました)
(9) DEI
・女性・若手・外国人財等の後継者候補の状況を確認し、必要に応じて増加策を検討する
(10) 従業員エンゲージメント
・後継者候補が率いる部署のエンゲージメント状況を確認し、低水準であれば状況を確認する
(11) 退職(リテンション)
・退職リスクが高い後継者候補については、重点リテンション策を検討する
(12) 労務/コンプライアンス
・後継者候補が重大な違反をした場合の対応を整備しておく / 過去の違反者を後継者候補として選定するか否かの考え方を定めておく
(13) HR-IT
・後継者候補の選定・増強や育成加速のための効果的なデジタルツールやHRデータ活用方法等を検討する

3. HRBPの主要役割の1つとして位置付けること

各事業部内でのサクセションプランニングの推進は、HRBPの重要な役割の1つです。人材会議・タレントレビュー等の会議開催の調整や各管理職からの提出物の管理や督促・データや資料類の準備・報告等、オペレーション業務の負担も大きい中ではありますが、制度推進のために下記の役割も遂行することが求められます。

HRBPのサクセションプランニング推進の役割 (オペレーション以外)

・人材会議・タレントレビューの事前の論点設定/当日のファシリテーション
・後継者候補毎の個別育成計画(IDP)の策定サポート
・育成計画の実行のための育成機会(研修他)の準備
・後継者候補の効果的な異動・配置の検討
・計画した育成アクションの進捗管理・フォロー
・後継者候補のポジション登用の検討
・後継者候補プールの状況把握・改善検討
・後継者候補データの管理
・後継者候補となりうる人材の探索  等

特に一番下の「後継者候補となりうる人材の探索」はHRBPの重要な役割です。HRBPは制度を運用する以外にも、1年間を通じて、HRデータ活用の上で自ら行動して担当事業部内(+外)から後継者候補となりうる人材を探し、その上司や事業部リーダーに提案・確認します。評価会議や研修受講、事例発表やワークショップ、部会等の業務会議等のあらゆる場面で確認していきます。一場面での確認になりますが、それでも有望な人材と感じれば上司・事業部リーダーに確認していきます。

【ご参考】サクセションプランニングの「設計」については こちら(note)
【ご参考】「タレントレビュー」については こちら(note)  をご参照ください。


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