経営幹部にもコーチング、ティーチング、カウンセリングが必要な時代になった3つの理由
経営層にもコーチングスキルが必要な時代
今日は、「経営層に求められるコーチングスキル」というテーマで、前半はコーチングとは一体何なのかということを、そして後半はそれを経営の立場で見たときに、今、なぜコーチングが重要なのだろうということを、お話していきましょう。
部下は何が問題かをあまり理解していないと、皆さんが感じていたとします。
皆さんから見ると、実はこう見える現実でも、相手から見るとそう見えていないことが結構あります。
どうしてかというと、立っている立場や、背負っている背景が違うので、同じものを見ても、皆さんの見ているフィルターや眼鏡で見るとこう見えるけれども、部下から見るとそうではないことがたくさんあるわけです。
今、経営者がかじを切る局面はすごくたくさん出てきます。
毎年、事業方針を変えなければいけない、事業エリアを変えなければいけないことも出てくる。
そのときに部下がいちいち引っかかって腹に落ちずに、自分勝手に「私はOK」と前を向いて進んでいたら競争に勝てない。
リーダーシップは組織力と言われる理由
ですから最近、リーダーシップとは組織力だと言われています。
それで経営層と中間管理職の方に、早くメンバーの腹に落として行動を変えていただくスキルが必要だということで、非常にコーチングスキルが求められているのです。
コーチングとは、部下に問題を早く気付かせて、行動を変えてもらうための会話のやり方なのです。
1990年の手前まではどの業界も右肩上がりで、コーチングなど意識しなくても「皆、行くぞ」と言ってやっていれば伸びていったわけですが、今はなかなか業績が伸びない。
「!(こうしなければだめなんだ)」と気付いて、動いていただかないと、競争に勝てないようになっているので、それを管理職が各自自己流にやっていてもばらつきが大きいわけです。
そこで、心理学の理論をベースにコミュニケーション技法を体系化しました。
人を理解させられる人というのは、言っている中身がすごく立派なのではなくて、言い方がぐっとくる、相手をつかむのが上手なのです。
一番強調しているコーチングのポイントの一つ目は、部下と仕事をする関係を作っていかなくてはいけないということです。
組織図の下に来たからすぐに言うことを聞くかというと、聞きません。
関係づくりを一生懸命しないと部下は動いてくれないというのが真実です。
日本人は称賛力が弱い
そのときには「褒める」「聞く」「さらけ出す」ということが大きな核だと思います。
組織図で自分の下に入ったからOKではなくて、人間関係を作る動作が非常に重要です。
成果を上げているリーダーは、これをすごく一生懸命やっています。
コーチングをしていく上で大事だと思う2つ目のポイントは、事実を基に、いかに具体的に相手に伝えていくかということです。
特に、課題の提示をするときは、事実に基づいて相手に提示する必要があります。
コーチング研修を実施して分かってきたのは、問題の把握力や問題を抽出する力など、会話のやり方だけではなくて中身も上げていかないといけないということです。
部下を早く方向転換をさせるためには、課題の提示が具体的にできているかというポイントは極めて重大な問題だと思っています。
最後のポイントですが、事例を上げて説明してみましょう。
中堅のS君に、「若い社員が入ってきたから面倒を見てやってくれ」と依頼したところ、自分の成果を上げることには熱心なのに、なかなか部下育成には取り組んでくれない。
上司が見たところ、「自分は売上さえ上げていればOK」と思っているこの人は、このままでは駄目だと思っている。
だから組織や自分自身のゴールのために、このままではまずいのだと気付かせることがポイントの3番目になります。
後継者探しのコーチング
ここで、皆さまには経営者の方もいらっしゃるということで、経営者の役割からコーチングを整理しておきたいと思います。
経営者の方にとって最大の課題は次期経営者だと思います。
経営者の皆さまが次の候補者に対してコーチングをしていくことが非常に重要です。
「できていないだろう。どうしたんだ、駄目じゃないか」ということではなく、「できない原因は何か」「どのように考えたのか」と、問いかけることによって、考えさせるようにアプローチをしていかないとなかなか育たない。
従って、良い経営者は見事なコーチなのです。
もう一つは、経営者は、次期リーダーを育てることとほぼイコールですか、組織自体の変化に自ら気付いて、変化に対応できる組織づくりをしなければならないということです。
大事なことは、組織の中で自分たちの変化に気付かないといけないということです。
そのためにコーチングが非常に重要です。
具体的に何をしていただきたいかというと、例えば、部下が中期計画を持ってきたりします。そうしたときに部下の思っていることを確かめていく質問をするということです。
そうすると、「われわれの業界とはこういうものなんだよな」という共通のメンタルモデルが既にあると思うのです。
業界は今こういう構造で、こういうところが大変苦しいポイントでということがあるのですが、本当にそうだろうか。
思い込みに基づいて進めていないだろうか。
あるいは外部環境や自社の強みなどをどう見ているのだろうか。
会社を取り巻く環境について同じデータをどう読み取るか、どう見るか、その組織の見方が皆さんの会社の戦略を決めているのです。
戦略をどう取るか、状況をどう見るかが会社の浮沈にかかわってくるわけです。
そういうことで、わが社は今どういう状況、環境下にあって、どういう強みがあるかを出して、最初に手を打たなければならないことは何かを合意していくことが戦略思考を高めるということになります。
そのときも決めつけない。
まさにコーチングです。
幹部研修ではファシリテーターがコーチになって、「なぜそう思ったのですか」「本当にそうですか、根拠を出してください」「違う見方はありませんか」とどんどん出していくのです。
そして、「これらの事実からこの流れは来る」「だからこう決めよう」という意志決定をしていくことが非常に戦略性の高い組織にいくコツではないかと思います。
ざっとお話をしてまいりましたが、なぜ今コーチングが経営者に求められているかというと、一つは、客観視できる次期リーダーを育てるためには、「やれやれ」「できていない」という指示命令型のマネジメントから、コーチング型で問いかけて考えさせるマネジメントをしていかないといけないということです。
そして、自ら変化に気づく組織を作って、持続的に成長する。そのためには、やはりコーチングのような会話の仕方がお互いにできるように、会社を変えていかないと難しいのではないかと思います。