モヤキャリ相談室VOL10
質が低下した無意識のバイアス
最近増えている相談の1つで「人材紹介会社に登録したけど、転職を任せられる人がいない」というものがあります。
その理由を聞いていくと、「あなたのキャリアでは転職できないでしょ」とか、「これぐらいの実績なら転職をしないほうがいいでしょ」というようにマウンティングしてくるアドバイザーが増えている。
人材業界にいたことがあるからわかりますが、完全に無意識のバイアスがかかってしまっているということに気づいていないから、こういうことが起きてしまうという危機感を感じている。
人材紹介会社の面談時間は60分から90分で行うケースが多く、ほとんどの場合が60分程度の面談。
このルールは昔から変わっていないけど、最近では特に生産性、効率性を重視するし、社内の目標数字のプレッシャーなどがある。
わかりやすくいってしまえば、商品になるかどうかを判断する。
商品の仕入れから納入までやるのが人材ビジネスですから、仕入れの段階で訳あり品と判断をしてしまうと、急に塩対応になるアドバイザーもいる。
そうすると、転職サイトの口コミ評価に書き込みをしたり、ネットの掲示板に書き込みをされてしまうことになる。
企業ブランディングに影響が出てくるのはこれからの時代は当たり前になるだろう。
評価が悪い人を表に出すことをせず、評価のいいアドバイザーやコンサルタントを出すして、集客をするのが人材紹介会社の企み。
面談にいってみたら違う人が出てきて、「えっ!?何で担当者が違うの?」ということもよくある話。
忘れてしまっている!?着地のポイント
お互いに有限な時間の中での面談という意識があれば、着地点が全く変わってくる。
「自分に合う企業なのかな?」「転職を任せていい人なのかな?」という意識があれば、塩対応をすることはありません。
いかに心証を悪くせずに、気持ちよく帰ってもらうかということを考えるのが営業的な発想であり、何が間違っていたのか、どう情報を読み誤ったのかをしっかりと反省をする。
しかし、生産性と効率性を重視するあまりに情報の読み取りが甘く、反省をすることもなければ、行動を改善しようとしない。
インターネットの検索のようにキーワードをいれて、自社が契約をしているサイトからスカウトメールを送る。
スカウトメールを送って返信してきた人は優先的に面談をして、転職サイトで自ら応募をしてきた人に対しては、企業人事になった気分でお祈りメールか面談の返信をする。
会社のファンになってもらったり、その人のファンになってもらえるかも知れないチャンスを自ら捨てているから、塩対応やマウンティングを平気でするのだろう。
ファンを増やしたいと考えていれば、きちんとしたおもてなしをして対応をしていくことになるのが、自然のながれである。
情報を読み取れない、取材できない
人が行うことだからミスマッチは起きてしまうことはある。
ミスマッチの発生率を下げることは簡単にできることだが、そこに気づけるアドバイザーやコンサルタントは1割程度いたらいい。
ほとんどの場合は気づかずにルーティンワークを繰り返していることが多く、改善をしていくことはない。
会社の目標数値をクリアできれば、会社から認めてもらえるわけですから、それなりの強引な対応をすることも可能としています。
売上上位20%の人たちの共通点があります。
情報の読み取り方と取材力がほかの人とは全く違うということです。
情報の読み取り力とは、WEB応募した際や応募書類を受け取った時に、どこがこの人のコアスキルであり、強みになるのかを読み取ります。
読み取ってどんな経験をしたいのか、退職する理由は何だろう?と面談前に事前の準備をしておきます。
面談の際に聞かなきゃいけない質問をしながらも、深堀できるかどうかが取材力が違うという点につながっていきます。
もし、キャリアの一貫性があるのであれば、この分野でもっと実力をつけたいのか?もっと上のポジションを目指したいのか?大きな仕事をしたいのか?というように想像をしながら質問の深堀していくことができるかどうか。
未経験の職種に転職をしたいというのであれば、なぜその職種に興味を持ったのか、どんなことが原因でそう思ったのかなど、原体験まで深堀できるかどうかという点です。
この取材力の差が推薦状の言葉に変わってくることが、8割のキャリアアドバイザーやキャリアコンサルタントが気づいていないことです。
推薦状に人柄(にん)が出てくる
企業人事になって気づいたのが推薦状についてです。
ベテランになればなるほど、手癖で書いてくるキャリアアドバイザーやキャリアコンサルタントが多いということ。
人事として気になった点を質問すると「ご本人に確認してから連絡をしますので、数日お時間をいただけませんでしょうか?」という回答をしてくる。
これは先ほど言った読み取る力と取材力が足りないということになる。
質問の回答がすぐに来ないから、書類選考のリードタイムが長くなる。
リードタイムが長くなると、応募者も企業側もモチベーションが下がっていくことになる。
優先順位が日々変わっていくなかで、スピード選考ということを心掛けているという割には、面談の段階で聞き取れていないのは信用度が下がってしまうことに気づいていない。
人材紹介会社は社外の採用担当ということに気づいておらず、自分と馬が合う会社や紹介手数料の高い会社、決まりやすい案件を中心に紹介をしているからです。
そのため、せっかくの時間を割いて行った面談が無駄になっているケースがよくあります。
きちんと面談をしていれば、推薦状はもちろんですが質問にも答えられますし、もう一押しが可能なのです。
そこで生産性と効率性を重視するあまりに、メールだけで送りっぱなしにする人と、メールを送って電話をする人、定期的に訪問をして推薦状を届ける人で大きな差になっていくわけです。
推薦状の内容を見せてもらうことも応募者の特権ですから、どのように自分のことを理解して売り込んでいるのかを確認するようにしましょう。
人を理解するには時間がかかる!?
60分の面談だけでは人を理解することは至難の業です。
面接も2~3回やったとしても60分×3回で180分です。
毎回出てくる人が異なるため、どこまで理解をしてくれているのかは不確定要素ですね。
だからミスマッチが起きてしまうというのもうなづける。
理解をするまでに企業が採用をしたときは、試用期間というものが3~6か月設定されています。
その中で実力を発揮してくれそうだ、うちの会社の環境になれて実力を出してくれそうだという判断をしたときに、正式採用に切り替わります。
面談についても1度話をしただけで、あとは放置する人が増えているのは、その人を理解していい転職先を探すのではなく、自分が会社から与えられた数字をクリアするための方法と手段でやっているケースが9割。
そうしないと明日はリストラをされてしまう可能性や、人事異動で冷遇されるという。
実際に成績が下位であり続けると、コールセンターへの移動、他部署への移動、降格などがあるため、転職希望者を雑に扱う人が多いというのが特徴。
人材紹介をしていたころは人となりを知るために、電話での取材、再度面談をしたりしていたことを思い出す。
本当に寄り添って親身になるコンサルタントというのが究極の理想形ではあるけれど、その人の商品価値、市場価値を決める人材紹介会社のアドバイザーやコンサルタントには危機感を持ってもらいたい。
どうすればその人が輝けるのか、どうしたらその人の強みがすぐにわかるのだろうか。
転職希望者も言語化できるように努力をすることはもちろんですが、人材紹介のアドバイザーやコンサルタントも言語化するのに必要な情報を聞き出せるような準備、インタビュー力を身に着けてほしい。