【休職体験談No.20】「地方公務員の生活保護担当で罵声とたくさんの死を見て心が折れた話」
こんにちは。休職タイムズです。今回は大橋さん(仮名・25歳女性)のエピソードをお届けします。
プロフィール
名前:大橋 亜沙子(おおはし あさこ)
年齢:25歳
性別:女性
前職:地方公務員(市役所・生活保護担当)
休職理由:
生活保護の窓口業務で激しいクレームと制度の板挟みに遭い、心身が限界に。
「先週まで話していた受給者が急に亡くなる」という出来事も、“珍しくない”と淡々と処理される職場の空気に絶望。
医師の助言を受け、休職を選択せざるを得なかった。
1. 地元に貢献したくて、公務員になった
私は大学を出て、「地元に根付いた仕事をしたい」「社会の役に立ちたい」との思いから地方公務員を目指し、運よく市役所に採用されました。最初は「福祉窓口や住民課で、地域の人々を支える業務になるのかな」くらいの気持ちで、周囲からも**「公務員は安定してていいね」**と羨ましがられるほどでした。
しかし実際には、配属されたのは“生活保護担当”。正直、最初はそこまで詳しい制度の知識もなく、どんな現場かもよく分からなかったけれど、「困窮者を支える重要な仕事だからやりがいあるかも」**とポジティブに捉えていました。でも現場に入った途端、その理想はあまりにも脆く崩れていくことになります。
2. 制度のルールと住民の苛立ち、その激しい板挟み
生活保護は国や自治体の厳格なルールに基づき運用されています。支給額や審査手続き、訪問調査など、とにかく書類も条件も細かい。けれど、困窮している人ほど「早くお金を出してくれ」「こんなの時間の無駄だ」と焦る気持ちが強く、ルールを説明しても納得してもらえないケースが多いんです。
ときには「プライバシー侵害だ!」「こんな書類面倒くさい!」と怒鳴られることも日常茶飯事で、1日に何度もクレーム対応に追われました。そのうえ不正受給の可能性を見逃すなと上司に言われると、受給者の言葉を疑うような対応をせざるを得なくなり、自分でもやるせない気持ちが募るばかり。
この“制度の縛り”と“住民の苛立ち”の板挟みで精神が削られ、疲れ果てていたのが、まず私の“地獄の入り口”でした。
3. 上司の冷ややかな態度、「制度なんだから仕方ない」で済まされる現実
さらに私を追い込んだのが上司との温度差です。私は少しでも住民に寄り添いたいと思い、クレームや問い合わせが殺到するたび「どうすれば落ち着いてもらえるでしょうか?」と相談したのですが、返ってくるのは
と一言。
確かにそれが正論なんでしょうが、目の前の受給者は「どうして今すぐ支給されないんだ!」と生活の危機を訴えているわけで、その声を一切受け止めずに片付けようとする態度には疑問しかありませんでした。上司自身は過去に何度か大きなクレームに巻き込まれたらしく、「面倒な話には深入りしたくない」という雰囲気がひしひしと伝わってきたんです。
4. 先週まで話していた受給者が突然、亡くなっていた──でも、それが“珍しくない”と流れる現場
そんな地獄のような日々を送る中、私を深い虚無に陥れる出来事が起こりました。先週まで窓口や電話で相談を受けていた高齢の受給者さんが、連絡がぷつりと途絶えたあと、アパートでひとり息を引き取っていたんです。
通常なら大事件ですが、現場の同僚たちは
と淡々と話を進めるだけ。この部署では“こういうこと”が繰り返されており、「死んでしまった」ことすら大きな動揺を伴わずに作業的に処理されるらしい。
たった数日前に一緒に悩んで、あれだけ何とかしようと奔走した人が急に亡くなっても、それが当たり前に流れていく──私はその事実に息が詰まり、まるで床が抜けたような喪失感を味わいました。
5. 休む決断、それでも「甘え」とささやかれる苦しみ
このような暗く重い現場で、私は徐々に夜も眠れなくなり、体調を大きく崩しました。上司には
と言われるばかり。そんな言葉で簡単に割り切れるなら苦労はしない。医師からは「このまま続ければ本当にうつ病になる可能性が高い」と診断され、私は休職を決断。
とはいえ公務員の世界ではまだまだ「休むなんて甘え」「仕事ができないからだろう」という空気があるのも事実で、私が実際に休職を申し出たときも冷ややかな視線を感じました。でも、もう何も考えたくなかった。ここで自分を守らなければ、取り返しのつかないことになると直感していたからです。
終わりに
住民の命を支えるはずの生活保護担当が、こんなにも死や苦しみ、怒声と苛立ちに満ちた現場だなんて、想像できなかったのが正直な感想です。窓口で住民に**「いい加減にしろ」「お前のせいでこっちは死ぬ思いなんだぞ」**と怒鳴られることもしょっちゅうで、それを受け流す間もなく次のクレームが来る。さらに「先週まで話していたあの人が死んでも、これが当たり前」と淡々と流れていく部署の空気……それを思い出すだけで、今でも胸が押しつぶされそうになります。
公務員だから安定しているし、メンタル的にもラクだろう──そんなイメージを抱いている人に、私は声を大にして言いたい。業務内容によっては、一人ひとりの命や人生の重みを背負い、それを淡々と“処理”しなければならない厳しい世界があるのだと。怒鳴られ、罵られ、そのうえ突然に人が亡くなる――そんな現実を毎日受け止め続けるのは、想像よりずっと辛いものです。
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