【休職体験談 No.6】「自分だけで抱え込んだ責任」――35歳、メーカー設計部門の課長代理が倒れるまで
こんにちは。休職タイムズです。今回は騙されてメーカーで課長代理を勤めている大谷さん(仮名)の休職体験談をお届けします。
プロフィール
名前:大谷 剛志(仮名)
年齢:35歳
性別:男性
職種・業界:メーカーの設計部門/課長代理
家族構成:妻(専業主婦)、幼稚園児の子ども1人
休職理由:
チームリーダーとしてプロジェクト責任を負い、部下の管理や業務調整で過労気味に。
長時間労働が常態化し、家庭との両立もうまくいかなくなり、うつ症状が出始める。
性格・背景
「自分が頑張ればなんとかなる」という強い責任感と、周りに頼りづらい性格。
「仕事も家庭も完璧にこなしたい」という思いが強いが、実際は仕事優先の日々が続き、家族時間を十分に取れないことに焦りを感じていた。
1. 「課長代理」の肩書きがもたらしたプレッシャー
私は大学卒業後、このメーカーの設計部門に配属されました。技術系の仕事はやりがいを感じていましたし、順調にキャリアを積んで30代半ばで課長代理に昇進。周囲からは「出世コースに乗っている」と言われることも増えましたが、それが逆に大きなプレッシャーになっていったんです。
新製品開発のプロジェクトを任され、私はチームリーダーとして開発スケジュールの調整や品質管理、コスト管理まで幅広い業務を担当することになりました。部下から「大谷さんがリーダーで心強いです」と言われると、「自分が頑張らなきゃ」とさらに気合いを入れてしまい、残業や持ち帰り仕事が当たり前に。睡眠時間や家族との時間はどんどん削られていきました。
2. 「自分がなんとかする」――過剰な責任感が生み出す過労
部下たちも優秀なのですが、プロジェクトが佳境に入ると、少しでもトラブルや遅れが出るたびに自分が前面に立って対処してしまう癖がありました。部下からすると「大谷課長代理が色々やってくれる」ために助かる反面、私はやることが雪だるま式に増えていきます。
設計図面の最終チェック
顧客や協力企業との打ち合わせ・調整
上層部への報告資料の作成
部下の育成・面談
しかもこれらが並行して進むため、退社時間は連日21時〜22時。夜中までメール返信や資料作成に追われることもしばしば。家に着く頃には子どもは寝ており、妻とは最低限の会話しかできない状況でした。
3. 家庭とのすれ違いと「育児に参加できない」焦り
休日出勤や緊急対応が増えると、子どもと遊んだり、家族で外出する機会が激減しました。妻は「仕事が忙しいのは理解している」と言ってくれましたが、内心は寂しさを感じていたはずです。幼稚園の行事にも参加できず、子どもの成長を間近で見られないもどかしさが私の中で募っていました。
さらに、家事や育児を妻に任せっきりにしている罪悪感が重なり、自分を責める気持ちが強くなっていきました。「これで本当に父親と言えるのか」「父親失格だ」と思い悩み、仕事のストレスだけでなく、家庭に対する負い目も抱え込むようになったのです。
4. 頑張り続けた先に見えた「うつ症状」
立場上、周囲に弱音や本音を吐きづらかったのも大きいと思います。課長代理という肩書きで部下を率いている以上、「大谷さんが弱音を吐いたら、チームが不安になるんじゃないか」と考えました。結果、ますます自分を追い込んでしまい、次第に
夜中に何度も目が覚める
食欲が落ちて、朝食が喉を通らない
出勤前に動悸やめまいがする
といった症状が出てきました。
ある朝、鏡を見たら自分の顔色が明らかに悪く、なんだか表情も空っぽな感じがして、急に怖くなったんです。妻に勧められて病院を受診したところ、軽度のうつ症状があると診断されました。
5. 休職を選んだ理由と、「本当に大丈夫?」という周囲の声
医師からは「今のペースで働き続けるとさらに悪化するリスクが高い」とはっきり言われました。それでもすぐには踏ん切りがつかず、「自分が休んだらプロジェクトが止まる」と思いましたが、妻や上司に相談した結果、最終的に休職を決断しました。
上司からは「大谷が抜けるのは痛いが、まずは休んでしっかり治せ」という言葉をもらい、部下も「大谷さんがいなくても大丈夫ですよ」と言ってくれました。それらの言葉に安堵すると同時に、「もっと早く周りに任せていれば、こんなことにはならなかったのかも」という後悔も大きかったです。
6. 休職中に得た気づきと、今後の展望
休職期間、最初のうちは罪悪感や無力感ばかりでしたが、徐々に体調が回復するにつれ、客観的に自分の働き方を振り返ることができました。
部下を頼る大切さ
自分が完璧に抱え込まなくても、任せれば成長の機会にもつながる。
家庭とのコミュニケーション
妻や子どもと過ごす時間を優先的に確保しなければ、家庭は立て直せない。
管理職としての役割
管理職は“自分がやる”のではなく“チームが成果を出せる環境を作る”ことが本質。
今では「任せるべきは任せる」「休むべきときは休む」――そんなシンプルなことができていなかった自分に気づき、少しずつ意識を変えるようにしています。
終わりに
たとえ課長代理やリーダーのポジションでも、「自分一人が頑張れば何とかなる」わけではないことを、今回の休職を通して痛感しました。もし同じように、責任感ゆえに抱え込みすぎて疲弊している方がいれば、ぜひ早めに誰かに相談してほしいです。周囲に負担をかけることは悪いことではなく、むしろ「互いに支え合うほうがチームも家庭も健全に回る」という事実に気づいてほしいと思います。
私自身はまだ復職へ向けてリハビリ中ですが、この経験が「父親として、リーダーとして本当の意味で成長する」きっかけになると信じています。自分の人生を取り戻すために休む――そんな選択肢があってもいいんだと、心から思えるようになりました。
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