【特典つき】夏休みは「やりたいこと志向」が自己成長主導性やキャリア探索に影響を及ぼすのか、自由研究してみよう!
あっと今に梅雨が明けて、夏真っ盛り。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
私はといいますと3月に大学院を修了し、休む間もなく始まった4月からの授業(自分の仕事)に追われ、夏休みを迎えようやく一息ついたところです。
科目履修生のころも含めると3年間、寝ても覚めても大学院・研究のことばかり考えていたのですが、卒業して4カ月もたつと、もうすっかり学びモードが抜けています(笑)。
こりゃいかん、ということで今回の記事は私の研究の振り返りを込めた
ある理論の紹介とその理論を活用した研究論文をご紹介したいと思います。
そして、記事が配信される8月は大学生の皆さんにとってはインターンシップに励んでいる学生も、何か他の活動に勤しむ方もきっと自分の進路について悩むころ。そんな皆さんにも1つの指標になる知見があるのではと思います。
読者特典もありますので、ぜひ最後までご覧ください。
キャリア探索
本稿の一番柱になるのは「キャリア探索」という概念です。
これまでキャリアに関する多くの研究者がキャリア探索の必要性について主張しています。若者が社会に出ていくにあたって、仕事や社会について調べる、あるいは自分自身について理解を深めていくことを指しています。
代表的な研究として挙げられるものとしてはStumpf et al.(1983)の測定がよく知られていて、その研究をもとに日本語版尺度として
「キャリア探索尺度」を開発したのが早稲田大学の安達智子先生です。
キャリア探索(career exploration)は2つの構成要素があると考えられていて、自分の強み・得意・これまでの生き方などの理解を深める自己探索(self-exploration)と、職業や社会についての理解を深める環境探索(environment exploration)があると考えられています。質問紙の内容も、それに沿って構成されています。
このキャリア探索理論・尺度を多くの研究者がそれぞれ考える研究の文脈にそって活用しています。ちなみに私も「大学生の職業選択意識」を計るために、この理論・尺度を応用しました。
職業選択をするとき、自分の中を顧みる作業、つまり自己探索を行い、
業界や職種といった社会について調べる作業、つまり環境探索を行う。
この考え方に理論がばっちり当てはまると思い、採用しました。
今日ではこの13項目の質問を組み込んだ量的研究が多くの研究者によって行われています。興味がある方はぜひ、論文検索サイトで「キャリア探索」と検索してみてください。
「やりたいこと志向」とキャリア探索
さて、今回ご紹介する研究論文は、
「大学生における「やりたいこと志向」が自己成長主導性及びキャリア探索に及ぼす影響」というタイトルで石橋ら(2019)が発表したものになります。
「やりたいこと志向」とは将来のやりたい仕事を追いかける、いわゆる「夢を持つ・追いかける」という考え方に近いものといえます。
これはキャリア教育の世界では実はけっこう根深い問題を含んでいて、
「夢がないとだめだよ!」と「夢なんてなくても大丈夫」といった2つの意見が存在していて、どちらが正しいのかは明確にはなっていません。
キャリアカウンセラーをしていても、「やりたい仕事がないとダメですか?」と相談に来る学生が多くいます。それが見つかっていなくて悩んでいる学生に「無いとだめだよ!」と言ってしまうと追いつめてしまうことにもなりかねないので無くても大丈夫だし、それを探すのが就活だからじっくり探していこうとアドバイスをいつもしています。実際に、社会に出ていった学生たちがみんな等しくやりたいことを見つけて社会に出ていっているわけでもありません。働き出してから見つける人もいるでしょうし。
ただ、一方で「将来、〇〇の仕事をやりたい!」と決まっている学生の
就活に対する熱量・行動量には感心するものがあるのも事実です。
個人的にはひとそれぞれであると考えていますが、客観的な意見も欲しい。
そこで今回の論文のご紹介になります。
まずは研究論文の結論を確認してみましょう。
ここでいう「仕事やりたいこと志向」とは「将来は好きな事を仕事にしたい」「進路選択でもっとも優先するのは、自分がやりたい事である」という質問内容を含んでいる要素で、そういったことを考えることでキャリア探索が促進されるという内容を導いています。
そして、「「自己成長主導性」を媒介として間接的に正の影響を及ぼした」という内容もとても興味深いですね。
ここでいう「自己成長主導性」とは「積極的な行動」
「変化への準備」「資源の活用」「計画性」といった要素を含んでおり、ただ考えるだけではなく、行動、準備、計画といった具体的なこともしないとキャリア探索、とくに環境探索は促進されないよと示しています。
将来の仕事を考える、夢を持つ、というポジティブな刺激は
やはり大切なことなんだなと考えられる研究だったように思います。
ただ、精神論で訴えかけるように「夢を持とう!」といっても若者を
追いつめるだけにもなりかねないので、具体的にどういった教育をすれば
いいかを考えるのが、私のような教育側の人間の役割なんだと考えます。
これから秋学期に入っていって、具体的に就職活動を迎える学生の皆さんも、インターンシップに参加したり、職業に関する書籍を読んだりして、
具体的にキャリア探索をぜひ促進させていってくださいね。
【参考文献】
・Stumpf, S.A ; Colarelli, S .M., & Hartman, K.(1983)「Development of the career exploration survey
(CES)」Journal of Vocational Behavior, 22, 191-226.
・安達智子(2008)「女子学生のキャリア意識──就業動機、キャリア探索との関連──」 心理学研究79、27-34.
・安達智子(2010)「キャリア探索尺度の再検討」心理学研究81、132-139.
・石橋里美、林 潔、内藤哲雄(2019)「大学生における「やりたいこと志向」が自己成長主導性及びキャリア探索に及ぼす影響」 応用心理学研究,45,68-75.
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
と締めくくりましたが、将来何を仕事にすれば良いかわからない、という方に自己理解が深まるワークシートを公開いたします。
【読者特典】 この夏の“キャリアの自由研究”にどうぞ!
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